「君のアイデアは、いつも似たような感じだね」
「ありきたりな研究テーマだね」

仕事や研究をする際に、このように言われた経験がありませんか?

あなたがいくら内容を吟味したとしても、テーマ自体や導いた結論がありきたりだと、見ている人は「またこれか」と思ってしまうものです。

逆に、内容は多少雑でも、発想にキレのあるアイデアは、それだけで人を惹きつける力があります。どうすれば、そのようなユニークなアイデアを生み出せるようになるのでしょうか。

単調な発想になってしまうワケ

一生懸命頭を絞ってアイデアを出しているのに、テーマが似通ってしまったり、発想の結果がいつも同じような結果になってしまったりするのは、毎回同じ思考法を使っているためです。

仕事でも研究でも、一般的な思考法として、以下のような手順がよく用いられます。

「現状の把握→問題点の洗い出し→各問題点に対する解決策」

このように現状を打破するためにアイデアを生み出そうとする思考法は、うまく働けば有効なものであり、決して悪いというわけではありません。

しかし、毎回この方法でアイデアを出していると、問題点や解決策がワンパターンになってしまいます。ひとつの課題についていくら頭をひねっても似たような結論しか出てきませんし、別の課題についても、同じ考え方しかできなければ、解決に向けた斬新な糸口というものはなかなか見えてこないもの。

ゆえに、幅広いアイデア、ユニークな発想を産むためには、複数の思考法を持っておくことが大切なのです。

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色々な切り口で考える

複数の思考法を持つために、まずは思考法が何たるかを知っておきましょう。

簡単に言うと、思考法とは「物事を見る前提条件」のことです。

例えば、「5℃」という数字。

東京で暮らしている私には、かなり寒い気温です。明日はより防寒しようという気持ちになります。しかし、北海道の人にとっては、少し暖かめの気温と言えるでしょう。

また、化学を専門にしている人からすれば278Kという温度の指標ですし、温泉に入る人にとってはサウナの後に入りたい水風呂の温度です。このように、どういった観点から「5℃」という温度を見るかによって、その価値や見え方は変わってきます。

先ほど紹介した一般的な思考法は、「現状」という観点からアイデアを産む思考法。言い換えれば、「現状」をそのまま見つめる以外の方法を取ることができれば、自然と新たなアイデアにつながるのです。

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押さえておきたいアイデア術

では、物事を様々な切り口から見ることによって発想を得るための方法をいくつかご紹介しましょう。

1)逆転の発想

逆転の発想とは、今までは「負」と思われていたものを「正」にとらえ、別の価値をそこに見出す手法です。

とあるシリコン会社は、自社のシリコン製品に埃が付着して汚れやすいという「負」を抱えていました。どうやったら埃の付かないシリコンを作れるか頭を悩ませていましたが、どうにも上手くいきません。

そこで、「埃が付きやすい」というシリコンの性質を「正」に捉え、「埃とりの掃除道具」として売り出してみることにしました。すると、細かい場所の掃除に役立つシリコンは大ヒットとなり、大きな利益を上げる結果となったのです。

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現状では「負」でしかないものを「正」に考えてみることで、思いもよらないアイデアにつながる可能性があるということですね。

2)ゼロベース思考

ゼロベース思考では、ひとつの視点からのみ物事を見るのではなく、全ての前提条件を取っ払って、フラットな状態から物事を見つめます。もちろん、現状も一旦は無視してしまいます。

これは、かのスティーブ・ジョブズが得意とした思考法です。iTunesが生まれた当時、「音楽はCDで販売するもの」という常識がありました。しかしその常識に縛られていたら、ダウンロードによって音楽を売り出すiTunesという商品形態が生まれることはなかったでしょう。

斬新な発想を得たいときは、常識や過去の経緯などを一切捨てることで、見えてくるものがあるはずです。

3)フォーカス思考

東京大学大学院工学系研究科の小柳智之氏らの研究によると、人間の発想は「注意誘導」によって促進できるそうです。

彼らの行った実験では、被験者にある画像を10分間見せ、被験者がその画像からいくつの単語を連想できるかを測定しました。被験者のうちひとつのグループには、5分経過した時点で、画像のとある箇所を「赤枠」で囲って強調して示したところ、何もしなかったグループに比べて連想した単語の個数が多くなったのだそうです。

この実験から得られた結論は、人間は、無条件化では物事の「全体」を意識してしまうため、細部の情報を疎かにしてしまう傾向があるということ。これを解決するためには、細部の情報にも意識が向くよう、注意を誘導する必要があります。

先ほど、「現状」から生むアイデアは似たようなものになってしまうと述べました。その理由のひとつには、無意識のうちに、現状目の前に広がる複数の問題を同時に考えてしまうから、というものが挙げられます。

例えば、自社で手掛けるサービスの利用者が増えないのはなぜかを考える時、サービス自体が面白くないのではないか、運営側のユーザー対応が良くないのではないか、口コミが良くないのではないか……などと一度に考えてしまっては、全部をひっくるめたような、効果が出るとも出ないともわからないような、無難な解決策しか出てこない可能性があります。そこで、サービス自体の質にフォーカスするとどういう問題がありそうか、運営側の対応にはどんな課題があるか、などと、考える対象を狭めてみましょう。全体を見ているだけでは見えてこなかったアイデアが生まれるかもしれませんよ。

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ここで紹介した思考法は、それぞれの方法が有益なものであるだけでなく、互いを組み合わせることでより斬新な発想につなげることができます。様々な思考法に慣れてきたら、試してみてくださいね。

(参考)
ダイヤモンド社書籍オンライン|「ものの見方」を変える8つの切り口
ITmediaエンタープライズ|「切り口」は、本質をつかむと見えてくる
野口尚孝著(1998),「発想支援研究の動向と今後の課題: デザイン発想支援システム研究の一助として」,デザイン学研究, 44(6),pp.45-52.
小柳智之著,上田一貴著(2016),「視覚的表象による想起プロセスを利用した発想支援システムの開発」,日本機械学会論文集,Vol.82,No.842.
株式会社おおかわ|ほこりトリ