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あなたは「褒められて伸びる」タイプだろうか。それとも「叱られて伸びる」タイプだろうか。教育の現場で度々議論の的になるところだが、どちらが本当なのだろうか。

確かに、尊敬する先輩から強い言葉で叱咤激励されれば、やる気が上がりそうだ。一方で、同じ人から褒められたって、モチベーションは高まるだろう。果たして、一体どちらが真実なのか。人間のモチベーションや行動を考える「行動科学」の観点から、一緒に考えてみよう。

正解:「褒めて伸ばす」「叱って伸ばす」どちらもホント

驚きの方も多いだろう。真実を教えると言ったのに、そりゃ反則だ、と批判されるかもしれない。しかし、これが真実なのだ。なにしろ、あなたがその証人なのだから。これまでの人生の中で、叱られてやる気が出たこともあるし、褒められてやる気が出たこともあるだろう。もしあなたに経験がなくても、私にはあるし、多くの人が両方の経験を持っている。

褒めて伸びることもあれば、叱って伸びることもある。それが真実なのだ。しかし、これは決して矛盾するわけではない。褒める、叱る、という表面的な行動の裏には、より本質的に人のモチベーションを左右する「何か」があるのだ。

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人を動かす「ABCモデル」

人を動かす「何か」、それは「行動した時に得られる、その人にとって望ましい結果」だ。人間は、自分の行動の結果望ましい結果が得られればその行動を繰り返すし、もっと頑張ろうと考える。もし望ましくない結果が得られれば、その行動をやめてしまうのだ。

テストで良い点が取れればもっと勉強したくなるし、悪い点を取れば勉強なんてやめたくなる。

何を当たり前のことを、とお考えかもしれない。しかし、本当に理解しているだろうか。先ほど、「褒めて伸ばす」「叱って伸ばす」どちらも真実だと紹介したが、それもこうした「褒める」「叱る」といった行動が「望ましい」と受け取られたからだ。

もし、自分の欠点を的確に指摘し、明確にこれからの行動の指針を示すような叱り方をされれば、それは自分にとって望ましい経験となるだろう。一方で、自分の努力と外れたポイントを評価されたり、的外れな褒め方をされたりしたら「この人は俺のことなんか見ていなかったんじゃないか」と考えてしまうだろう。これではモチベーションが上がらない。

褒める、叱る、いずれもやり方次第では、私たちが思うのとは真逆の効果を生んでしまいかねないのだ。行動科学マネジメントの第一人者である石田淳氏は著書の中で「ABCモデル」という考え方を紹介している。

・先行条件(Antecender)…行動のきっかけとなる目的、行動の直前の環境のこと
・行動(Behavior)…行為、発言、ふるまい
・結果(Consequence)…行動によってもたらされるもの、行動した直後に起きた環境の変化のこと

(引用元:石田淳著(2007),『短期間で組織が変わる 行動科学マネジメント』,ダイヤモンド社.)

あなたがポテチを食べた。おいしい。だからもう一枚食べた。これは立派なABCモデルの具体例だ。もし「望ましい結果(Consequence)」(この場合ではポテチがおいしいという結果)が得られれば、もう一度同じ行動を繰り返すだろう。叱り方、褒め方が正しければ、それは「望ましい結果(Consequence)」になり、行動する側のモチベーションをあげることにつながるのだ。

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大切なのはよく観察し、よく褒めること

ここで一つのことに気づいていただけるだろうか。褒めたり叱ったりすることで「望ましい結果(Consequence)」を与えるのは、とても難しいということに。なぜなら、その人が何を努力したのか、どんなことに力を注いだのか、逐一把握することはできないからだ。

チームの中でどんな役割を果たしたのか、企画書のどの部分に尽力したのか、そうしたことをいちいち確認していては、プロジェクトの進行に妨げが出てしまう。

昇進させたり、給料をあげたりすることは、「望ましい結果(Consequence)」を与えるもっとも簡単な方法のひとつだ。しかし、褒めたり叱ったりすることでそれを達成するのは、なかなかに難しい。

だから、まずはその人をよく観察し、よく褒めることから始めよう。最初は「単純な行動を褒める」ことからだ。企画書を提出してくれた、システム不備を報告してくれた、挨拶してくれた、そうしたレベルで構わない。小さな行動でもいい。よく観察し、まずは褒めてみるのだ。そうすることで、わざわざ給料を引き上げることなく、やる気やモチベーションを高めることができるかもしれない。

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褒めて伸ばす、叱って伸ばす、どちらも本当のことだ。しかし、効果的な叱り方をするのはとても難しい。だから、まずは褒めることから始めよう。そして、的外れな褒め方をしないように、その人のことをよく観察しよう。

今日紹介した方法はシンプルだが、きっと効果がでるはずだ。

(参考)
石田淳著(2007),『短期間で組織が変わる 行動科学マネジメント』,ダイヤモンド社.


東京大学理科二類所属。県立浦和高等学校および駿台予備校出身。小さいころから自然や生き物に関心を持ち、高校時代に読んだ福岡伸一の「生物と無生物のあいだ」に刺激をうけ、分子生物学を志す。テニス歴6年。AKB48の大ファン。