勉強をしなければいけない、勉強するべきだ。そう自分に言い聞かせてみても、なかなか思うように意欲は湧いてきませんよね。どうにかして勉強を始めたとしても、今度は集中力が続かない……。

そんなことを繰り返している方のために、「アメ」と「ムチ(報酬なし)」をうまく使って勉強を捗らせる方法をお伝えします。

勉強の悩みは仕組みで解決

勉強には、悩みがつきものです。その悩みとは、「やる気が起きない」「集中できない」「なかなか成果が出ない」というもの。

しかし、鉄道・車・ゲーム・映画・ファッション・動物・科学・宇宙・語学ほか、どんな分野においても、それが“好きなこと”があれば追究し、人は知らず知らずのうち夢中になって勉強するでしょう。

とはいえ、勉強に「魅力を感じろ!」「好きになれ」と言い聞かせても、そうなるわけではありません。また、“それを知りたい”“こうなりたい”という目的が無ければ、勉強に対し意欲がわかないのは当然のこと。

ならば、仕組みを上手に作ってあげましょう。その仕組みとは、「アメ」と「ムチ」を使いつつ、内発的動機づけを高めていく方法です。

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「アメ」と「ムチ」にはコツがいる

――結局、アメとムチは効果的なのか?

「アメ」と「ムチ」とは、頑張ったら食べ物・褒め言葉・金銭・休息といったご褒美「アメ」を与え、頑張らなければ叱る・ペナルティといった「ムチ」を与えること。いわゆる外からの要因でやる気を起こさせる「外発的動機づけ」のことです。

そして、好きなことや、明確な目標があるものに対し、内側から意欲がわいてくるのは「内発的動機づけ」です。

もちろん理想的なのは後者ですよね。実のところ、教育現場で「アメ」と「ムチ」には否定的な声も多くあります。しかし、「自己決定理論」という新しい考え方では、最初は「アメ」と「ムチ」で始まっても、のちに自分自身の意欲が高まっていくとされています。

名古屋大学大学院教育発達科学研究科教授の速水敏彦氏は、「外発的動機づけからの出発を繰り返すことで徐々に自信がつき、自律性の高い動機づけが生成され、自己形成もなされていく」と述べています。

――「ムチ」が強いと危険である

ただし、「アメ」と「ムチ」にはちょっとしたコツが必要です。なぜならば、「ムチ」が強すぎると逆に意欲をなくしてしまうから。

行動心理学の分野で行われた、マウスを使った研究では、進ませたい方向にクッキー(アメ)を置き、進ませたくない方向に行こうとすると電気ショック(ムチ)を与えたところ、ハッキリと効果が生まれたそうです。

しかし、電気ショックを少し強めに設定してみると、マウスは強い電気ショックを受けるとその場でうずくまり、右にも左にも進まない無気力なマウスになってしまったのだとか。クッキーを欲する気持ちよりも、防衛本能の方が強く働いたため、意欲をそがれてしまったのです。

――「ムチ」は罰ではなく「報酬なし」に

前項のマウスによる研究以外にも、さまざまなかたちで「アメ」と「ムチ」の研究が行われています。ニューヨークの州立病院で行われた、医療スタッフが手を洗う頻度を高めるための研究や、ジョージア州立大学のスポーツ選手を指導して上達度を比較する研究などです。

驚いたことに、いずれも研究結果は同じ。ポジティブなフィードバックを受けた医療スタッフはよく手を洗うようになり、また、スポーツ選手も指導通りできたときには褒められ、うまくできなかったときは叱らずに、「褒めない」ことにとどめた場合に上達度がグンと伸びたとのこと。

つまり、「アメ」と「ムチ」のムチは、罰ではなく「報酬なし」とすることで、効果を高めるわけです。

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「アメ」と「報酬なし」で勉強の意欲を高める方法

では、これまでの内容を踏まえた具体的な方法をご説明しましょう。手順は以下の通り。

1.準備する

シンプルな「卓上カレンダー」と「赤マジックペン」を用意

2.ルールを決める

<例>
目標 : 毎日、寝る前に30分勉強する
達成ポイント: 6日間連続で達成
報酬ポイント: 達成したら週1回
報酬内容1: 勉強なし、思いっきり休む
報酬内容2: 録画しておいたドラマを思いっきり観る
報酬内容3: ケーキを買って思いっきり食べる

「無」報酬ポイント: 1日でも、数分でもサボったら
「無」報酬内容1: 勉強休み日1回なし
「無」報酬内容2: 勉強休み日がないので好きなドラマ鑑賞もなし
「無」報酬内容3: 勉強休み日がないので好きなケーキもなし

3.見守り役を決める

決めたルール通り勉強できたら、卓上カレンダーの該当日に赤マジックで「完」と書いてくれる人を決めます。これはいわゆる「まっとうした」ということ。この役を担う人は、家族や友人、あるいは自分でも構いません。いずれにせよ、見守り役には決めたルールをお知らせしてください。ただし、あくまでも見守り役は見守るだけ。監視役でも、叱咤する役でもないということを、理解してもらいましょう。

いずれは見守り役なしで自分のなかから意欲が高まっていくことが前提です。まずは数週間お願いし、もう少し必要だったら再び期限を決めてお願いするようにしてください。

以上です。

こうすることにより、最初はイヤイヤでも、とりあえず繰り返さざるを得なくなります。そして、「自己決定理論」の考え方にのっとれば、それを繰り返すうち自分に自信をもつようになるはずです。それに、見守り役からの「よく頑張ったね」という言葉も大きな報酬となり、自分自身が見守り役だとしても、自分を律して行動したことを誇りに感じ、意欲を高めるでしょう。

逆に、頑張らなければそれらを得られないという、恐怖感も生まれるはず。もちろん、簡単にルールは破ることができます。しかし、それにより今度は罪悪感や挫折感が、自分に不愉快な印象をもたらすので、意外にもそれが抑止力になるでしょう。

これが、「アメ」と「報酬なし」で勉強の内発的動機づけを高めるコツです。

***
今回ご紹介した方法を行い、意欲を高めていく過程には、快楽を欲するドーパミン、報酬をまったく得られないのはイヤだという危機感から集中力を高めるノルアドレナリン、自信がついて落ち着きや平常心が生まれ持続的な行動へとつながるセロトニンといった、やる気をもたらす脳内物質がかかわっています。ぜひチャレンジしてみてくださいね。

(参考)
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|HBR.ORG翻訳マネジメント記事|アメとムチ、社員の動機づけに効果的なのはどちら?
アチーブメントHRソリューションズ|Vol.51 「アメとムチ」vs「アメとアメなし」|モチベーションエンパワーメントコラム(大杖正信)
PRESIDENT Online|ゆとり世代のやる気スイッチの見つけ方
ITmedia ビジネスオンライン|「アメとムチ」で人をやる気にさせることはできるか?
慶應義塾大学出版会|月刊 教育と医学|巻頭随筆|自己形成と動機づけ
速水敏彦(2011),『自己形成と動機づけ』,月刊 教育と医学 第59巻3号,巻頭随筆,慶應義塾大学出版会.