週末に "純文学" はいかが? ビジネス書だけでは得られない「小説を読むこと」の4つのメリット

皆さんは純文学をお読みでしょうか。日本における純文学というと、夏目漱石や三島由紀夫といった大作家が思い浮かびますね。しかし、実際に読むのは人気ドラマの原作やカジュアルな小説ばかりで、純文学は高校の時に教科書で読んだのが最後だ、という人も多いと思います。

確かに、名作とされている純文学作品には、テーマが難解でとっつきにくかったり、納得の行くような結末を迎えないものも多くあります。また、ビジネス書や自己啓発書などのようにビジネスや実生活にすぐに役立つノウハウを与えてくれるものでもありません。純文学に手が出ない人の中には、こうしたことへの不満を抱えている人もいるのではないでしょうか。

だからと言って、「純文学=つまらない、役に立たない」と決めつけてしまうのは非常に早計です。というのも、純文学には独特の「味わい方」があり、その味わい方を知ったうえで読めば、純文学の楽しさは格段に増すからです。この記事では、日々忙しく人との関わりも多いビジネスパーソンこそ純文学を読むべきであることの理由と、純文学の楽しみ方についてお伝えしていきたいと思います。

小説を読むだけで人づきあいがうまくいく!?

自己紹介で「読書が趣味。特に純文学が好き」などと言うと、周りの人からはあまり社交的な人ではないのかな、と思われてしまうことがあります。しかし、実際には必ずしもそうとは言えないことが分かっています。脳科学に関する研究から、小説を読むことはむしろコミュニケーション能力の向上に役に立つことが明らかになっているのです。

ある面白い研究結果によると、人間の脳は、本に書かれた架空の出来事と実際の世界で起こったことを区別する能力がないのだそう。架空の出来事について読んだ際の脳と、現実世界で何かを経験する時の脳とでは、同じ部分が活性することが分かっています。

つまり、小説に描かれた多様な人間関係について読むことによって価値観が広がる分、実生活のコミュニケーションにおいても相手の心情をより深く考えることができ、人付き合いが上手にできるようになるのです。

人の心を深く知るための純文学

純文学は、大衆向けの小説と何が違うのか、という点について説明します。まず、以下の引用を見てください。三島由紀夫『金閣寺』からの一節です。

この美しいものが遠からず灰になるのだ、と私は思った。それによって、心象の金閣と現実の金閣とは、絵絹を透かしてなぞって描いた絵を、元の絵の上に重ね合せるように、徐々にその細部が重なり合い、屋根は屋根に、池に突き出た漱清は漱清に、潮音洞の勾欄は勾欄に、究竟頂の華頭窓は華頭窓に重なって来た。金閣はもはや不動の建築ではなかった。それはいわば現象界のはかなさの象徴に化した。現実の金閣は、こう思うことによって、心象の金閣に劣らず美しいものになったのである。

(引用元:サラダ坊主日記|美=虚無の方程式 三島由紀夫「金閣寺」

これは、主人公が金閣寺に放火しようとする際の心理描写です。カジュアルな娯楽小説と比較した際、純文学の特徴となるのが、純文学は特に人間の内面的な感情を赤裸々に描写しているという点。名作と呼ばれる作品はどれも、膨大な知見や作家の感性に支えられた深い洞察により、人間の内面が見事に描かれます。

小説を読むとコミュニケーション能力が高まるということをさきほど説明しましたが、純文学においてはそれが一層効果的です。緻密な描写に翻弄されながら読み進めることで、人間の感情のきわめて複雑な側面について考えるきっかけを得ることにつながります。そうすれば、より多くの、より多様な人々と心を通わせることができるようになるかもしれません。

純文学を読むと文章力がアップする

忘れてはならないのが、文章能力に与える影響です。純文学の楽しみ方は、ストーリーを追っていくことに限りません。特に古典的名著とみなされている作品は、文章表現の面において非常に技巧的であることが多いもの。

「文学的表現」という言葉には、飾り立てていて歯切れが悪い、というような意味合いが含まれがちですが、時代を超えてなお評価される文章は、無駄がなく、非常に美しいのです。そのような言葉に触れることによって言葉遣いが磨かれてゆき、ひいては、相手に伝わりやすく説得力のある文章を書く能力が身につくことでしょう。

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純文学が持つストレス解消効果

純文学は、人の感情の中でも、できれば目を背けていたいものにスポットライトが当てられることが多いですね。孤独や、焦燥、嫉妬、失望……。読んでいると気持ちが暗くなりそうだと思われてしまうこともしばしば。

しかし、何か暗い気持ちを抱えている人にとってはこうした文章を読むことが効果的です。人はネガティブな気持ちでいるとき、それが自分特有のものと考えてしまいがちですが、純文学を読むとそれが自分に特有の問題ではないのだと気づき、大きな安心感を得ることができます。

また、もともと読書自体、ストレス解消の効果が非常に高いと言われています。イギリスのサセックス大学の研究チームが行った研究によると、読書前後のストレス状態を比べると、読書後はストレスが68%も減少することが分かったのだそう。

なにか問題を抱え、ひどく悩んでしまっているような際には、純文学を紐解いてみてください。心が軽くなることがあるはずです。

*** 純文学と言っても様々な種類のものがあります。「純文学は難しい」という先入観を持たずに、じっくりと味わってみましょう。役に立たないと思うのではなく、この小説では何を楽しむべきなのかを考えながら読むのは非常に楽しいものですよ。

(参考) Men's HOLOS|読書は脳のエクササイズ! 本を読むことで得られる3つのメリット 東京工業大学リベラルアーツセンター|新着!読書ナビ TIME|Reading Literature Makes Us Smarter and Nicer ICHIROYAのブログ|エッセイやハウツー本にはない、「小説」を読む効用があることが明らかに! 三角猫の巣窟|純文学とは何か サラダ坊主日記|美=虚無の方程式 三島由紀夫「金閣寺」

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