「分解力」は解決力。複雑なものの本質をシンプルにつかむ「分割」という技術

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あなたがお手上げだった案件を、同僚がスイスイこなしてしまう。はたまた、自分では思ってもみなかったミスを、上司に指摘される。こんな経験はないでしょうか。

あんなに自分は苦労したのに、どうして? ひょっとして自分の能力が低いのだろうか。

そんな風に考えてしまうかもしれません。しかし、それは違います。難しい問題、うまくいかない課題が、非常に複雑なのは事実。あなたはそれを「分解」し、本質を見極めるのが苦手なだけなのです。

問題解決を迫られる全ての人に。おすすめの方法をご紹介します。

 

あなたには解けるか!? 「ロウソク問題」

 

まず、この写真をご覧ください。机の上に、箱いっぱいに入った画鋲と、ろうそく、それにマッチが数本おいてあります。

 

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(出典:三谷3研ブログ|ロウソク問題の解答例~『特別講義 コンサルタントの整理術』重版記念!

ここで問題です。「ここにあるものだけを使って、壁に並行にロウソクを立て、火をつけてください。ただし、机にはロウが垂れてはいけません。」すぐ下に解答がありますから、それを見ないで少し考えてみてください。

これは、心理学の分野で非常に有名とされている「ロウソク問題」というもの。この実験、参加者の多くは非常に手こずるらしいのですが、解答はいたって簡単です。

それは、箱から画鋲をすべて取り出し、箱にロウソクを立てるというもの。箱を画鋲で壁に止めてしまえば、ロウソクは壁に並行になりますし、ロウは机に垂れません。解答を聞いてしまえば「なんだ、そんなことか」とお思いになるかもしれませんが、それが難しいのです。

 

candle_answer (出典:同上)

 

なぜ「ロウソク問題」は難しいか

 

「ロウソク問題」の難しさは、人間の思い込みにあるといわれています。実験参加者のほとんどが、箱を「画鋲の入れ物」としか考えていないのです。

一方で、あらかじめ画鋲を箱から出しておくと、先ほどの正解に辿りつく割合は急増するんだとか。「箱は中に何かを入れるための道具であり、何かを載せる台として使う道具ではない」という思い込みも、画鋲が入っていなければ、弱まるということですね。

このように、渡したちは何かを見たとき、その本来の機能や目的に捉われがちです。これを実験者は「機能的固着」と呼びました。思い出してみてください。あなたがお手上げだった仕事。もしかしたら、思い込みによって、決定的な部分を見逃しているのかもしれません。

 

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あなたがすべきなのは「分解すること」

 

結局のところ、問題解決の場面では、一体何をしたらいいのでしょうか。「ロウソク問題」で言うならば、画鋲を箱から出してみることです。

言い換えるなら、今自分の目の前にある要素を、一度全てバラバラに分解することです。要素を分解することで、見えてこなかった活用の仕方、思いつきもしなかった方策が浮かんでくるかもしれません。もしあなたの思い込みが強くて、分解してもアイデアが湧いてこなくても大丈夫。そんな時は、他人に任せてしまえばいいのです。

例えば、あなたがある業務チームのリーダーだったとします。そのチームはメンバーの定着率が悪くメンバーの入れ替わりが頻繁に起きていて、あなたは「チームを安定させて業務のパフォーマンスを上げたい」という問題意識を持っているとしましょう。この問題を解決するために、漠然と「どうすればメンバーが定着してくれるだろうか」と考えるだけではいけません。ロウソク問題の時のように、まずは状況を分解してみましょう。「Aさんは、○○という理由でチームを離れた。Bさんは××という理由。Cさんは△△が嫌だと言っていたな……。」そうすると、いままで気づかなかった問題が見え、解決策が浮かんでくるはず。うまくアイデアが出てこなければ、サブリーダーなど、別の立場の人にいったん任せてみましょう。

「ロウソク問題」の実験では、いったん画鋲を箱から出してしまえば、正答率は急激に増加していました。あなたが問題を分解して、それを他人に任せれば、その人は思い込みの全くない状況で課題に取り組むことができます。あなたが一人で取り組むよりもずっと早く終了させることができるかもしれません。

とりあえず、今あるものを分解してじっくり眺めてみる。ぜひ試してみてください。

 

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(出典:同上)

 

***

困難は分割せよ。デカルトが遺した言葉として有名ですが、単に作業量が小さくなるという意味ではありません。複雑な問題の本質を捉えるのは、容易ではないのです。しかし、分解して小さくしてみれば、それは非常に簡単になります。

あなたも「分解力」を身につけて、圧倒的なパフォーマンスを実現しませんか?

 

(参考) スーザン・ノーレン・ホークセマ,バーバラ・フレデリックソン,ジェフ・ロフタス,クリステル・ルッツ著,内田一成訳(2015),『ヒルガードの心理学 第16版』,金剛出版.

 


東京大学理科二類所属。県立浦和高等学校および駿台予備校出身。小さいころから自然や生き物に関心を持ち、高校時代に読んだ福岡伸一の「生物と無生物のあいだ」に刺激をうけ、分子生物学を志す。テニス歴6年。AKB48の大ファン。

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