なにかを新しくはじめるときに大切になる「基礎体力」は、ノウハウやメソッドだけでは養うことはできません。むしろ、良質なノウハウやメソッドを存分に活かすためにも、基礎となるべき知識や技術があると野村克也さんは考えています。

今回は、まさに独自の理論やメソッドをつくり上げてきた野村さんだからこそ語ることができる、大きく成長するために欠かせない基本姿勢をご紹介します。

【格言】
人間には成長する過程で、
3年間はがむしゃらに仕事に取り組む時期が必要

「石の上にも三年」という言葉がある。わたしも、人間には成長の過程で、3年間はがむしゃらに仕事に取り組む時期が必要だと考えている。どのような仕事も同じだと思うが、新人のころは基礎固めの時期だ。基礎知識、基本技術を身につけるには、地道な反復練習が必要である。

そして、ある程度基礎が身についてきたら、それを実践しさまざまな経験を積んでいく。その後は、失敗と成功を繰り返しながら自分なりのやり方や技術を開拓し、自分のものにしていく。

こういった自分のかたちをつくっていくまでの時期は、仕事以外のことにはわき目も振らず、がむしゃらに取り組む必要がある。逆に、それだけどっぷりとのめり込まないと、そのあとで大きく成長していくことはできない。

「新到(しんとう)3年、皓歯(こうし)を見せず」という言葉がある。3年間は白い歯を見せることなく、無我夢中でものごとに取り組みなさいという意味だ。人は必死に取り組む時間がないと、絶対に大成しない。これは、長年プロ野球界を見てきたわたしの偽らざる実感だ。

【プロフィール】
野村克也(のむら・かつや)
1935年、京都府に生まれる。京都府立峰山高校を卒業し、1954年にテスト生として南海ホークスに入団。3年目の1956年からレギュラーに定着すると、現役生活27年間にわたり球界を代表する捕手として活躍。歴代2位の通算657本塁打、戦後初の三冠王などその強打で数々の記録を打ち立て、MVP5回、首位打者1回、本塁打王9回、打点王7回など、タイトルを多数獲得。また、1970年の南海でのプレイングマネージャー就任以降、延べ4球団で監督を歴任。ヤクルトでは「ID野球」で黄金期を築き、楽天では球団初のクライマックスシリーズ出場を果たすなど輝かしい功績を残した。現在は野球評論家として活躍中。

Photo◎産経ビジュアル

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がむしゃらな努力を「非効率」ととらえたり、ただの「根性論」と片付けて軽視したりすると、のちに大きく成長していくための基礎体力がまったく身につきません。ワーク・ライフ・バランスを意識するのは悪いことではありませんが、新社会人や新しい仕事をはじめたばかりのときは、やはり地道な反復練習がとても大切なのです。

数多くの若い選手たちを指導し、その成長の軌跡を目の当たりにしてきた野村さんだからこそわかる指摘には説得力があります。もちろん、すでにキャリアを積んできた人にも、仕事をするうえで忘れたくない姿勢ですよね。

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カリスマの言葉シリーズ#016『野村の悟り』

野村克也

セブン&アイ出版 (2018)