実力は折り紙つきなのになぜか勝利に恵まれなかったり、運に見放されてしまったりするプロ野球選手はたくさんいると野村克也さんは言います。これはスポーツに限らず、仕事の場面でも同じかもしれません。周囲から応援される人や、どういうわけか運がいい人は、自分だけでなくチーム全体を成長させていきます。

今回は、かつて野村さんが出会った運を引き寄せる力をもった一流選手のエピソードとともに、彼らの本質とも言うべき特性に迫ってみます。

【格言】
成績だけでなく、取り組む姿勢が真摯で、
みんなに尊敬される人格を備えているから
神様が味方してくれる

わたしには、「このピッチャーは本当に運がいい」と感じさせられたピッチャーがふたりいた。ひとりは南海ホークス時代の杉浦忠。もうひとりが、マー君こと田中将大だ。

ふたりには共通点があった。このふたりが投げた試合は、打たれたとしてもなぜか勝てたし、打線がよく点を取ってくれた。それは、「チームの気運」をふたりが呼び込んでいたからだと思う。

「今日の試合は杉浦が投げるから絶対に負けない」「今日はマー君が投げるから勝てる」。ふたりとも、そういうムードをチームに与える選手だったからこそ、彼らが投げる試合は負けなかったのだろう。杉浦もマー君も野球選手としてだけではなく、人間としても周囲に評価されようと努力していた。それが並の選手と一流選手の差である。

長嶋茂雄と王貞治が、なぜ多くの日本人に愛されているのか。それは野球の成績だけではなく、誰よりも野球に取り組む姿勢が真摯で、みんなに尊敬される人格を備えているからである。そういう人には、神様が味方してくれるのだ。

【プロフィール】
野村克也(のむら・かつや)
1935年、京都府に生まれる。京都府立峰山高校を卒業し、1954年にテスト生として南海ホークスに入団。3年目の1956年からレギュラーに定着すると、現役生活27年間にわたり球界を代表する捕手として活躍。歴代2位の通算657本塁打、戦後初の三冠王などその強打で数々の記録を打ち立て、MVP5回、首位打者1回、本塁打王9回、打点王7回など、タイトルを多数獲得。また、1970年の南海でのプレイングマネージャー就任以降、延べ4球団で監督を歴任。ヤクルトでは「ID野球」で黄金期を築き、楽天では球団初のクライマックスシリーズ出場を果たすなど輝かしい功績を残した。現在は野球評論家として活躍中。

Photo◎産経ビジュアル

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スポーツでも仕事でも、ひとりの力だけで結果を出すことなどできません。そこには必ず、あなたを支えてくれる「他者の力」が働いているのです。そして、天賦の才能に恵まれた者ほど自らの力に奢ることなく、周囲から評価されようと努力を続けていることには新鮮な驚きを感じます。

そんな人になっていくためには、「日々、真摯な取り組みを続けることに尽きる」と野村さんは言います。大きく成長して最終的に良い結果をつかむためには、やはり「近道はない」ということなのでしょう。

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カリスマの言葉シリーズ#016『野村の悟り』

野村克也

セブン&アイ出版 (2018)