あなたが子どものころに夢見た、将来の仕事や未来の光景はどのようなものでしたか? 先行きに不透明感が増す現代においてこそ、このような子どもが自由に描く「夢」がもつ力が必要だと、教育評論家の尾木直樹さんはいいます。

でも、「夢は叶うとは限らない」「厳しい現実を教え、それに備えることのほうが必要」と不安ばかりを抱えた大人が増えているのも事実。今回は、尾木さんが大切にしている、「夢を描くこと」自体がもつ力についてご紹介します。

【格言】
自分の将来をイメージする力、
自己実現できる力を与えてくれるのが“夢”

最近の子どもに「将来の夢は?」と尋ねると、「大企業のサラリーマン」とか「公務員」といった答えが返ってきてびっくりさせられます。理由を聞くと、「安定しているから」などという大人びた答えが飛び出してさらにびっくり。親からもそういわれているんでしょうね。こんな先が見えないご時世ですから、子どもに将来苦労させたくないという親心から「サラリーマン」や「公務員」を子どもにすすめるのでしょう。

でも、子どもが“安定志向”で自分の将来像を描くなんて、問題だと思います。「電車が好きだから運転士になりたい」「お菓子が好きだからケーキ屋さんになりたい」というふうに、自分の個性から社会との接点を作って未来につなげていくことが大事。そこに“夢”があるのです。

夢をもつためには、自分の未来をイメージする力、そして、自己実現していく力が必要です。結果的にその夢が実現するとは限りませんが、夢に向かって努力し、困難にぶつかりながら、その過程で培われる自信や自己肯定感が重要なのです。

こうして培われた力は、将来の進路が異なる方向へ転換されることになっても、新たな夢を見つけ、実現させるパワーとなるにちがいありません。

【プロフィール】
尾木直樹(おぎ・なおき)
1947年、滋賀県に生まれる。早稲田大学卒業後、私立海城高校、東京都公立中学校にて22年間にわたって教職に従事。その後、大学教員に転身し、2012年4月からは法政大学教職過程センター長・教授を務める。子育てと教育、メディア問題の專門家として調査・研究に取り組む一方、知見を活かし各メディアに出演している。近著に『取り残される日本の教育 わが子のために親が知っておくべきこと』(講談社)、『教育とは何?―日本のエリートはニセモノか―』(中央公論新社)などがある。

Photo◎川しまゆうこ

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夢は実現するとは限らない。でも、夢に向かって進んでいく力こそがあなたに新しい夢を与えてくれる――。大人の安易な安定志向が、本来自由に心を飛翔させることができる子どもたちを枠に押し込めています。それよりも自由に夢を描き、自分で軌道修正を繰り返しながら生きていける、そんなたくましい心をもった子どもを応援していきたいものですよね。

もちろんわたしたち大人にとっても、夢を描くことは、ますます不透明感が増す現代を生き抜くための頼もしい力となってくれることでしょう。

■尾木直樹さん『カリスマの言葉』第1回はこちら
学歴が通用しなくなる社会で、これから必要になる真の「学びの力」とは【尾木直樹『カリスマの言葉』第1回】