羽生善治 テクノロジーが進化し続ける時代に、 変わることなく存在するプロの「競争原理」【棋士たちの言葉 第2回】

テクノロジーの発達によって、勉強や仕事の環境は変化し続けています。世の中には目標達成のためのプロセスを助けてくれるツールや情報、ノウハウがあふれ、それらを上手に活用できれば、驚くほどのスピードで望む成果をあげることもできるでしょう。

しかし棋士の羽生善治さんは、そうしたテクノロジーの恩恵を受け取りながらも、第一線のプロとして変わらない姿勢を何十年も堅持しています。今回は、他人よりも抜きん出た成果をあげる人だけが持つ、「競争」に対する考え方をご紹介します。

【格言】 高速道路を走り抜けた先では 大渋滞が起きています

将棋は伝統的である一方、理知的なゲームである。そのためどんな時代でも、最先端の技術と結びついて発展してきた。印刷技術が発達し、出版物が身近なものになると、新聞の将棋欄(※)や棋士が解説した定跡書、棋譜を集めた実戦集がアマの棋力向上に役立った。現代将棋は、ITとの関係が密接である。そして、上達のための手段が平準化され、かつてないほどに上達のための洗練されたツールが手に入りやすくなった。羽生善治は、こう述べている。

「ITとネットの進化によって将棋の世界に起きた最大の変化は、将棋が強くなるための高速道路が一気に敷かれたということです。でも高速道路を走り抜けた先では大渋滞が起きています」(梅田望夫『ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる』)

「高速道路」に乗ってすいすいと前に進み、ある程度の強さまでを得ることは、以前と比べれば容易となった。しかしそれはもちろん、他者にとっても条件は同じである。真の競争は、その先からはじまるのだ。

「学問に王道なし」という。将棋もまた、上達のための「高速道路」はあっても王道はない。将棋は奥が深い。「高速道路」の先にはまだまだ、未知の荒野が残されている。

※将棋欄 日本のほとんどの新聞には、将棋欄がある。そこでは、名人戦などプロ棋士の公式戦から地元のアマチュア大会までさまざまな棋譜が掲載される。また、詰将棋や、次の一手の問題などが出題されることもある。身近なメディアを眺めるだけでも、将棋の上達に結びつく。

*** インターネットをはじめとするITは、誰にでも開かれたツールでありリソースです。そこに広がる膨大な情報に平等にアクセスできる環境が整ったことで、誰にでも速く、大きく成長する機会が用意されました。

しかし誰にでもアクセス可能ということは、条件は再び同じになったということ。成長のプロセスをいくら短縮しても、その後に真の競争が待っているのです。つねに厳しい戦いにさらされているプロ棋士だからこそ、そんなシビアな現実を見つめながら、つねに「王道」を求めることなく研鑽を積んでいるのでしょう。

【棋士プロフィール】 羽生善治(はぶ・よしはる) 1970年9月27日、埼玉県所沢市に生まれ、東京都八王子市で育つ。82年、小学生名人戦で優勝し、同年、二上達也九段門下で奨励会入会。85年、四段。89年に竜王、94年には名人を獲得。96年には、史上初の七冠同時制覇を達成した。2017年、永世七冠。18年、国民栄誉賞受賞。タイトル獲得数は歴代1位の99期(18年3月末現在)。

■棋士たちによる『カリスマの言葉』一覧はこちら shogi-kishi-banner1

 

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