知的機能と運動能力がアップする。世界中で注目されている “2つの成分“ とは?

認知機能(知的機能)を高めるということは、学習や仕事のみならず、運動能力を高めることにもつながります。知力をつけ、スポーツでも力を発揮したい方は、神経細胞を増やし認知機能も高めてくれる、ある2つの成分に注目してみてはいかがでしょう。

「フラバノール」と「レスベラトロール」

世界のさまざまな研究チームが、「フラバノール」と「レスベラトロール」という成分に注目しています。実はこれらが、認知機能を高め、運動能力までも高めてくれる成分なのです。

認知機能を高め、記憶力の低下を防ぐ「フラバノール」

伊ラクイア大学の研究チームは、フラバノールを摂取した被験者のワーキングメモリ(作業記憶)が増幅し、視覚情報の処理が改善したことを確認。「(フラバノールを多く含む)チョコレートやココアは、人間の認知機能の低下を防ぎ保護する栄養補助食品になりうる」という見解を、学術雑誌『Frontiers in Nutrition』に発表(2017年5月16日)しています。研究チームは、フラバノールが脳の海馬の中にある「歯状回」への血流量を増加させる作用に注目しているとのこと。海馬は、学習や記憶に重要な役割を持つ領域です。

2016年5月1日号の『Appetite』に掲載された、Georgina E Crichton博士(南オーストラリア大学)らの論文でも、「(フラバノールを豊富に含む)チョコレートを頻繁に食べている人ほど、認知機能が高い傾向にある」と明らかにしています。フラバノール摂取後は、90分~2時間ほどで認知機能が上昇するのだとか。

また、それ以前にも、米コロンビア大学メディカルセンターなどの研究チームは、2014年10月26日英科学誌『Nature Neuroscience』に掲載した研究論文で、フラバノールを摂取したグループが、記憶力を大幅に改善したと発表しています。その際にも、「歯状回」への血流量増加が見られたそう。

脳の神経細胞を活性化する「レスベラトロール」

そして、もうひとつは果物のベリー類やワインなどに含まれるレスベラトロールです。キングス・カレッジ・ロンドンの神経科学者、サンドリン・チュレ氏によれば、レスベラトロールは新しく生まれた神経細胞の生存期間を長くするのだそう。また、レスベラトロールを摂取すると前頭葉への血流量が増えるため、脳機能の改善にも役立つと報告されています。

ちなみに、長いあいだ受け継がれてきた「大人の脳には新たな神経細胞は生まれない」という独断的な説は、1998年、米サンディエゴにあるソーク研究所のフレッド・ゲージ教授らにより、「成人の脳でも神経細胞が新しく成長する」と発見され覆されました。実はその発見場所も「歯状回」なのです。

つまり、レスベラトロールを摂取することにより、新しく生まれた神経細胞の寿命を延ばし、なおかつフラバノールを摂取することにより、脳の歯状回への血流量を増やし、認知機能を高めることができるわけです。なおさら、レスベラトロールは、思考、意思、創造力をつかさどる前頭葉への血流量も増やしてくれます。

そして、これらには、運動能力の向上も期待できるんですよ。

chitekikinou-undounouryoku-02

脳機能を高めて運動能力もアップ

運動のパフォーマンスを向上させるには、身体能力だけではなく、空間認識能力や状況判断能力など「脳の認知機能」も必要だと考えた立命館大学の大学院生がフラバノールに着目。同大学の教授のアドバイスを受けながら、フラバノールを豊富に含む無糖のココアドリンクを摂取し、60分後に運動、30分毎に認知機能のテスト等を行うという実験をしました(2016年)。

その結果、運動自体も認知機能を高めるといわれてますが、フラバノールを摂取することで、運動のみを行うよりも認知機能が高まったそうです。しかも、90分後からといわれていたフラバノール効果の出現が、30分後すでに出始めたのだとか。ちなみに、この実験での認知機能テストは、特にスポーツで重要な状況判断能力が中心でした。

もちろん、この実験は「スポーツに関わる認知機能が高まれば、運動能力もアップする」という考えにもとづいて行われたもの。農学博士の大澤俊彦教授が監修した『抗肥満食品・素材の開発と応用展開―メタボリックシンドロームにおけるバイオマーカーの確立と応用(2007年)』でも「チョコレート摂取による運動能力の向上が報告されている」とはあるものの、フラバノールとの直接的な関係は記されていません。

しかし、これらは「フラバノールを含む食品の摂取で運動能力が高まる」と期待できる要素であるのも確かです。

それに、芝浦工業大学システム理工学部教授の福井浩二氏による論文『レスベラトロールの非抗酸化作用について(2016)』には、「レスベラトロールを投与したマウスは、寿命延長効果や運動機能の改善効果を示した」と記されています。

運動には認知機能が関係するという前提もあるのですから、脳機能を高める2つの成分は、運動能力の向上にも役立つと考えられるでしょう。

「フラバノール」と「レスベラトロール」が含まれる食品

ではここで、「フラバノール」と「レスベラトロール」が含まれる食品をご紹介します。

<フラバノール> ・チョコレート ・ココア ・ブラックベリー ・赤ワイン ・緑茶

<レスベラトロール> ・ブドウ、ブルーベリー、クランベリーなどベリー系 ・赤、ロゼ、白ワイン(一番多いのは赤ワイン) ・ピーナッツの皮 ・ココア

【注意点】 ※ミルクチョコレートやホワイトチョコレートは、フラバノール含有量が低いか含まれていない。 ※甘いチョコレートは糖分が多いため、食べ過ぎには注意。 ※高濃度カカオを100g以上食べると、カフェインの安全な量を超える可能性あり。 ※上記をふまえ板チョコレートであれば、1日半分以下の摂取を目安に。

*** フラバノールとレスベラトロールはどちらも抗酸化物質ポリフェノールの一種。ほかの抗酸化物質にも、まだまだ隠れたパワーがあるかもしれませんね!

(参考) ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト|「チョコレートは、あなたの脳力をブーストする」との研究結果 NIKKEI STYLE|チョコレートをよく食べる人ほど、認知機能が高い傾向 国際ニュース:AFPBB News|ココアの「フラバノール」で記憶力低下が改善、米研究 NHK健康ch|記憶力アップのカギ!?海馬で起きている大事件・神経細胞の生まれ変わり Wikipedia|レスベラトロール TANQ 立命館大学理系スペシャルサイト|運動能力がアップする、効果的なドリンクは? 日経Gooday|どれだけ知ってる?チョコレートのウソ・ホント 福井浩二(2016),『レスベラトロールの非抗酸化作用について』,芝浦工業大学システム理工学部生命科学科分子細胞生物学研究室,Vol.90 5-6 pp.286-289 大澤俊彦監修(2007),『抗肥満食品・素材の開発と応用展開―メタボリックシンドロームにおけるバイオマーカーの確立と応用』,シーエムシー出版.

会社案内・運営事業

  • 株式会社スタディーハッカー

    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
    >>株式会社スタディーハッカー公式サイト

  • ENGLISH COMPANY

    就活や仕事で英語が必要な方に「わずか90日」という短期間で大幅な英語力アップを提供するサービス。プロのパーソナルトレーナーがマンツーマンで徹底サポートすることで「TOEIC900点突破」「TOEIC400点アップ」などの成果が続出。
    >>ENGLISH COMPANY公式サイト

  • STRAIL

    ENGLISH COMPANYで培ったメソッドを生かして提供している自習型英語学習コンサルティングサービス。専門家による週1回のコンサルティングにより、英語学習の効果と生産性を最大化する。
    >>STRAIL公式サイト