英語の勉強や、ジム通いを習慣化したい。そう思いつつも、つい誘惑に負けて先延ばしにしがち……。そんな人はいませんか? 筆者もそうでした。

今回は、行動科学者の研究によって明らかになった、習慣化の成功率を2~3倍にする、とっておきの工夫をご紹介します。1分もかからず簡単にできて、大きな効果を得られますよ。

アクション・トリガーで課題の達成率が2.3倍に!

米国NewYork UniversityのPeter Gollwitzer教授とスイスのUniversity of ZurichのVeronika Brandstätter教授は、アクション・トリガー(行動の引き金)は習慣化に極めて効果的であることを発見しました。

この2人の心理学者が大学生を対象に行なった調査では、アクション・トリガーによって課題の提出率が2.3倍にまで上がったそう。

まず、アクション・トリガーなしのグループでは、レポートの提出率は33%に留まりました。当初ほとんどの学生が課題を提出するつもりだったものの、実際には67%の学生は実行に移せなかったのです。

一方「いつどこでレポートを書くか」というアクション・トリガーを事前に決めて、書き出すように指示があったグループでは、なんと75%もの学生がレポートを提出したのだそう! 書き出したのは「○日の朝、家族が起きる前に、父のオフィスで課題に取り組む」というような簡単な一文のみ。

時間と場所を含んだ「行動の引き金」を設定しておくだけで、課題の提出率が2倍以上になったのです。アクション・トリガーの持つ力の強さがわかりますね。

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運動習慣の確立における成功率が約2.5倍に!

勉強だけではありません。なんと、運動習慣の確立にも抜群の効果を発揮します。British Journal of Health Psychologyに掲載されている、248人の成人を対象にした2週間の運動回数を調べた調査結果を見てみましょう。

アクション・トリガーを設定しなかった通常グループの運動の実施率は、約37.5%。一方「翌週いつどこで運動をするか」を事前に決めたグループでは、91%の人々が運動に取り組んだそう。こんな簡単なことだけで、約2.5倍の人々が運動に取り組むことができたのです。

困難な目標の成功率を3倍に高めるアクション・トリガー

Stanford Graduate School of Businessの教授Chip HeathとDuke Universityの研究者Dan Heathは、アクション・トリガーの効果は簡単な目標よりも、難しい目標を達成する際により発揮されると主張しています。

根拠の一つは、アクション・トリガーが目標の達成に与える影響に関するある調査結果。もともと成功率が高い簡単な目標では、アクション・トリガーの設定によって、78%から84%と、6%のわずかな達成率の上昇に留まりました。

一方、困難な目標においては、アクション・トリガーの効果で、達成率が22%から62%と、約3倍にまで向上したのです!

年齢や状況に関係なく大きな効果を発揮する

アクション・トリガーは、年齢や状況に関係なく効果があります。例えば、平均68歳のリハビリ患者に「いつ散歩に行くか、その時間と場所を記してください」と頼み、アクション・トリガーを事前に書き出してもらうだけで、リハビリ期間が0.4倍に短縮されたのだとか。

一人で立てるようになるのが7.7週間から3.5週間、お風呂に入れるようになるのが7週間から3週間、車の乗り降りができるようになるのが2.5ヶ月から1ヶ月と、回復するまでの時間が半減したそうですよ。

万能薬:アクション・トリガー

勉強から運動、ダイエットやリハビリ、検診の実施率まで、その効果は様々な分野で実証済み。なんと、85もの様々な調査を通じて、8,155名の被験者が、同一のタスクにおいて、アクション・トリガーを設定した特定の人々はそうではない74%の人よりも良い結果を残したと回答しています。

アクション・トリガーがなぜ効果的なのか

なぜこれほどまでに、アクション・トリガーは効果的なのでしょうか。

Peter Gollwitzer教授は、アクション・トリガーは特に甘い誘惑や悪い習慣に対抗するのに役立つと主張しています。なぜかというと、事前に「いつどこで何をするか」を考えておくことで、状況や感情に左右されにくくなるから。

アクション・トリガーを事前に決めておくことで「やろうかな、それともやめておこうかな」と悩む隙がなくなります。悩むよりも一度決めたことに従うほうが心理的に楽なので、結果的に行動しやすくなるのです。

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アクション・トリガーの決め方のコツ

アクション・トリガーは、具体的に決めるのがポイント。曖昧な一文では、効果がありません。例えば「週末、家でTOEICの勉強をする」「来週、会社でプレゼンテーションの準備をする」というような内容では、アクション・トリガーとして意味がないのです。

「週末のどの日のどんな時間帯に、家のどこで、どんな勉強をするか」「来週何曜日の何時に、オフィスのどこで、どんな準備をするか」を具体的に決めておく必要があります。

・日曜日の朝一番、起きて顔を洗った直後に、部屋のデスクで、公式問題集に取り組む
・来週水曜日の11時、社内の共有スペースで、同僚の○○と資料作成を行う

上記のようなアクション・トリガーが理想的。時間と場所と行動を具体的にイメージできるよう、詳細まで決めておくことが成功の秘訣です。

アクション・トリガーを書き出そう

時間・場所・行動の3つのアクション・トリガーを決めたら、すぐに手帳に書き出しておきましょう。エビングハウスの忘却曲線によると、1日後には74%、1週間後には77%忘れてしまいます。

毎日のように目を通すところに書き出すことで、自分で決めたアクション・トリガーを意識できるようになるはず。その結果、行動に移すことのできる確率が大幅に高まるでしょう。

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やりたいとは思っていてもなかなか取り組めていないことや、新たに習慣にしたいことがあれば、アクション・トリガーの力を借りてみてはいかがでしょうか。成功率が2~3倍に高まるはずですよ。

(参考)
Chip Heath, Dan Heath(2010), “Switch: How to Change Things When Change Is Hard”,Currency.
James Clear|Achieve Your Goals: Research Reveals a Simple Trick That Doubles Your Chances for Success