コツは "受け手目線" の話し方。心をつかみ、人を動かす『話し方の技術』

人前で話すことは得意ですか? そう聞かれて「ものすごく得意です」と答えられる人は少ないかもしれません。むしろ「緊張するから苦手」という人が多いのではないでしょうか。では、人とのコミュニケーションはいかがでしょう。こちらも得意・不得意が分かれますよね。

プレゼンテーションや会議での発言など、人前に立って話さなければならない機会は、仕事をするうえで多く存在します。また、職場でも学校でもプライベートでもコミュニケーションは付きものです。しかし、相手にきちんと「伝わる」話し方をするのはなかなかむずかしいもの。

そこで、国家のリーダーを決める際に重要視される「演説」に注目してみました。オバマ、ケネディ、リンカーンなど、歴代アメリカ大統領の彼らは今日でも、優れた演説と印象に残る台詞で有名です。人気を得る演説と、そうでない演説の違いは何なのでしょうか。それは“相手に伝える力”かもしれません。先日アメリカ大統領に就任したドナルド・トランプ氏の特徴的な演説を中心に、物事を効果的に伝える話し方を探ります。

トランプ大統領の英語は幼稚?

新たにトランプ政権が誕生してから注目の的となっているドナルド・トランプ大統領。彼の英語は幼稚と言われていますが、当選に至った理由は何でしょうか。そんな、今話題のトランプ大統領のこれまでの演説の中から、特に印象強い言葉をピックアップしてみます。

Make America great again. (アメリカを再び偉大な国にしよう)

(引用元:YOMIURI ONLINE|トランプの小学生英語が米国民にササる訳

トランプ大統領が選挙キャンペーン中、度々用いていたスローガンです。何度も耳にした方が多いはず。このフレーズ、もともとは1980年の大統領選挙でレーガン元大統領が使用していたものなのだとか。日本では中学校で習う文法、いわゆる「Make O C(OをCの状態にする)」を用いた、誰が聞いても簡潔でわかりやすい一文です。

From this day forward, it's going to be only America First, America First. (今日から今後は、ただひたすら「アメリカ第一、アメリカ第一」です)

(引用元:BBC|【米政権交代】「アメリカ第一」 トランプ新大統領の就任演説 全文と和訳

トランプ氏は就任演説で、度々掲げてきたAmerica First(アメリカ第一主義)という理念を繰り返し発言しています。コピーライターである佐々木圭一さんの著作『伝え方が9割』によると、このように同じ言葉を繰り返し用いる話法はリピート法と呼ばれるのだそう。同じ言葉を繰り返すことで、より記憶に残りやすく、内容に説得力が生まれてきます。

3.

I AM YOUR VOICE.(私はあなたの代弁者です)

(引用元:NHK NEWS WEB|トランプ氏受諾演説(英語全文)

トランプ氏が米共和党の大統領候補として正式に指名された際、指名受諾演説で用いたフレーズです。英語独特の言いまわしですが、「私の言葉はあなた方の声を代弁しているに過ぎない」という強い意志が四語で伝わってくる印象深い一文です。

受け手に合う言葉や語り口調を

簡単な語彙や、くだけた言いまわしが特徴的なトランプ大統領の演説は、「小学生レベルの英語」と揶揄されることも少なくありません。しかし、支持層の多数を占める労働者階級の人々にとっては、これまで難解だった演説がグッとわかりやすくなったはず。政治に対する不満、治安や雇用への不安などをわかりやすく代弁してくれるトランプ大統領を彼らが支持するのは、ごく自然な流れだといえます。つまり、需要に見合った話し方がトランプ支持のカギとなったわけです。

これは、私たちが職場や学校などで人とコミュニケーションをとる際にも、重要なポイントとなります。専門的な言葉や、難解な語句をたくさん使っても、受け手に伝わらなければ何の意味もありません。逆に、専門性の高い内容を伝えるべき相手に、かみ砕いた言葉やくだけた雰囲気は必要ないのです。

勉強の苦手な若者には、くだけた語り口調かつわかりやすい言葉で。 大人しく控えめな人には、丁寧な口調で穏やかな言い回しを。 体育会系の人には、熱意をもった強い言葉と口調で。

といった具合に、物事を最も伝えたい相手に照準を合わせたコミュニケーションを心がけてみてはいかがでしょう。

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歴代人気一位 リンカーンの歴史に残る演説

リンカーンは、歴代アメリカ大統領のなかでトップの人気を誇る、伝説的な大統領です。米ペンシルベニア州ピッツバーグのカーネギー・メロン大学・言語テクノロジー研究所の発表によると、リンカーンのスピーチに用いられている単語や文法から判断した英語のレベルは高校二年生程度で、過去の大統領の中では最も高いのだそう。小学生レベルと揶揄されたトランプ大統領とは対照的です。

リンカーンといえば、非常に有名なのが「ゲティスバーグ演説」。この演説は、1863年ペンシルべニア州ゲティスバーグにある、国立戦没者墓地の奉献式にて行われました。全文がわずか二分という非常に短い演説ですが、有名な 「government of the people, by the people, for the people」 (人民の, 人民による, 人民のための政治) の一説にも見られるように、前述した「リピート法」を用いて同じ言葉を複数回繰り返しています。この極めて短い演説は高く評価され、リンカーンの人気を後押しする結果となりました。

彼には天性のセンスがあったと言えますが、本当に伝えたいことだけを強調する話術は、私たちも取り入れられるはずです。プレゼンテーションや会議での発言、大事な話をする際にも、ついつい長々としゃべってしまいがちですが、極力簡潔に、そして最重要項目だけを複数回リピートするよう心がけてみては? きっと、伝える力が強まるはずです。

*** アメリカの大統領演説を中心に、効果的な語り方を探りました。どうしても伝えたい事柄があるときは、人々の心を動かした大統領たちの演説にならって、「伝えたい相手に合わせた口調」「簡潔な言葉」「短い会話内でのリピート」などを心がけてみてください。

(参考) NHK NEWS WEB|トランプ氏受諾演説(英語全文) BBC|【米政権交代】 「アメリカ第一」 トランプ新大統領の就任演説 全文と和訳 YOMIURI ONLINE|トランプの小学生英語が米国民にササる訳 Wikipedia|ゲティスバーグ演説 佐々木圭一著(2013), 『伝え方が9割』, ダイヤモンド社.

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