「水素水は体に良い」「いやそんなことは証明されていない」……。水素水の健康効果が本当なのか嘘なのか、話題になったのはつい先日のこと。巷には、水素水のように、もっともらしい科学的効果を謳った商品や方法論(エセ科学、疑似科学)が溢れ返っています。

水素水が話題になったとき、あなたはその健康効果を信じ込んだほうでしょうか? それとも「いやいやそんなの本当かわからないよ」とまず疑ったほうでしょうか?

普段から勉強に一生懸命で、知識の習得に励んでいる人でも、本当らしく提示された科学的な情報を疑ってかかるのは難しいことだと思います。“科学的に正しそうなもの”を“科学的に否定する”というのは、実のところ結構大変ですから。専門家でもない一般の人が、商品や方法論の真偽を、自分の力で本当かどうか確かめるなんて、現実的には不可能ですよね。

だからこそ私たちは、様々なことを鵜呑みにしてしまいがちなもの。子供の頃からずっと、正しいことを、苦労することなく教わるのが当たり前でしたから、「疑いの目を向ける」というのはとても難しいことなのです。

今回はいくつかのエセ科学を例にして、ほんとのところそれってどうなの? という物事を疑ってみることの大切さをお伝えします。仮に正しそうだと思っても疑いの目を向けてみる習慣が付けば、学びや仕事に取り組むうえで不可欠な力を養うことにも繋がりますよ。

もっともらしい言葉で飾ってあるだけのパターン~マイナスイオン、水素水~

マイナスイオンという言葉は、20世紀後半から徐々に広まるようになり、マイナスイオンを出す効果のある商品などは一時期かなり流行り、流行語にまでなりました。筆者は、このマイナスイオンが実はエセ科学であることを、かなりの年月が経ってから知り驚いたのですが、同じような人は沢山いたのではないでしょうか。

マイナスイオンがここまで広く認知されるに至ったのには、大手電機メーカーがマイナスイオンを発生させる製品を売り出したことや、マイナスイオンの効果がテレビで紹介されたことが原因にあります。また、実際に負電荷(マイナスの電気を帯びている)というものは存在するため、我々消費者は簡単に「マイナスイオンか、ふーんそんなものがあるのね」と受け入れてしまったのです。

また水素水にしても、商品紹介を見ると化学式が書かれていたり、もっともらしい性質や効能が書かれています。大手の飲料メーカーも水素水関連商品を出していて、何も知らない消費者は、いかにもその健康効果が実証済みのものであるかのような印象を受けてしまうのです。

しかしほとんどの人が、マイナスイオンや水素水のように「本当らしく見えるもの」と「実際には本当ではないこと」を明確に分けることはできません。科学的っぽい効果を謳うものが数えきれないほど巷にあふれているのは、こうした消費者の弱みにつけこんでいると言えるでしょう。

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再現性がないのに科学的と謳っているパターン~エセ心理学、ゲーム脳~

科学の定義として重要なものに、再現性があります。再現性とは、特定の方法や状況で実験すれば、誰が行っても必ずその結果になるということです。

しかし、世の中には、一部だけの結果から効果を謳うものが数多く存在します。例えば色彩心理学。「人前で話すのが苦手でも、黄色を取り入れれば、頭の回転が速くなり会話がスムーズになる」といったような、それが本当に統計的に確かな結果なのか疑問視されるような説も散見されるのです。

科学の世界では、それが本当なのかどうかを、専門家同士で厳しく審査し合います。そうして保たれている科学の信頼を、心理学(心理学は科学の一分野として扱います)という名前をつけることによって良くない方向に利用しているのが、この例です。

また別の例としてゲーム脳にも触れておきましょう。ゲーム脳とは、簡単に言えば「ゲームは脳に悪い!」という主張のこと。以前、ゲームによる脳への悪影響を説いた書籍が有名となり知られるようになったゲーム脳ですが、証拠となるデータのサンプル数が少ないことや論理性に問題があることなどから再現性が乏しく、エセ科学の域を出ないと扱われているのが現状なのです。

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疑いの目を向けることの重要性

世の中は、上記のようなものだけでなくほかにも沢山のエセ科学的なものにあふれています。これは、現代では科学が社会的に高く信頼されていることの現れ。科学っぽいものは、どうも本当に思えてしまうというわけです。

エセ科学をすぐに信じてしまうことの弊害は、高いものを買わされて受ける金銭的な実害や、イメージの悪化(この人、なんだか怪しい商品を使っている……)だけにはとどまりません。学びやビジネスの観点から言えば、社会人としての今後の成功に関わってくるような価値観の形成に大きな影響を及ぼすのです。

エセ科学と社会人としての成功にどんな関係があるのだと思うでしょう。

エセ科学をすぐに信じるというのは、物事に対し批判的に疑いの目を向けるという力が弱っているということ。ビジネスパーソンならば、なんでも受け売りになってしまい自分の意見を持たず、情報や仕事のあり方、周囲の行動などに対してすべて受け身の、指示待ち人間になることに繋がります。学生など勉強が本業であるなら、批判的なものの見方ができないでいれば、レポートやゼミなどで何も個性的な意見が言えず、目立たない、平凡な一学生で終わってしまいます。

こういったメンタリティーのままでは、人並あるいは人の二倍三倍もの成果を出すことは、到底期待できませんよね。これが、エセ科学を信じ込んでしまうことによる、より重大な弊害なのです。

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今回は、エセ科学にありがちな二つのパターンについてご紹介しました。エセ科学を安易に信じ込まないこと、科学っぽい本当らしい情報に触れた時はまず批判的に考える癖をつけること。このことは、あなたの学ぶ力を高めるいいチャンスでもあるのではないでしょうか。

インターネットで沢山の情報が入ってくる現代だからこそ、一度それが本当なのかを考え、真実らしく語られるものに疑いの目を向けましょう。自分の中で、一度でもいいから反芻するということを意識したいものです。それが、長期的に見て、質の高い学びに繋がっていくはずです。

(参考)
文部科学省|PISA調査(科学的リテラシー)及びTIMSS調査(理科)の結果分析と改善の方向(要旨)
JSTニュースリリース|なぜ、日本人は科学リテラシーが低いのか?
明治大学科学コミュニケーション研究所|疑似科学とされるものの科学性評定サイト マイナスイオン
明治大学科学コミュニケーション研究所|疑似科学とされるものの科学性評定サイト 色彩心理学
イオントレーディング|マイナスイオンとは?
日本ホメオパシー医学協会|ホメオパシーとは
STUDY HACKER|水素水
カラーセラピーランド|色彩心理学(色の効果と心身への影響)