「人間は習慣の生き物である」

私たちの脳は、驚異的な適応力によってあらゆるものに慣れていきます。住み始めた当初は何もわからなかった街も、ひと月もすればどこに何があるのか把握できますし、知らない人ばかりの職場に異動しても、ほんの数ヶ月経てば居心地よく感じるもの。このような「脳の習慣化」によって、私たちは無難に生活が送れているといっても過言ではありません。

しかしそれと同時に、初めは楽しいと思っていたことも、あっという間に陳腐化していき、かつての楽しさを感じることができなくなってしまった、ということも起こります。仕事でも遊びでも、このような感覚は誰もが経験したことがあるのではないでしょうか。こうなってしまっては、退屈を感じるようになってしまいます。

この問題に、どう対処すればよいのでしょうか。そこでご紹介したいのが、行き詰まったら「不便」に飛びこんでみるという、ちょっと変わった方法です。

嫌なヤツと食事に行って、嫌な思いをする

ここで、とある人物が行なっている、マンネリを打開するためのおもしろい方法をひとつご紹介します。その人物とは、AKB48をはじめとするアイドルグループのプロモーションや作詞活動など、マルチな才能を発揮し続けるヒットメーカー秋元康氏です。

その彼が継続している習慣のなかに、ひときわ奇妙なものがあります。それは、「嫌いな人を誘って年に一度食事をする」というもの。しかもその食事会は、その人と友好を深めるといった目的で行なわれるものではありません。「わざわざ嫌な思いをするためにその人を誘うのだ」と秋元氏は言います。つまり「やっぱりコイツが嫌いだ」とか「嫌いだけど多少ましになっている」ということを確認しに行くのだそうです。

なぜこんなことをするのでしょう。それは、嫌な思いをしながらもその人を観察し、何が嫌なのかを考えることによって、思わぬ発見をすることができるからなのだとか。今回皆さんに注目していただきたいのが、この「不快なことや不便な思いをあえて経験する」ということなのです。

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日本人は「カオス」に弱い

ところで、日本という国は世界でも稀に見るほどに生活をしやすい国です。電車は定刻通りに来る。街なかにはゴミもほとんど落ちていない。スーパーやコンビニエンスストアに行けば何でも購入することができる。不快や不便を取り除き、快適な環境を作りあげるということに関しては、日本人は世界一といってもよいでしょう。

しかし、そのような「カオス」が取り除かれた便利な社会の中では、弱っていくものがあることもまた事実です。予防医学者の石川善樹氏は次のように語っています。

非常にカオスが少ない……、人生や世の中はコントロール可能であるという価値観が、無意識で染み付いているのが日本人。でも、それは逆にいうと、突然、変化球や予期しないことが起こると、対応しにくいことでもあるらしいんですね。

(引用元:logmi|デキる人はあえて“不快の海”へ飛び込む-予防医学者・石川氏が説く、ひらめきが生まれる要素

全てが合理的・予想通りに動いていく社会では、問題解決のために頭を使う場面が限られてきます。自分で考えて処理する能力が弱まり、生きる営みがマンネリ化してしまう。これが、この日本におけるひとつの問題なのです。

でも、だからといって悲観することはありません。秋元康氏のエピソードでも説明したとおり、私たちが不快だからと遠ざけてしまっていることや、慣れとして処理してしまっていることにこそ、意外な発見の可能性は眠っています。それを活用しない手はありませんよね。

それではここからは、思わず発見を生む不快感をあえて体験するための具体的な手段をご紹介していきましょう。

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不快や不便を “あえて” 経験する3つの手段

1. 興味のない分野の本を買う

有効な手段のひとつが、自分にとってあまり興味のない分野について扱った本を掘り下げて読んでみることです。しかし興味のない分野の本を探すのは意外と難しいもの。

そこで、買う本をタイトルではなく、表紙の色で選んでみましょう。たとえば「今日は青い本を買おう」と決めて本屋に入ってみると、不思議なことに青い表紙の本がたくさん目に飛びこんでくるようになるはず。その中から5冊程度、内容もタイトルも見ずに買ってみてください。普段は自分では絶対に手に取らないようなものも含め、幅広い分野の本を手に入れることができますよ。

このように秩序のない読み方をしていくことで、頭の中で思いもよらない知識のネットワークが誕生し、まったく新しいアイデアが生まれる可能性も高まります。こういった予期せぬ画期的なひらめき “セレンディピティ” を生み出してくれるという点では、読書は不快とセレンディピティの宝庫だともいえるでしょう。

2. 自動でできるものを手動でする

現代では、身の回りの多くのことが自動化されており、スイッチひとつで何でもできてしまいます。それらは不可能を可能にするとともに私たちに時間を与え、社会を大きく変革させてきました。洗濯機や炊飯器といった家電製品は家事にかかる時間を短縮させ、女性の社会進出を促したといえるでしょうし、自動車や電車は人間の移動速度を飛躍的に向上させ、アクセスできる世界を大きく広げました。

しかしこうした自動化によって、そのプロセスにおける気づきを失ってしまいました。そこで、自動でやっていたことをあえて手動でやってみてはいかがでしょうか。

車で移動していた場所まで自転車や徒歩で行ってみる。炊飯器ではなく鍋を使ってお米を炊いてみる。あるいは恋人に想いを伝える際、メールやメッセンジャーアプリを使うのではなく手紙を書いてみるなどしてみるのもよいでしょう。

少し面倒であっても、あえて手動・アナログな方法でやってみてください。今までに気にする必要がなかったことに気を配る必要が生じ、さまざまな気づきや考えが生まれてくることでしょう。

3. 旅行に出かける

最後にご紹介するのは「旅行」。慣れ親しんだ日常の世界から思いきって離れてみることをおすすめします。

慣れない土地ですから当然、不安を感じたり不便に思ったりすることもあるでしょう。しかしそこで、自分の常識が通用しない「不快感」を味わい、頭をフル回転させましょう。そうしているうちに何か新しいことを思いついたり、行き詰まっていたことを解決するちょっとした糸口が見つかったりするかもしれません。

同時に旅先ではどこか、自分が暮らしているなじみの土地にはなかった心地よさや合理性を見出す可能性もあるかと思います。それは自分が普段身を置いている環境についての考え方を一度リセットし、あらゆることを考え直すきっかけにもなります。そのような意味でも、旅行をすることは非常に有効な手段であるということができるでしょう。

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この便利なご時世で、あえて不快や不便を体験することは、一見すると時間の無駄のように思えるかもしれません。しかしさまざまな発見があることに気がつくはず。ぜひ試してみてください。

(参考)
川上浩司著(2017),『ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも行き詰まりを感じているなら、不便をとり入れてみてはどうですか?』, 株式会社インプレス.
logmi|デキる人はあえて“不快の海”へ飛び込む-予防医学者・石川氏が説く、ひらめきが生まれる要素
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