みなさんは、普段から自分の想いに対して忠実に行動していますか?

その答えを出す以前に、そもそも自分が何をしたいのかが分からない、という人もいるかもしれませんね。特に、入社したてのビジネスパーソンや就職活動を控えた学生の方々は、自分が本当にやりたいと思うことについて、しばしば悩むことがあるはずです。また、自分の心を曇らせるものの存在が何なのか悩むこともあるでしょう。そこで今回は、自分の本心を知るために役立つ「フォーカシング」についてお伝えしたいと思います。

本当の想いを知る大切さ

仕事や学業などに追われて慌ただしい生活を送っていると、自分がしたいことについてじっくりと想いを巡らせるのは難しいかもしれません。確かに、本来やるべきことをおろそかにして、自分が求めることばかりをするのは芳しくありませんよね。しかしその一方で、すべきことのみを優先させ、自分のやりたいことに対して目をつむっているのも問題なのです。もしも、その状況が続くと、感性がどんどん鈍くなり、しまいにはやりたいことが見つからなくなってしまう可能性があります。また、自分の心のなかにある「嫌な感情」を放置し、心をごまかし続けることも同じ。

そのような状態に陥らないためには、何気ない小さな想いであっても無視せず、自分の気持ちを知る練習をしておくことが重要なのです。

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「フォーカシング」とは?

自分の本当の想いを知るにあたって「フォーカシング(Focusing)」という方法がきっと役に立つでしょう。フォーカシングとは、アメリカの哲学者・臨床心理学者のユージン・ジェンドリン氏によって提唱された、「自分の内側に存在している、まだ言葉にならないような微妙な感覚に注意を向け、そこから言葉を出していく作業」のことです。

もしも、よく分からないけれど何かモヤモヤとした想いがあり、たびたび思考に行き詰ってしまうことがあるときに「フォーカシング」を用いると、自分の気持ちを客観的に捉えることができ、よりよく理解できるようになります。それによってモヤモヤ感や、行き詰まり感が解消され、自分が本当に望んでいることが明確になっていくのです。そうなれば判断力も高まり、充実した時間を過ごすことができるでしょう。

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「フォーカシング」6つの手順

では、どのようにして「フォーカシング」を行うか説明いたします。「フォーカシング」には、以下のように6つの手順があります。

1.クリアリング・ア・スペース
目を閉じて、ゆっくりと自分の内面に注意を向けてみてください。そうすると、最近もっとも気になっていることが思い浮かぶはず。しかし、思い浮かんでも深入りせず、いったん思い浮かんだことを脇に置いておきます。そして再び、自分の内面に注意を向けましょう。また、気になっていることが思い浮かんだら、同じように深入りはせずに脇に置きます。それを何回か繰り返してみてください。

このステップを「クリアリング・ア・スペース(間をおく・空間づくり)」といいます。これにより、心のなかが整理されていきます。

2.フェルト・センス
1のステップで思い浮かべたことから、どれかひとつを選び、どんな気分になるか感じてみてください。圧迫感があるようなとか、締めつけられるようなとか、苦しいようなとか、わくわくするようなとか、色んな「感じ」があると思いますが、これを「フェルト・センス」といいます。

3.ハンドルを手に入れる
2のステップで選んだ「感じ」に合う「言葉」を探し、当てはめてみましょう。この言葉が「ハンドル」です。難しければ文章にして、紙に書いてみるとやりやすいですよ。「何か胸に圧迫感があり、苦しい感じがする」「行き詰っていて、とても焦っている」「生理的にすごく嫌いで腹が立つ」という風に、素直な感じを書き出しましょう。

4.共鳴させる
3のステップで選んだ言葉が、しっくりはまるものかどうかを確認してみてください。なんだか違うような気がすると感じたら、ほかの言葉を探してみましょう。これが「共鳴させる」というステップです。

5.尋ねる
気になっていることに対し起きた感情(フェルト・センス)を、そのまま感じていて大丈夫か、自分の内面に対し客観的に尋ねてみてください。「どんな気持ち?」と確認してみましょう。いわゆる確認のステップです。

6.受け取る
例えばこれまでのステップで、どんなにネガティブな気持ちが湧いてきたとしても、受け入れ認めてあげてあげましょう。自分のなかにある大切な気持ちとして、尊重してあげるのです。

以上が「フォーカシング」6つのステップです。

「フォーカシング」の取り入れ方

では、これらのステップを踏まえたフォーカシングの例を挙げてみましょう。ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員・東アジア共同体研究所理事の茂木健一郎氏は、自身の著書『忘れるだけでうまくいく脳と心の整理術 』のなかで以下のような例をもって説明しています。

例えば自分が嫌だなと思っている職場の同僚を思い浮かべ、嫌だなという感情にピッタリの言葉を探し、それを見つけるだけでも開放感が得られるのだとか。また、何がそんなに気にかかるのか、それが自分とどう関係があるのか自分に問いかけると、自分よりも彼のほうが優秀であるとか、女性にモテるからとか、具体的な内容が浮かび上がります。そして、過去にそういった悔しい経験があったことなどを思い出すといいます。しかし、その想いを受け入れたことで、頑なな心が解き放たれるのとのこと。つまり、それまで抑圧していた無意識の感情をあえて意識化することで、自由になれるそうです。

この方法は、「自分のしたいこと」についても同じ。自分の内面にあるイメージを心のなかで整理して、言葉を当てはめ紙に書き出せば、そこで滞っていた感情が自由になるはずです。

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ハーバード・ビジネススクールの名誉教授であるジェラルド・ザルトマン氏によれば、人間は、自身の脳で考えていることについて5%ほどしか言語化することができないのだそう。しかし、いきなり言葉で表すのは難しくとも、イメージすることから始めれば言語化がしやすくなります。みなさんも、「フォーカシング」を利用して自分の本当の想いと対面してください。

(参考)
中里文子,平山栄治(2011),『フォーカシングの展開と開かれた可能性について—扱いにくい不快な感情をあるがままに感じる』,The AGU Journal of Psychology 2011, Vol. 11 pp.103-112
https://www.agulin.aoyama.ac.jp/opac/repository/1000/12818/00012818.pdf
日本フォーカシング協会|HOME
コミュニケーション能力・スキルを高める!初心者向けトレーニング♪向上評判の講座|フェルトセンスの詳しい例!モヤモヤの意味を理解して、自分の気持ちと向き合う♪
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