「ひとこと」でまとめる。簡単なようでいて、実は案外難しいことではないでしょうか。

「この企画書のポイントは?」「御社の商品の魅力は何ですか?」「要するにどういう問題を解決したいの?」

仕事をする中で、こんな風に「要するに何なのか」と尋ねられた際、スラスラと答えられず、言葉に詰まってしまった経験はありませんか? あるいは、簡単にまとめるつもりでいるのに、つい長々と説明してしまう、ということはないでしょうか。

そこで今回は、様々なことをひとことでまとめる力、「要約力」を鍛える方法を紹介します。

なぜ仕事に要約力が必要なのか

仕事では、様々な場面で要約力が必要とされます。それは、相手の時間をムダにしないため

仕事は多くの場合、誰かと一緒になって進めますよね。フリーランスなどで自分の裁量が大きな仕事をしている人であっても、それが仕事である以上、必ず誰かしらと取引をしたり協力したりしながら仕事をしているはずです。そういったなかで、相談、提案、商談など、相手とのコミュニケーションが発生することであればなおさら、相手の存在が前提となります。

上司に何かを相談したいとき、取引先に新商品を提案したいとき。相手に対し、言いたいことを整理できないままダラダラと話してしまったら、相手の貴重な時間を奪うことになります。そのうえ、話をまとめられないあなたは、「要領を得ない人だ」というレッテルを貼られかねません。

このことは、話す時だけではなく、メールや企画書といった文章や資料によって相手に何かを伝える時にも当てはまります。相手は、忙しい時間を割いてあなたが書いた資料を読んでいるわけです。さっと読み終え、スムーズに理解したいのに、長々しい資料を渡されたのでは読む気さえ失せてしまうでしょう。

こうしたことを踏まえると、相手に何かを伝える際には、届けたいメッセージを短く、かつ、明確にしておく必要があります。まさに「ひとこと」で言えるのが理想なのです。

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60日のトレーニング後、英語実務でも効果を実感。TOEICも950点に。
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「ひとことで言う」とはどういうことか

相手に何かを「ひとことで伝える」とは、いったいどういうことなのでしょうか。

情報整理術のベストセラー『「超」整理法』で知られる経済学者の野口悠紀雄氏は、文章術について説いた著書『「超」文章法』のなかで、要約力の重要性について次のように述べています。

ある命題を「メッセージ」と言えるかどうかは、どのように判断できるか?
第一の条件は「ひとことで言えること」だ。

(引用元:野口悠紀雄著(2002),『「超」文章法』,中央公論新社.)

博士論文の口述試験の際、発表が終わってから、「それで君の言いたいことは、要するにどういうことか? ひとことで言えば何だ?」と尋ねる事が多い。これは発表が要領を得なかったからである。これに対する答えが再び要領を得ないものになったら、その論文はホープレスだ。発表者は、適切なメッセージを捕らえていない。

(引用元:同上)

物事をひとことで言い表すことができているかどうかは、つまり、物事を真に理解できているかどうかであると言えます。物事の本質を捉え、それを表現する。それが、「ひとことで言う」ために求められることです。

では実際に「ひとことで言う」ことができるようになるためにはどのような練習をすればいいのか、日常的に行える、要約力を磨く3つのトレーニング方法を紹介します。

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要約力トレーニング法1. ニュースをひとことでまとめる

新聞やインターネットなどで読んだニュースを要約してみましょう。

その際、リード文やタイトルを先に見るのではなく、まずは本文だけを読んで要点を端的にまとめてみてください。その後、ニュース記事につけられたリード文やタイトルと比べて、自分が要約した文章が必要な要素を正しく抜き出せていたかどうかを確認してみるのです。この方法を使って、文章をまとめる力を養うために小学校で児童に新聞を要約させる先生も多いのだとか。

毎回違うジャンルのニュースを題材にして要約の練習をすることで、様々な場面で活きる要約力を磨くことができます。例えば政治系であれば「昨日の国会で何が議論されたか」、ビジネス系なら「今の飲食業界の動向は」「新しく発売された炊飯器の特徴」など、仕事で必要な知識としても雑談のネタとしても重宝する情報を要約すれば、要約力だけでなく情報の蓄積にもなり、一石二鳥です。

スマートフォンなどでニュース記事を読むことができれば簡単にできるトレーニング法なので、隙間時間にもでき、おすすめですよ。

要約力トレーニング法2. 広告をひとことでまとめる

テレビCMやポスターなどで商品やサービスが紹介されているのを見たら、その広告は何が言いたいのか考えてみてください。日々多くの広告に囲まれている私たちにとって、気軽に実践できるトレーニングです。

例えば、「がんばる人の、がんばらない時間。(ドトールコーヒー)」というキャッチコピーからは「仕事や勉強に疲れた社会人・学生は、ドトールでコーヒーを飲みながら休んでください」というメッセージが、「目のつけどころがシャープでしょ。(シャープ)」というキャッチコピーからは「シャープは他社が作らない革新的な製品を作ります」というメッセージが読み取れますよね。

ソニー・プレイステーションの全盛期を作った広告クリエイターの小霜和也氏によると、広告の根底には、商品としての具体的な情報、競合との違いや強み、想定するターゲットがあるのだそう。それらを膨らませて、人とモノの新たな関係を作るものが広告なのです。

ですから、CMやキャッチコピーといった広告クリエイティブを見てそこからメッセージを要約することは、その商品や会社の特徴、強みなどをひとことでまとめることになります。要約力だけでなくビジネス視点も養うことができる、まさにビジネスパーソンにうってつけの練習方法と言えるでしょう。

要約力トレーニング法3. 映画や小説をひとことでまとめる

映画を見たり、小説を読んだりした時には、内容をひとことで要約してみましょう。娯楽の延長線上で実践できるので、取り組みやすいトレーニングです。

例えばこんな具合でしょうか。

『走れメロス』……メロスが友情を守って親友の命を救うため、3日間走り続ける話。
『半沢直樹』……銀行員が不正を犯した上司と徹底的に戦う、逆転に告ぐ逆転劇。

物語の捉え方に正解はありませんが、友達に「それどんな映画(小説)?」と聞かれた時にひとことで内容が伝わる要約を意識してみてください。映画なら約2時間、小説だと何百ページの内容をひとことで表現することになります。大量の情報を要約する力が身につきますよ。

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忙しい相手に物事を分かりやすく伝えるための要約力。
ぜひ日常的に「ひとこと」で言う習慣をつけて、仕事に活用してみてください!

(参考)
野口悠紀雄著(2002),『「超」文章法』,中央公論新社.
小霜和也著(2014),『ここらで広告コピーの本当の話をします。』,宣伝会議.
日経Bizアカデミー|第2回 【話し方の原則1】本質を捉え、簡潔に伝える「要約力」
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