トヨタ式『なぜなぜ分析』で本質を見定める。5回の "なぜ" が導くゴールへの最短ルート。

「君はね、物事の本質を捉えられてないよ」 「指摘が全く本質的じゃない」

こんな指摘を受けた経験はありませんか? では、「本質」とか「本質的」って、いったいどういうことなのでしょうか。

国語辞典によれば、本質とは次のような意味。

物事の根本的な性質・要素。そのものの、本来の姿。

(引用元:goo辞書|ほん‐しつ【本質】

ビジネスの現場でも学問においても、本質をしっかり捉えられなければ、問題を解決したり意義のある研究をしたりすることはできないでしょう。このことは誰にでも理解できることである一方、本質を捉えるのは、できそうでいてなかなかできないことでもあります。思考のメソッドを紹介する書籍が出版されるほど、本質を考えることは、多くの人にとって関心の高いことなのです。(参考:『本質思考: MIT式課題設定&問題解決』平井孝志著(2015)、東洋経済新報社)

本質的に考えるには、どのような思考をすればよいのか。今回は、いま注目を集めている「本質思考」のトレーニング方法を、架空のストーリーを用いながらご紹介しましょう。

1. 「なぜ?」を繰り返して原因を探ろう。

*** Aさんは社会人8年目の営業マン。この頃体調が優れません。医師の診断の結果、ストレスが原因だとわかりました。Aさんは「低周波音楽がストレスに良い」と聞き、毎晩就寝前に音楽鑑賞の時間を設けることにしました。 ***

Aさんの問題は「体調不良」。そして彼の取った解決策は「音楽鑑賞」です。この解決策は、Aさんの抱える問題を本質的に解消する方法と言えるでしょうか?

Aさんの体調不良は、仕事のストレスが原因でした。詳しい診断が明らかでないため、推測にすぎませんが、1, 過剰な仕事量、2, 休憩の不足、など、様々な要因が考えられそうです。しかし、Aさんの考えた解決策は、いずれの要因も消せていません。すなわち、音楽鑑賞は対症療法にすぎないのです。

問題の根本的な原因を突き止めていないという理由から、Aさんのとった解決策は、本質的ではないことが分かります。

問題を解決するには、その原因をしっかりと見極め、丁寧に潰すことが必要です。 では、そのためにはどうしたらいいでしょうか?

トヨタ元副社長の大野耐一氏の著書『トヨタ生産方式』では、『なぜ?」を5回繰り返せば、本質的な原因がわかる、と紹介されています。これは、もともとはトヨタの工場監査に用いられていた手法で、今では広く「なぜなぜ分析」と言われるものです。

「なぜ機械は止まったか」→オーバーロードがかかってヒューズが切れたからだ 「なぜオーバーロードがかかったのか」→軸受部の潤滑が十分でないからだ 「なぜ十分に潤滑しないのか」→潤滑ポンプが十分汲み上げていないからだ 「なぜ十分に汲み上げないのか」→ポンプの軸が摩耗してガタガタになっているからだ 「なぜ摩耗したのか」→濾過器がついていないので、切り粉が潤滑油に入ったからだ

(引用元:大野耐一著(1978),『トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして』,ダイヤモンド社.)

このように原因がはっきりすれば「じゃあ濾過器を付けよう」という適切な解決策を思いつきます。「なぜ?」を繰り返すことで「本質的な解決策」がわかるのです。

では、「なぜなぜ分析」を利用してAさんの問題を解決してみましょう。

「なぜ体調が悪化したか」→ストレスを感じたからだ 「なぜストレスを感じていたか」→睡眠時間が短かったからだ 「なぜ睡眠時間が短くなったか」→残業で帰宅が遅くなったからだ 「なぜ残業するほど仕事が残ったか」→チーム内で適切に仕事を割り振れなかったからだ 「なぜチーム内で仕事を適切に振れなかったか」→チーム内で仕事の量や進捗を共有できていなかったからだ

Aさんのストレスの原因は「チーム内で仕事の量や進捗を共有せず、一人で仕事を抱え込んでしまったから」だとわかりました。彼がすべきなのは、ストレス軽減のために音楽を聴くことではありません。チームでミーティングを持って、チームメンバーの仕事量をすり合わせ、仕事を適切に再配分することだったのです。

「なぜ?」を繰り返して、本質的な原因を探りましょう。

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2. 目的を定め、それに沿った行動をとる。

*** 大学2年生のBくんは、先日先輩から就活の厳しさを聞き、漠然とした不安でいっぱいになりました。企業の人事にアピールできる「経験」がないからです。次の日、早速Bくんは大学の教務課に向かい、海外短期留学の予約を取り付けました。 ***

就活でアピールする経験を得るために短期留学を申し込んだBくんの行動は、「本質的ゴール」には繋がっていません。それはなぜなのか、考えてみましょう。

そもそも、Bくんの「ゴール」は何でしょうか。大学院に進学する場合や、公認会計士などの資格取得を目指す場合には、就活は関係ないはず。まずは自分の「ゴール」を明確にすべきです。(※自分が将来やりたいことは何なのかを知る方法については、こちらの記事もぜひ参照してください→Study Hacker|自分はどんな人? 旅に出なくても『自分探し』ができる方法、教えます。

仮に、Bくんのゴールが「就活の成功」だとして、本当に短期留学は適切な選択なのでしょうか。ひょっとすると、インターンやサークル活動に打ち込む方が、効果的かもしれません。

ゴールに対する適切な選択のコツは、自分の目指すものが「そもそもどういうこと?」か考えることです。

「就活で成功する、とはどういうことか?」 ・自分のやりたい仕事のできる企業に就職すること ・就活人気ランキング上位の企業に就職すること ・誰よりもはやく内定を獲得すること

など、いろいろありますね。そして、これらを達成するための方法を全て書き出してみるのです。

・やりたいことを知るために、自己分析を行う ・人気企業の説明会にいく ・早い時期からインターンを経験する

このようにゴールから逆算して考えれば、あまりに外れた解決策は出てこないはず。本質的な解決策に近づくことができるのです。

問題の本質を捉え、その問題を本質的に解決する方法を導くには、「(1)明確なゴール設定」と「(2)適切な行動選択」の二点が鍵となるのです。

*** ここで示したストーリーは、「音楽療法なんてありえない」とか「就活という目的自体、イケてない」「短期留学には意味がない」と言いたいものではありません。筆者が伝えたいことは、何事にも、「本質的な原因」があり、「本質的ゴール」と「適切な手段」が存在するということ。

「そもそも、この問題はなぜ起きている?」 「それっていったい、どういうこと?」 「じゃあそれを実現するには、何をしたらいいの?」

こう考えるだけで、本質が明らかになるはずです。

(参考) 大野耐一著(1978),『トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして』,ダイヤモンド社. Wikipedia|なぜなぜ分析 Study Hacker|自分はどんな人? 旅に出なくても『自分探し』ができる方法、教えます。 キャリアパーク!|本質思考における問題解決策を身に付ける方法 goo辞書|ほん‐しつ【本質】

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