企画会議でのプレゼンや新天地での自己紹介、あるいはステージ上での演説など、ビジネスパーソンであれば大なり小なり、人前でスピーチをする機会がありますよね。

いいスピーチができれば、主張したい内容はもちろん自分自身のことも深く印象づけられますし、仕事での成功にもつながっていきます。しかし一方で、いつも無難な内容で終わってしまい、聞き手の印象に残るスピーチがなかなかできないと悩んでいる人もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、印象に残るスピーチをするコツについてお伝えしていきます。

印象に残らないスピーチの特徴

コツについての具体的な説明に入る前に、そもそもどういったスピーチが印象に残りづらいのかを考えてみましょう。以下にいくつか例を挙げますので、ご自身に当てはまるものがないか確認してみてください。

・自信が感じられない
緊張のあまり声が小さくなってしまったり、原稿を読むのに必死で目線が終始下を向いていたりすると、聞き手は「この人は自信がないのではないか」と疑ってしまいます。話している内容もどこか頼りなく聞こえますから、これでは伝えたいこともしっかりと伝わりませんね。

・オリジナリティがない
何を話せばいいのかわからないからと、例文集からそのまま引っ張ってきたような「ありきたりな」内容になってしまうパターンです。平均点は取ることができるかもしれませんが、誰にでもできるスピーチという点では、聞き手に深い印象を残すことはできないでしょう。

・具体性に欠ける
「イノベーションを起こそう」「社会に貢献したい」など、抽象的・概念的な言葉ばかり羅列してしまうと、聞き手は具体的な内容をイメージすることができません。またこういった言葉は得てして無味乾燥であるため、感情的な共感も生まれにくくなってしまいます。

もちろん、もともと人前に立つのが苦手であったり、単なる練習不足であったりする場合もあるでしょう。あるいは「自分は話術ではなく頭脳で勝負したい」と考えている方もいるかもしれません。しかしいずれにせよ、聞き手の印象に残るスピーチができるのとできないのとでは、ビジネスパーソンとしてのその後の活躍の幅も大きく変わってくるはず。印象に残るスピーチのちょっとしたコツを知っておくだけで、いつか役に立つ日が来るかもしれませんよ。

それではここからは、具体的なコツを3つ順にご紹介していきましょう。

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1. 相手に語りかけるような話し方を意識する

『人を動かす』『道は開ける』といった著作で有名な作家デール・カーネギーは、印象に残るスピーチについて「大切なのは何を話すかではなく、むしろどう話すかということだ」と述べています。例えおもしろいネタを持っていなくとも、聞き手の印象に残るスピーチをすることは可能なのです。

探偵ドラマの推理場面を思い出してみてください。探偵の話に、私たちはつい惹きつけられてしまいますよね。それはもちろん「これから話す内容が気になる」という側面もあるのでしょうが、時には言葉に重みを持たせるためにゆっくりと話したり、時には間を置いて沈黙を生み出したりと、その話し方による部分も非常に大きいのではないでしょうか。

常に平坦な話し方をしていては、聞き手はいったい何が重要なのかわからなくなってしまいます。自分にとっておおげさに感じられるぐらいでかまいませんので、声量に抑揚をつけたり話すスピードに緩急をつけたりして、相手に語りかけるような話し方を心がけましょう

その際は、語りかける対象を聴衆の中に決めてしまうのがおすすめです。笑顔でうなずきながら聞いてくれている人や真剣なまなざしを向けてくれている人などを何人か聴衆の中に見つけてターゲットとし、彼らに視線を送りながら語りかけることを意識しましょう。ターゲットが決まっていれば心理的にも話しやすいでしょうし、聴講者に顔を向けることで自信に満ちあふれているようにも見えますよ。

2. 具体性を持たせる

抽象的な内容は、具体例を挙げたり数値化したりすることで一気にイメージしやすくなります。広い面積を表すのに「東京ドームX個分」という言い方をするのがよい例ですよね。

以下に、都市を題材とした全米不動産協会のスピーチコンテストにおいて第1位を獲得したスピーチを引用します。具体的に話すことの効果が実感できるでしょう。

フィラデルフィアは、大きくて清潔で美しい都市というだけではありません。世界の大工場として、あまねく知られているのです。

(引用元:D・カーネギー著,市野安雄翻訳 (2016),『カーネギー話し方入門 文庫版』, 創元社.)

これだけですと、いまいち説得力がなく、本当にそうなのかと疑問に思う方もいるでしょう。しかし次のような文章が加わるとどうでしょうか。

(前略)羊毛、比較、ニット、繊維の各製品、フェルト帽、鉄器類、工具、蓄電池、鋼船、その他多数の品目の生産で、フィラデルフィアと肩を並べる都市は、全国でも皆無とのことです。鉄道用機関車は、昼夜を問わず二時間に一両製造され、路面電車は、アメリカ人の半数以上がフィラデルフィア製にのっている計算になります。また、毎分一本分の葉巻煙草をつくり、百十五の靴下製造工場では昨年、全国の男性、女性、子供一人につき二足の靴下を生産しました。カーペットや敷物類に至っては、イギリスとアイルランドの生産量の合計をしのぐ勢い。(後略)

(引用元:同上)

具体的な物や数値などが非常に詳しく明示されたことで、フィラデルフィアという都市の像が今にも目に浮かんでくるようですね。もちろん伝えたいことは前者の引用文のみで言えるのですが、そこに具体性を持たせることで、理解しやすく印象深い話になっていることがうかがえます。

「企画の展望」「自分の目標」など、つい抽象的な話になってしまいがちなものってありますよね。聞き手の印象に残すという意味でも、事前に多少の調査や準備などが必要になるかもしれませんが、「比較のための例を出せないだろうか」「具体的な数字で表現できないだろうか」といった視点で話す内容を練り、ぜひスピーチに取り入れてみてはいかがでしょうか。

3. キーワードを繰り返す

例え短いスピーチであったとしても、聞き手は内容の全文を覚えることは不可能です。しかしスピーチの中にひとつでもインパクトのある言葉が盛りこまれていれば、そのスピーチはいつまでも記憶に残るものになります。

歴史上、人の心に刻まれてきた名言はどれも短くストレートです。オバマ大統領の「Yes, we can.」キング牧師の「I have a dream!」しかり……。

(引用元:日経ウーマンオンライン|聞き手の心をつかむ、たった9つのテクニック

このスピーチで何を最も伝えたいのか、それは話す本人が一番わかっていることでしょう。どのようなスピーチにおいても、その中には自分が最も伝えたいこと、つまり「核」が存在します。原稿の余白に太字でメモしておく、手のひらにマジックで書いておくなど、手段は何でもかまいません。その「核」を表す短いキーワードを事前に用意して忘れないようにしておき、スピーチの中で意識してそれを繰り返すようにすれば、聞き手の脳裏にも刻まれやすくなりますよ。

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ただ話したり原稿を読んだりするだけではいけません。スピーチで最も大切なのは「伝えたい」という気持ちです。それを忘れずに上記のコツを取り入れれば、聞き手の印象に残るスピーチをすることができるようになるはず。ぜひ試してみてください。

(参考)
D・カーネギー著,市野安雄翻訳 (2016),『カーネギー話し方入門 文庫版』, 創元社.
日経ウーマンオンライン|聞き手の心をつかむ、たった9つのテクニック
Daijob.com|なぜ日本人はスピーチ・プレゼンが下手なのか?
東洋経済オンライン|「つまらない挨拶」から卒業するための3法則