話が長くなったり、込み入ってきたりすると、よく分からなくなってしまう。因果関係がつかめなくて、そのせいで正しい判断が難しくなってしまう。程度の差こそあれ、だれしもそういう経験はあるのではないでしょうか。

こういった、論理的な思考力やそれにともなう判断力は、学生時代に勉強した現代文などで身につけることができます……というより、そもそもそういった教科は、論理的思考力を身につけるために学ぶものだという側面もありますね。

今回は、いまいちど現代文の学習まで立ち返り、正しいロジックを把握する方法について再検討していきましょう。

学生時代に、現代文の選択肢の正誤を問う問題で、正しい選択肢を選ぶことができなくて苦労したという思い出はありませんか?ちゃんと問題文に線を引きながら読んでいるのにも関わらず、選択肢における細かい表現の違いに惑わされて間違えてしまう、というのはよくあることではないでしょうか。

こうした問題で誤った選択肢を選んでしまう理由の1つとして、因果関係がきちんと把握できていないということが挙げられます。現代文や英語長文において内容を読み取らせる選択問題では、正しい内容と因果をあえて逆転させて作られた、誤った選択肢が存在していることがあります。原因と結果を逆転させた文は正確ではないのに、一見正しいように感じられてしまい、惑わされてしまうのです。

では、因果関係の逆転に惑わされないためには、どのように文章を読み進めていけばよいのでしょうか。文章の内容を正しく理解するための、因果関係の把握方法についてお伝えしたいと思います。

「因果関係」とは

そもそも、「因果関係」とはいったいどのようなことを指すのでしょうか。みなさんもご存知の通り、因果関係は「原因となる事象」と「結果となる事象」から成り立つ関係のことです。もう少し詳細に因果関係の定義について考えてみましょう。

企業の組織開発・人材開発を手掛ける株式会社インヴィニオの代表取締役、土井哲氏は、因果関係を以下のように定義しています。

一般的には,「2つの範ちゅうに属する事象または特性があり,片方の性質などの変化に続いて他方が変化する関係」を因果関係という。

(引用元:ITpro|第4回 問題の構造分析–因果関係図で構造を把握,「なぜなぜ5回」で真因つかむ

つまり、ある出来事が起こったとき、原因となる別の出来事は、それよりも必ず先に存在していなければならないのです。しかし、因果関係を逆転させた誤った選択肢の場合、本来なら先に起きたはずの出来事が後に起きたかのように書かれていることがあります。

例えば、「火事が起きた」という事象と「消防車が来た」という2つの事象があったとします。因果関係が正しい文の場合、「火事が起きた。だから消防車が来た」となるでしょう。しかし、因果関係が逆転してしまっている場合は、「消防車が来た。だから火事が起こったのだ」となります。これらの事象を見た人の中には、消防車が来たことによって火事の発生を知った人もいるかもしれません。しかし、火事が起きたから消防車が来たのであって、消防車が来たことが原因で火事が発生した訳ではありませんよね。

したがって、原因と結果を見極め因果関係を正しく理解するためには、必ず時間軸に沿って事象を捉えることが必要なのです。

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因果関係を知るには図が有効

時間軸に沿って事象を捉える時には、「因果関係図」というものを作成すると大変便利です。

「火事が起きた」と「消防車が来た」という先ほどの例で因果関係図を作ってみましょう。左側を原因、右側を結果として、左から右へ矢印で結びます。時間的には火事が起こる方が先なので、「火事が起きた→消防車が来た」となります。

これはとてもシンプルな例ですから、これくらいなら頭の中で考えられる、と感じた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、頭の中で考えているだけでは、原因や結果となる事象が複雑になればなるほど混乱します。

因果関係図によって事象を整理することは、因果関係の正しい理解にたいへん役にたつものです。

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複雑な文章における因果関係図の効果

では、選択肢の中に因果関係が逆転した誤ったものが存在する例について、実際に見てみましょう。

これは、2014年度センター試験外国語(英語)で実際に出題された問題で、英文の内容(要約)は大まかに次のとおりです。

チトセという名前の女の子は、サルおじいちゃんに絵のレッスンをしてもらっていたが、ある時、2人は大ゲンカをしてしまった。そのまま2人は仲直りすることもなく、チトセはフランスへと行ってしまう。
約1年後、チトセはサルおじいちゃんが描いたチトセの肖像画を見つけた。チトセは、レッスンを受けていた高校生の頃、天然のカーリーヘアでアクセサリーも一切付けていなかったが、現在はストレートパーマをあて、リング型のイヤリングを付け、化粧までするようになっている。しかしその肖像画には、昔のチトセが描かれていた。
チトセは昔の自分を振り返り、現在は他人の意見を受け入れなくなっていることに気付く。そして深く反省し、再び絵を学び始め、彼女の絵は上達した。そうして、彼女が描いた自身とサルおじいちゃんの肖像画は、市の若手芸術家コンクールで優勝することができた。

この英文に対して、「チトセの絵が上達した理由として最も適切なものはどれか」という問題が出題されました。また、その問いに対して「チトセがコンテストに参加して多くのことを学んだ」「他人の意見に耳を傾けるようになった」等の選択肢が提示されました。

この場合、「彼女は再び他人の意見を聞き入れるようになったから」という選択肢が当然正解です。しかし、今回注目したいのは、「彼女はコンテストに参加して多くのことを学んだから」ということが述べられ選択肢です。コンテストに参加し、その過程で学ぶこともチトセの絵の上達に寄与する可能性はもちろん存在し、だからその選択肢も一見妥当なものだと判断されてしまうかもしれないからです。

ここで、本文について、時系列に沿った因果関係図を作ってみましょう。

===
チトセとサルおじいちゃんは絵の最後のレッスンでケンカをした。
→チトセはフランスへ出発した。
→チトセは高校生の頃の自分が描かれた肖像画を偶然発見した。
→チトセは他人の話を聞かなくなったことを反省した。
→チトセは再び学び始め、絵が上達した。
→チトセは市の若手芸術家コンクールで優勝した。
===

以上から分かる通り、チトセの絵が上達したのは偶然肖像画を見つけ、それがきっかけで他人のアドバイスを再びきちんと聞くようになったからです。そしてその結果、コンクールで優勝することができました。コンテストに参加したから絵が上達したという訳ではありませんね。

このように整理しながら英文を読めば、誤った選択肢に惑わされることはありません。しかし、因果関係を整理しないまま読み進めると、原因と結果が逆転していることに気付かず、選択肢を見て戸惑ってしまうことがあります。ぜひ気を付けるようにしてください。

***
因果関係がきちんと把握できる能力を身に付けると、論理的な思考力が身につくことにも繋がります。みなさんもぜひ試してみてください。

(参考)
nikkei BPnet|論理文章術:第11回 因果関係をベースに書く
ITpro|第4回 問題の構造分析–因果関係図で構造を把握,「なぜなぜ5回」で真因つかむ
Antecanis Inc.|#03因果関係を見抜く/4. 因果関係の定義:ホンモノとニセモノ
大学入試センター|平成26年度本試験の問題 外国語 英語