冷静に考えるとまったく合理的じゃないのに、自分や周囲の感情が邪魔をして間違った選択を取ってしまうことはありませんか?

部下が企画書を持ってきた時に、根拠が薄くても努力に免じて通してしまう。
営業中、顧客に少し面倒くさそうな顔をされたのでモチベーションが上がらず、営業をそそくさと切り上げてしまう。
ミスばかりする人だけど憎めないので、重要なプロジェクトに参加させてしまう。

選択を誤り、後で思い返して「やっぱり間違っていたなぁ」と悔やんだ経験は誰しもあると思います。

ではなぜ私達は、どうして時に、非生産的な選択肢を取ってしまうのでしょうか?
どうすればもっと合理的な意思決定ができるようになるのでしょうか?

そこで今回は、感情に流されず、冷静に正しい意思決定をするためのコツを紹介します。

人間は判断や意思決定を避けたがる

そもそも人間は、意思決定をするのが非常に嫌いなもの。これは日常生活の意思決定だけではなく、もっと高いストレスに晒されるビジネスの場面でも同様です。選択による結果が重大であればあるほど、選択に伴うストレスは猛威を振るいます。同僚と1,000円程度のランチをどこで食べるか決めるのと、1,000万のプロジェクトの方向性を決めるのとでは、意思決定にかかる心理的な負担は大違いでしょう。

中でも、他人の意見や感情に逆らって意思決定をする時には、非常に大きなストレスがかかります。

例えば、あなたがあるプロジェクトのリーダーとして決定権をもつ立場にいて、メンバーや取引先などの相手に、自分の考えを伝えてプロジェクトを進めようとする場面を想像して下さい。あなたは当然その考えを正しいと思っていますが、いざ話してみると、相手は強い反対意見を持っていて感情的になって反論してきました。そんなとき、自分が正しいと思った考えを合理的に説明するのを避けて、本来の目的とズレた妥協案を探し始めてしまうということはありませんか? しかも、自分の中でもっともらしい言い訳を並べて自分を正当化しながら。

これはもはや「会社のための正しい意思決定」ではなく、「自分の直面しているストレスからの逃亡」を優先している状況です。簡単に言うと、人の嫌がる顔を見るのは辛いのが人間の性、ということなのです。

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正しい意思決定ができるのは、サイコパス

意思決定を避けたいのが人間の性質だとは言え、意思決定が得意な人もいます。

それは「サイコパス」です。

サイコパスというと、冷酷非道な連続殺人犯やテロリストといった恐ろしい人間をイメージするでしょう。しかしここでのサイコパスは、そういった暴力性を伴った人間ではありません。

NHKの『心と脳の白熱教室』という番組の中で、オックスフォード大学の教授が、サイコパスとは、感情的な葛藤や人間関係のしがらみに迷うことなく、目的に対して純粋に正しい選択を取ることができる人間であると述べています。暴力的なサイコパスはその性質が犯罪として現れているだけで、多かれ少なかれ誰もがサイコパス性を持っているのです。

例えばサイコパス性が高い職業として挙げられるのは、CEOや外科医、弁護士など。逆に低い職業としては、看護師や教師、アーティストが挙げられます。なんだか納得してしまいませんか? サイコパス性が高い仕事は共感や同情が仇になりそうなものばかりです。

サイコパス性が高い職業に代表されるように、「感情が意思決定を妨げない性質」を持つサイコパスこそが、正しい意思決定に向いていると考えられます。

理性と感情は努力で切り離せる

では、サイコパス性とは生まれた時から決まっているものなのでしょうか。また、サイコパス性の低い人間は、冷静で合理的な意思決定には向いていないのでしょうか。

理性と感情を切り離して意思決定を断行した人に、英国の元首相であるマーガレット・サッチャーがいます。

サッチャーは、フォークランド紛争におけるアルゼンチン付近への軍隊派遣や、財政再建のために学校でのミルクの無料配布をやめるなど、多くの厳しい修羅場でタフな政策を取り、英国を強くリードしました。そうした背景から「鉄の女」と呼ばれており、サイコパス性の高い歴史上の偉人の1人に挙げられることも多い人物です。

しかし、彼女に親しかった人からは、サッチャーは実は非常に感情豊かで人間味に溢れる人物だったという証言があります。これが事実だとすると、サッチャーは真性のサイコパスではないが故に、情緒を廃した正しい意思決定をするために努力を重ねていたということになります。

つまり本来サイコパスではない人間でも、努力次第で正しい意思決定をする人間にはなれるということです。

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感情を抑えて優れた意思決定をする4つのコツ

では最後に、あなたがサイコパスでなくとも正しい意思決定をするための4つのコツを紹介します。

1.全体的なメリットを思い出す

たとえ誰かの感情的な反対意見に晒されたとしても、自分や相手にとっての全体的な目的やメリットを思い出しましょう。全体として達成したい目的のためには自分の意見が最適なのだ、ということを思い出し、それを相手に伝えることで(もちろん根拠は必要ですが)、自信を持って意思決定ができるはずです。

例えば、営業において、顧客に面倒くさそうな顔をされたとします。ですが契約に至る可能性が少しでもあるのならば、顧客にとっての理想の状況とはどのようなものか、あなたが提案する製品やサービスを購入することがどれだけメリットに溢れているのかを、改めて伝えてみてはいかがでしょう。

2.嫌われても良いと思い込む

人の意見や感情に逆らうにはエネルギーが必要です。そんな時はいっそ「人に嫌われても良い」と思い込みましょう。周囲に嫌われても全体を良い方向に引っ張っていくんだという気合をもって、意思決定に臨むべきです。良い結果を出してしまえば、あなたへの批判は賞賛に変わるでしょう。

例えばあなたが上司であれば、仕事に対する毅然とした態度が原因で部下に嫌われる、といったことを恐れるべきではありません。ビジネスパーソンであるなら、仕事の遅れや詰めの甘さには厳しい姿勢で臨むべき。部下に改善すべき点があればどんどん指摘し、プロジェクトを成功に導くのがあなたの仕事です。

3.裁量を持つ人物に配慮しすぎない

正しい意思決定とは、必ずしも採用されそうな意思決定とは限りません。特定の人間(例えば、上司や役員、あるいは影響力を持つ取引先など)に配慮しすぎた意思決定をしても、根拠が薄ければそのうち主張がブレてきます。話が二転三転する上に、実行者が非合理的に感じてしまえば、実行スピードも遅くなるでしょう。力の強い人の顔色をうかがうことは止め、正しいと思う意見を主張しましょう。

もしあなたが、上司や発言権のある人物から何か話を持ち掛けられたときは、イエスマンになることは止めてみませんか? もしそこで、あなたが上司の判断に易々と従ってしまえば、別の誰かが苦労することになるかもしれませんし、ひいては会社にとっての不利益になる可能性もあるのです。反論すべき点がある、従うべきでないと感じたら、冷静に、会社のためになる正しい意見を述べるべきです。

4.意思決定後の実行段階で情熱的に関わる

あなたの冷静な意思決定により、誰かに望まないことをさせてしまう場合は、実行段階で相手に情熱的に関わると決めてしまえば気が楽になります。見極めるべきは、あくまでも正しい方向性。意思決定の際に相手にネガティブな思いをさせたとしても、実行段階で情熱をもって積極的に関われば、感情的なリカバリーもできる上に、良いアウトプットも引き出せるはずです。

あなたがディレクターだとして、もしもデザイナーやエンジニアの意図とは異なるコンセプトのウェブサイトを彼らと一緒に作ることになったなら、積極的に彼らにアイデアを出したりフィードバックをしたりすることで、彼らのモチベーションを上げていきましょう。彼らが初めは乗り気でなかったのだとしても、ディレクターの熱心な関わりがあれば、自然と成果を高められるはずです。

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正しい意思決定は、得てして痛みを伴います。理性と感情をしっかりと切り離し、その痛みを克服した人こそが、重要な意思決定の場面で行う選択をより良いものにできるのではないでしょうか。

みなさんの中のサイコパス性を引き出し、優れた意思決定に取り組んでみて下さい!

(参考)
森岡毅著,今西聖貴著(2016),『確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力』,角川書店.
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