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「自己顕示欲」と「承認欲求」という言葉を聞いたことはありますか。

自己顕示欲とは自らの存在を社会にアピールしたいという欲求を表し、承認欲求とは他者から自らの行動や存在を承認されたいと思う感情を意味します。両者はしばしば同一視されますが、自己顕示欲に基づいて自らを社会に表現し、そこで認められることで承認欲求を満たすという一連のプロセスが、自己顕示欲と承認欲求の関係と言えます。

最近話題の「意識高い系」ですが、彼らはこの自己顕示欲と承認欲求という人間が本来持っている感情を異常なまでに肥大化させ、理想の自分をSNS上や現実世界でまでも演出することに精を出すあまり、本当の自分を見失いつつあります。

今回は、一見すると華やかな人生ですが、そこには大きな危険がある意識高い系の病理について紹介します。

満足感の得られる瞬間

皆さんが満足感を得るのはどのような瞬間でしょうか。

例えば、とある集会で有名企業の重役の人間と出会い、貴重な話を聞いたとしましょう。
普通の人ならばこの縁に感謝し、聞いた話を自分の糧として人生に活かそうと満足感に包まれるのですが、意識高い系の人々はSNSに「有名企業の重役の名刺を戴いた。出会いに感謝。」と投稿し、その人とコネクションがある自分はすごいという自己顕示欲と承認欲求を満たそうとし、ここでようやく満足感が生じます。

何かを達成した時に満足するのか、それともその達成を他人に示してから満足するのとでは大きな違いがあります。後者ならば、投稿によって作られた虚像を演じようと「有名企業の重役と会う」ことばかりに今後も固執し、その出会いを本当の意味で自分に活かすという大切なことを見落としがちになってしまうのです。

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平日1日1時間でも、英語力大幅アップでTOEIC830に。無駄をそぎ落とした科学的トレーニング。
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周りの目を気にして本当にやりたいことができない

自己顕示欲と承認欲求に自らが突き動かされていると、自分の行動が周りの人間にどう思われているのかという問いかけがあなたの人生に常に付きまといます。

例えば、九九の掛け算が曖昧な人がもう一度覚えなおそうと計算カードを握っても、例え誰も見てなくとも周りの人間には良い評価をされないと考えてしまい、手がつけられないということが往往にしてあります。

SNSなどで今まで自分が演出してきた自分の理想像とあまりにかけ離れていることから、この虚像を超える何かをアピールしなくてはと考えてしまい、本当に自分がやりたいことに着手できなくなってしまうのです。

そして、常に焦燥感や強迫観念に追われて日々を生きなくてはならなくなってしまいます。

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動機と行動の逆措定

意識高い系の生き方の最大の痛手は、モチベーションと自らの行為があべこべになってしまうことです。

本来ならば、発展途上国を支援したいから学生団体を立ち上げ、それをSNSなどで報告するという運びになるのですが、意識高い系の人々は「SNSで報告したい」から「学生団体を立ち上げる」のです。つまり発展途上国を支援するというお題目は後行し、それがゆえに長続きしません。なぜならば本当のモチベーションは「承認欲求を満たす」ということであり、これは一番最初の段階で達成されているからです。

「発展途上国を満足のいくまで支援する」という動機と「学生団体を立ち上げる」という行動の因果関係が逆措定されてしまっている状況では、本来の目的が達成される見込みはあまりに低いのです。

その病から抜け出すには、自分を褒める

自己顕示欲も承認欲求も、根幹は他者に自らの存在を認めてもらいたいということに過ぎません。

今まで誰にも認められてこなかったからなのか、自分が自分を信じられないからなのか、その欲望が湧く理由はわかりませんが、まずは他者よりも先に自分が自分を認めてあげましょう。演技をして背伸びをしていないありのままの自分を認めてあげることで、ふっと背中が軽くなる時が訪れます。

「6時に起きた」「味噌汁が美味しく作れた」「読書をした」「掃除をした」など、何でも構いません。自己肯定感を高めることが、意識高い系という損な生き方から脱する唯一の方法なのです。

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SNSを通じて今までよりもより濃密に他人と繋がることから、互いが互いを意識するような社会になってきました。それゆえなりたい自分を演出するあまり、本当の自分とのあまりの乖離から心を病んでしまう人が少なくありません。

まずは自分で自分を認めてあげるところからはじめて、肥大化した欲求を解放してあげましょう。

<参考>
スーザン・ノーレン・ホークセマ,バーバラ・フレデリックソン,ジェフ・ロフタス,クリステル・ルッツ著,内田一成訳(2015),『ヒルガードの心理学 第16版』,金剛出版.
Hewitt Jay (1974), “Self-esteem, need for approval, and reactions to personal evaluations,” Journal of Experimental Social Psychology, Vol. 10, No. 3, pp. 201-210.
Greenberg Jeff (1992), “Why do people need self-esteem? Converging evidence that self-esteem serves an anxiety-buffering function,” Journal of Personality and Social Psychology, Vol. 63, No. 6, pp. 913-922.
井上みゆき (2012), “若者の承認欲求の拡散とその心性の背景にあるもの,” 島根大学教育学部心理臨床・教育相談室紀要, Vol. 7, pp. 117-126.


東京大学文科三類所属。磐田南高校卒業。4歳からサッカーとピアノを始める。大学ではスペイン語を学んでいる。三島由紀夫とMr.Childrenをこよなく愛する。将来はスペインに住んで日がな一日レアルマドリードの試合を見て天寿を全うしたい。