「香り」を上手に使えてる? 記憶にも集中にもリラックスにも効く「香り」活用法

「香りが感情を左右する」ということを意識したことがありますか?

お料理のいい匂いでお腹が空いてきたり、ふとかいだ香りに懐かしさを覚えたり。私たちは日々思っている以上に香りから影響を受けています。本能に訴えかける「香り」は自己啓発や気分転換にはもってこいのツールです。

アスリートが集中力を高めたりリラックスするのに音楽を聴いたり、政治家がイメージ戦略で色を使い分けたり、聴覚や視覚での戦略が当たり前になった今、嗅覚に訴える「香り」はまだ可能性を秘めています。「香り」を味方につけて仕事や勉強の効率アップを目指しましょう。

香りを使ってワンランク上を狙う

あのソニーが数年前に「香り」に目をつけました。“香りを持ち歩く”をテーマにパーソナルアロマディフューザーを発売したのです。これまで「香り」は自分に香りをつけるためのツール(香水)として使うのが主流でした。そして利用者の多くは女性でした。

しかしこれからは女性も男性も香りをかぐことで仕事や勉強のパフォーマンスを上げる流れがくるかもしれません。リフレッシュして閃きが欲しいとき、試験やプレゼン前に集中を高めたいとき、本能に直接語りかける香りでワンランクUPを目指すために、まずは「香り」について知っておきましょう。

◇香りのメカニズム 嗅覚の仕組みは、空気を吸うと鼻腔奥の嗅細胞群が刺激されて、においの情報が電気的信号に変化され脳に伝わり、脳波が反応することで自律神経に影響を与えます。

◇プルースト効果 “紅茶にマドレーヌを浸した時の香りで子供の頃を思い出した”(『失われた時を求めて』)と小説に描いた仏文豪マルセル・プルースト。そこから特定の香りがそれにまつわる記憶を誘発する現象は「プルースト効果」と呼ばれています。「情動脳」は本能的な行動や喜怒哀楽を司る大脳辺縁系の部分ですが、嗅覚はそこに直接繋がっているのです。プルースト効果が起こるのもそのため。本能に直接語りかけるのは嗅覚だけで、五感の中でも特別な存在と言えるでしょう。

◇香りの記憶は薄れにくい 嗅覚は生物が持つ最も原始的な能力です。生命を維持するために、食べ物や周囲に異変がないか「におい」をかぐことで危機管理をしたのです。人にとっても「におい」は生きていくうえでとても重要だったため、記憶に残りやすく変化もしにくいのです。その特性は勉強や仕事にも活かせそうですね。

社会における香りの効果と実例

いまや人はもっと意識的に目的に応じた「香り」を利用しています。その目的は大きく3つ。

1. アメニティー(人を快適にする) 2. アロマコロジー(精神的な疲れを癒し心を豊かにする) 3. アイデンティティー(魅力を引き出し自己主張に役立つ)

最近は企業や公共施設でも活用されています。

例えば、東京ドームでは催し物の内容に応じて3つの香り(シトラス・ミント・ウッディー)を使い分けて、入場者の快適さとワクワク感を高めようとしているそうです

また、鹿島建設の本社ビルでは時間帯で流す香りを変えて社員の働く環境を整えているそうです。(朝はスッキリするシトラス系、昼休みにはリラックスするウッディー系、仕事に集中する時間帯にはフローラル系など)社内調査ではその効果で仕事効率が上がったことが確認されています

筆者が暮らしたUAEでは、高級ホテルにはそれぞれの「香り」がありました。ロビーに濃く漂う香りは鼻腔と記憶に刷り込まれ、何度も行くうちにホテルのイメージに「香り」がリンクするようになりました。このケースは、「アメニティー」でもあり、ホテルの個性を主張するという意味で「アイデンティティー」にも当たります。

このように、企業やエンターテイメント施設では「アメニティー」や「アイデンティティー」として、病院や福祉施設などでは「アロマコロジー」として、「香り」は社会でその効果を大きく期待されるようになってきたのです。

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香りの活用法

個人では気分転換や作業効率アップなどに「香り」を活用できます。うまく使えば仕事のパフォーマンスが上がったり(資生堂の調査では香りを利用することでミスが減ったというデータがあります)質のいい睡眠が取れたり。気持ちよくマインドコントロールできたら嬉しいですよね。ではどういうふうに利用すればいいのかをご紹介します。

◇“勝負香”を持つ 自分の“勝負香”を持つこと。「勝負服」「勝負曲」など自分のヤル気をあげるツールってありますよね。そこに香りも加えてみましょう。香りの好みは人さまざま。香りにはそれぞれ効能がありますが、好きな香りであることがリラックスには大事です。お店に行って試してみてください。オイルだけでなく香水やハンドクリームなどでも大丈夫。リラックス用とヤル気用の2種類ほど自分の「勝負香」を持っているといいですね

◇ツールを利用する 肝心なときに香りを使うためには携帯する必要があります。アロマオイルで香りづけしたハンカチや「アロマパルス」というロールオンタイプのアロマフレグランス、小型のパーソナルアロマディフューザーを携帯するのがよいでしょう。試験前や面接前など、外出先でも手軽に「香り」を操り、気分転換を図ることができます。

◇「プルースト効果」を利用する “香りで記憶を呼び覚ます”という効果を勉強に利用してみましょう。例えば、何かを暗記する時、特定の香りを嗅ぎながら暗記するのです。そして試験の際、ツールを利用してその同じ香りをかぐことで効果を期待できるかもしれません。

お役立ちアロマ情報

最後に効能別アロマをご紹介しますので、自分の香りを選ぶときの参考にしてみてください。

◇集中力に効く レモン/ローズマリー/グレープフルーツ/レモングラス/バジル/ティーツリー/ユーカリ

◇自律神経のバランスを保つ 真正ラベンダー/オレンジ・スイート/ベルガモット/ヒノキ/ペパーミント

◇気分転換に効く グレープフルーツ/レモン/ペパーミント/ローズマリー・シネオール/ユーカリ・ラジアータ

◇ストレスに効く ラベンダー/ベルガモット/マンダリン/ネロリ/ゼラニウム/サンダルウッド/フランキンセンス/イランイラン/カモミール・ローマン

◇不眠に効く ラベンダー/オレンジ・スイート/マンダリン/イランイラン/ベルガモット/マジョラムスイート

◇風邪に効く ユーカリ/ティーツリー/レモン/スパイクラベンダー/ローズマリー・シネオール

◇花粉症(鼻づまり)に効く ユーカリ・ラディアタ/ペパーミント/ティーツリー

※アロマは好き嫌いとは別に、その効能で体が反応する場合があります。人によっては刺激が強すぎる香りもありますので、ご使用の際はご注意ください。

*** 最近は、認知症の治療に活用されたり、マーケティングに生かそうとする企業が増えたり、「香り」の可能性はますます広がりをみせそうです。そして個人個人がアロマを持つようになれば電車の中もいい香りに包まれるようになるかも……そうなったらいいですね。

(参考) ALL ABOUT|香りを感じるしくみと嗅覚の役割 日本香料工業会|香りの生理学 SONY|AROMATIC 日本経済新聞|ソニーが「香りのウォークマン」、鼻×ITに可能性 D4DR社長 藤元健太郎 AROMA LIFESTYLE|アロマオイルガイド RIKEN BSI NEWS|情動のメカニズムの探求 マイナビウーマン|「におい」で昔の記憶がよみがえる理由とは?ー「嗅覚」は直接脳とつながっている 美容外科形成外科川崎中央クリニック|臭いと記憶のメカニズム 川端一永 著(2002), 『医師が認めたアロマセラピーの効力』, 河出書房新社. 清水章弘 著(2014), 『現役東大生がこっそりやっている、すごい勉強のやり方』, PHP研究所. 資生堂ビューティーサイエンス研究所(1993) ,『化粧心理学:化粧と心のサイエンス』, フレグランスジャーナル社.

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