なんとなくいつも人を見下している人っていますが、そういう発言は周りで聞いていてもあまり気持が良いものではないですよね。人を見下している人は自分に自信があるのでしょうか。果たしてその自信は根拠があるものなのでしょうか。

実は心理学の調査から、そういう人には「努力をしない」という傾向があることが分かりました。「仮想的有能感」という心理学用語から人を見下すことについて掘り下げてみましょう。

「仮想的有能感」とは

「仮想的有能感」は、心理学者である速水敏彦氏によって提唱された言葉で以下のように定義されています。

自己の直接的なポジティブ経験に関係なく、他者の能力を批判的に評価・軽視する方向に付随して習慣的に生じる有能さの感覚

(出典:仮想的有能感の構成概念 妥当性の検討)

簡単に言うと、自分が実際に能力があるかどうかは別として、他人の能力を軽視することで自分が有能であるかのように感じる感覚です。人を見下している人が、見下すばかりで自分自身が努力をしないという傾向は、この「仮想的有能感」に起因するものなのです。

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ここまで読んで、「もしかしたら自分にもそういう面があるかも」と思った方も多いでしょう。人の文句や批判をしたことがない、という神様のような人はごくわずかでしょうから。それではその批判が、通常の範囲内なのか超えているのかを調べるために、仮想的有能感を図るACSを試してみてください。

「全く思わない」の1から「よく思う」の5までの5段階尺度となっています。

1.自分の周りには気の利かない人が多い

2.私の意見が聞き入れてもらえなかった時、相手の 理解力が足りないと感じる

3.自分の代わりに大切な役目をまかせられるような 有能な人は、私の周りに少ない

4.他の人の仕事を見ていると、手際が悪いと感じる

5.世の中には、常識のない人が多すぎる

6.話し合いの場で,無意味な発言をする人が多い

7.知識や教養がないのに偉そうにしている人が多い

8.世の中には、努力しなくても偉くなる人が少なくない

9.他の人に対して,なぜこんな簡単なことがわからないのだろうと感じる

10.今の日本を動かしている人の多くは、たいした人間ではない

11.他の人を見ていると「ダメな人だ」と思うことが多い

(出典:「看護学生の仮想的有能感と自律性欲求・ 学習動機づけとの関連」)

どうでしたか? 仮想的有能感は、怒りや自意識、孤独感もと大きく関係があるようです。気になる人はぜひ出典元の記事もお読みください。これらの回答への分析なども詳細に説明されています。

ACSと努力をしないことの相関性

「仮想的有能感」の提唱者である速水氏が、ある高校でACSと学習量志向について調査を行ったところ負の相関が認められました。つまり仮想的有能感が高い人ほど勉強量が少ないということ。

この結果について速水氏は、「他者軽視の強い個人は繰り返し学習することや、学習時間を増やすことが効果的ではないと捉えていると考え、仮想的有能感は可能な限り努力をしないで自己評価を保つための方略である」と述べています。

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自分と向き合おう

いかがでしょうか。自分自身のプライドを保つために存在するような「仮想的有能感」。これが、他者批判から自分への批判、ひいては足りないことを補う努力へと向っていくのなら意味がありますが、単に他人批判で終わってしまってはもったいないですね。

哲学者デカルトは言いました。

Conquer yourself rather than the world.

「世界ではなく、己を制せよ。」

他人を気にしたり他人の評価を落とすことで自分自身が上がっているような錯覚を持つのではなく、「自分がどうしたいか、どうありたいか」を大切にしていきましょう。

参考文献

八戸短期大学研究紀要「看護学生の仮想的有能感と自律性欲求・ 学習動機づけとの関連」
CiNii「仮想的有能感と学習観および動機づけとの関連」
仮想的有能感の構成概念妥当性の検討