みなさんは計画を立てるのは得意ですか? この質問に自信を持ってYesと答えられる人はそう多くないでしょう。

絶対に失敗しない計画なんて、そう簡単には立てられないもの。しっかり予定を立てたつもりなのにいつの間にか少しずつ狂っていた、という経験は少なくないはずです。

実は、このような計画のずれや失敗は、自分の「意志の弱さ」とか「だらしなさ」が原因とは限りません。実際、プロの現場でさえ、計画の遅延や破綻が起きることは珍しくないのです。

きちんと立てたはずの計画が狂ってしまうのはなぜなのか、どうすれば計画を上手くたてることができるのか、心理学の側面から考えてみましょう。

建設事業に見る「計画の錯誤」

計画通りに物事を進める鍵は、実行する段階よりもむしろ計画を立てる段階にあります。

計画を立てるときに人間が様々な予測の間違いを犯し、結果的に計画が思い通りにいかないことを、心理学の用語では「計画の錯誤」と呼びます。計画の錯誤が最も分かりやすく現れるのは建築の分野です。

最近の例では、2020年の東京オリンピックに向けて建設が進む新国立競技場の建設計画で、聖火台を競技場最上部などに設置できない可能性があることが判明し、大きな話題となりましたね。酷いニュースだと感じた人も多いかもしれませんが、実はこうした現象はそんなに珍しいものでもないのです。

同様の事例は、他にもいくつか有名なものがあります。例えばシドニーのオペラハウスの建設について見ると、当初予算の約13倍もの費用をかけ、計画よりも10年遅れで完成しました。また、スコットランドの新国会議事堂も、予算の10倍以上の建設費がかかり、工期も3年延長されたのだといいます。

では、綿密な計算のもとで行われているように見られるプロの建設計画が狂ってしまうのは、いったいなぜなのでしょうか?

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計画の錯誤の原因

ノーベル経済学賞を受賞した心理学者ダニエル・カーネマン氏は、計画の錯誤を引き起こす原因は、「時間や予算など計画完遂に必要な資源を常に過小評価し、遂行の容易さを過大評価する傾向」にあると述べています。これについてさらに詳しく見ると、問題点は次の3点にまとめることができます。

・コストとリスクを過小評価してしまう。
・利益を過大評価してしまう。
・不測の事態を無視してしまう。

これらの要因を取り払うことで、計画の失敗は最小限に抑えることができると言えるのです。では、そのためには実際にどういう対策が考えられるか、一つずつ見てみましょう。

1. ワーストケースを考える

私たちがコストやリスクなどを過小評価してしまうのは、物事の悪い側面を見るのは人間の苦手な作業の一つであるため。コストとかリスクとか、悪いことばかり考えるのは気持ちの良いことではないですからね。

では、どうすればコストやリスクから目を背けずに、それらをきちんと認識することができるのでしょう。

オススメの方法は「ワーストケース」を想定するという方法です。ワーストケースとは、ベストケースの反対で、最悪の状況のこと。つまり、何もかもが上手くいかず、最悪の事態に陥ることを想定して計画を吟味してみるのです。このことに注意すると、無意識に蓋をしてしまっていた思わぬ落とし穴(リスク)の存在が見えるようになります。

2. 似ているケースを分析する

利益を過大評価してしまうのを回避するためには、適正な利益を判定する方法を身につける必要があります。

これについて有効なのは、似ているケースを具体的に調査するというやり方。例えば、ある新商品を売り出したい場合、同様の商品を販売している他社の事例を調査するとか、すでに自社で販売している類似商品の事例を見る、といった具合です。

このプランが成功すればこれだけのたくさんの利益が出るはず、と大きめに見積もるのではなく、成功する確率と、それでどれだけの利益が出るかという点を、シビアに切り分けて現実的な数値を検討しなければなりません。

捕らぬ狸の皮算用になってしまわないように、実際の成功がどれだけの利益を呼び込めるのか正確な数値を知ってから、計画を吟味するようにしましょう。

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3. 安全マージンを確保する

不測の事態を無視し、物事が安全に進むことだけを前提にした計画を立ててしまうと、いざトラブルが起きたときに大混乱が起き、前に進めなくなります。

そこで必要なのが、計画に「安全マージン」を考慮すること。

安全マージンとは主に自動車に関して使われる言葉で、安全性を確保するために持たせたゆとりのことを指します。例えば、アクシデントを想定して、スピードを抑えたり車間距離を広めに取ったりするなど、万一不慮の事態が起きても対処できるように備えた運転をすることを「安全マージンをとる」と言います。

計画を立てるときも、運転と同じことが言えます。道路で事故が起こるように、計画もしばしば小さな事故を起こすのです。だから、計画にも安全マージンをとりましょう。

ガチガチに固め過ぎた計画は、小さな事故が起きただけですぐに破綻してしまいます。そんな事態を防ぐため、予算の面でもスケジュールの面でも、「何かが起きたときに埋め合わせをするためのゆとり」を用意しておくことが大切です。

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以上のようなちょっとした要点を押さえるだけで、計画の成功率はグッと高くなります。
せっかく立てた計画が非現実的なものになってしまわないように、気配りをしてみてはいかがでしょうか。

(参考)
株式会社ワイズエッジ|第48話:計画どおりにいかないワケ
Wikipedia|シドニー・オペラハウス
Wikipedia|スコットランド議会
ダニエル・カーネマン著,村井章子訳(2014),『ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?』,早川書房.
ダニエル・カーネマン著,村井章子訳(2014),『ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?』,早川書房.
いまさら聞けない!?自動車用語辞典|「安全マージン」
産経ニュース|聖火台の置き場がない!! 新国立競技場にまたまた問題発生