プライベートな話し合いから、ビジネスでのミーティングまで、私たちは、議論とは切り離せない毎日を生きています。特に社会人であれば会社で頻繁に会議が行われるでしょうし、大学生でもサークル活動やゼミでの議論など、数多くの議論に触れているのです。

そうした議論はすべて建設的に行えればよいのですが、残念ながらそうとは言えないことはありませんか?

「あれ、議論がぐるぐる回ってない?」「何について議論してたんだっけ?」のように、途中から議論の目的を見失い、混乱してしまうようなこともしばしば……。

なかにはわざと議論を混乱させて相手を煙に巻いてやろうとするような人もいるかもしれません。しかし、真剣に議論していても、時としてこのような落とし穴に陥ることは多いものです。

そこで、議論中の混乱を避けるためにも、その混乱の原因になるような誤謬(誤り)や詭弁(ごまかしの議論)の種類についての知識を持ち、自分がそれに陥っていないか、時折振り返ってみることが必要になります。

頻繁に現れるいくつかの詭弁について、例を交えながら見ていきましょう。

悪魔の証明

悪魔の証明というのは、ある事実が「全くない(なかった)」というように、証明することがほとんど不可能な証明のことを言います。

例えば「幽霊は存在しない」という事実を証明しなさいと相手に突き付ければ、ほとんどの場合相手はお手上げになってしまいますね。

これは極端な例ですが、例えばあなたが作った計画に対して「絶対に失敗しないということが証明できるのか!」と攻撃されたとすれば、相手が使っているのは「悪魔の証明」の詭弁になります。

重要なのは「この世に絶対はない」ということ。しっかりと根拠や確率を提示し、相手のペースに乗らないようにして対応しましょう。

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人身攻撃

人身攻撃(ラテン語: ad hominem、argumentum ad hominem)とは、ある論証や事実の主張に対する応答として、その主張自体に具体的に反論するのではなく、それを主張した人の個性や信念を攻撃すること、またそのような論法。論点をすりかえる作用をもたらす。人格攻撃論法ともいわれる。

(引用元:Wikipedia|人身攻撃

この詭弁は、相手や聴衆の意識を重要な部分から逸らしてしまう修辞上の技法「燻製ニシンの虚偽」の一種と言われています。

分かりやすく言えば、

「あなたが言っていることは間違っている。なぜならばあなたはこんなに悪い人間だからだ」

のようなものを人身攻撃と呼びます。

ナチス・ドイツは優生学を利用していた
ナチスは悪い集団である
したがって、優生学は悪い考え方である

(引用元:同上)

ある主張の質を考える時、発言者の性格や経歴は、主張とは切り離して考える必要があるはず。議論の相手に論点をすり替えられ、議論を煙に巻かれないよう気をつけましょう。

チェリー・ピッキング

チェリー・ピッキング (英: cherry picking) とは、数多くの事例の中から自らの論証に有利な事例のみを並べ立てることで、命題を論証しようとする論理上の誤謬、あるいは詭弁術。

(引用元:Wikipedia|チェリー・ピッキング

分かりやすく例を見てみましょう。

「○○も××も△△も学生の間に起業したが、結果として大成功している。やはり学生の間に起業するのが成功の秘訣なのだ」

この主張からは、上手く行かなかった学生起業の例が抜け落ちています。

都合の良い例ばかりを持ち出して持論を強化する人がいたら、都合の悪い例を隠していないか注意するようにしましょう。

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すべり坂

ある行為が法的または道徳的に許されないことを示すために使われる論法の一つであり、一般に次の形式を持つ。「もしあなたがはじめの一歩Aをふみだすならば、あなたか、重要な点においてあなたと似ている別の行為者によって類似の行為が次々と連鎖的に行なわれ、その結果、行為Bが必ずなされるか、あるいは非常に高い可能性でなされるだろう。Bは道徳的に許容できない。したがって、あなたは第一歩Aをふみだしてはならない。」

(引用元:Jinkawiki|「滑りやすい坂」論

ちょっと複雑で分かりにくいかもしれません。少しだけ噛み砕くと、

「あなたの主張を認めれば、それに類似する主張を次々認めることになり、エスカレートして最悪の主張まで認めることになるから、あなたの主張は認められない」

という風に主張を否定されたなら、相手はこの「すべり坂」の論法を使ってあなたをやり込めようとしています。

このような考え方は、冷戦下のアメリカでアイゼンハワー大統領によって主張された「ある一国が共産主義化すれば動きはドミノのように隣接国に及ぶ。(だから、一国の共産主義化も認めることは出来ない)」というドミノ理論などにも反映されているものです。

この論法の問題は、「本当にエスカレートしてしまうのか」という点にほとんど根拠がない点にあります。ある一国が共産主義化したときに、隣接国も共産主義化に追従するかどうかは実際のところ分かりませんよね。

トントン拍子に論理を進められたときには、その論理展開は本当に正しいのか、きちんと確認するようにしてください。

***
ちょっと例を挙げてみただけで、議論にはこんなにたくさんのインチキが隠れているのかとうんざりしてしまいそうになるでしょう。
でも、ここで匙を投げてはいけません。議論に隠された問題をきちんと見据えて、一つ一つ正確に読み解き、解決していく冷静さこそが、議論をやり抜くのに求められる資質であるように思われます。

(参考)
はてなキーワード|悪魔の証明
Wikipedia|人身攻撃
Wikipedia|燻製ニシンの虚偽
Wikipedia|チェリー・ピッキング
Jinkawiki|「滑りやすい坂」論
Wikipedia|ドミノ理論