記憶力アップの鍵は「ワーキングメモリ」の解放。脳の仕組みを生かした記憶術3選

皆さんは自分の記憶力に不安を覚えたことはありませんか?

ちょっとしたことをやろうと思っていたはずなのに、何だったか思い出せない。人の名前が咄嗟に出てこなくなってしまった……。そのような経験は加齢と共に増えてしまっているかもしれません。

しかし近年の研究では、人間の脳は神経細胞を絶えず新しく作り続け、歳をとってからでも記憶力を鍛えられるということがわかっています。実際、『ぶっちぎり世界記録保持者の記憶術 円周率10万桁への挑戦』の著者、原口證さんは、円周率10万桁の暗唱という世界記録を打ち立てた際に既に60歳になっていました。

このように年齢を重ねてからも驚異的な記憶力を発揮する人が存在する一方、加齢による記憶力低下を感じている人が少なくないのも事実。しかしその原因の多くは「記憶力が落ちた」と思い込んでしまっていることと、ワーキングメモリが圧迫されがちな環境のせいであると言われています。

ワーキングメモリを解放しよう

ワーキングメモリとは、非常に短い時間の間に何かを記憶しておく働きを持つ脳の記憶領域のことです。短期記憶、長期記憶という言葉は有名かと思いますが、ワーキングメモリはその短期記憶より更に短い、一時的な記憶領域になります。

例えば調べた電話番号に電話をかけるとき、ダイヤルするまでは番号を覚えておくことができても、電話を切った後にはもう思い出すことができないはずです。これは、ワーキングメモリが短時間での記憶領域であると共に、電話の内容という新しい情報に対して解放され、古い情報が消去されたために起こる現象です。

一般的に年齢を重ねるごとに仕事の責任が増すなど、日常には複雑な問題が増えていきます。つまり、沢山のことを処理しながら生きていかなければならなくなるのです。なのでワーキングメモリが常に圧迫されてしまい、新しいことを覚えようにも脳に浸透していかない、ということが起こり、加齢にともなう記憶力低下を感じさせてしまうのです。

しかし逆に言えば、このワーキングメモリを上手く解放してやることで、年齢にとらわれることなく記憶力をグッと向上させることが可能なのです。

ではどのようにしてワーキングメモリを解放すれば良いのでしょうか? 具体的な方法を紹介したいと思います。

メモを取って忘れる記憶術

ワーキングメモリの解放には、メモを取ることが有効です。メモを取って記録に残すと、人間の脳は安心してその内容を忘れてしまうということが近年の研究で分かっています。

カナダのマウント・セントヴィンセント大学の行った実験では、神経衰弱を2つの学生グループに対して行いました。一方のグループには記憶をする際にメモを取ることを許可、もう一方のグループには許可をせず、メモなしでの記憶を求めました。

その後に回答を行う際、あらかじめメモを没収してから回答を求めたところ、メモを取ったグループの方がそうでないグループよりも正答率が大きく下がるという結果になったというのです。

この性質はメモを取る際に気をつけたいことではありますが、ワーキングメモリを解放するのには非常に都合の良い性質です。

何かの情報や予定が頭に入って来たときに「忘れたらまずいな」と思ったままで過ごしてしまうと、それがワーキングメモリの圧迫につながります。情報はこまめにメモやスケジュール帳へとアウトプットし必要なときにはそちらを確認する、という習慣をつけることで、ワーキングメモリの圧迫はグッと軽減されるはずです。

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仮眠や瞑想で脳を休ませよう

人間の記憶が睡眠中に整理され、定着するというのは有名な話ですが、近年では数分程度の仮眠でもそのような記憶の整理が行われることがわかっています。

たとえば朝からの仕事のせいでワーキングメモリが圧迫されてきたような午後の時間。ランチを食べた後の眠気を飛ばすためにも、数分だけ机に伏せて眠ってみるだけで、午後のためのワーキングメモリが確保されるでしょう。

近年注目されている瞑想にも同様の効果があります。または、単純に目を閉じてしばらく目を休める、というだけでも、ワーキングメモリの解放には効果があることが分かっています。人間の脳に流れ込む情報はその大部分が視覚情報であるため、それを遮断するだけでも脳を休めることにつながるのです。

目を閉じてみるだけなら電車内やエレベーターの待ち時間程度でもできますから、気づいた時にこまめにワーキングメモリの解放を心がけてみると良いでしょう。

実は筋トレも効果的!?

記憶力と筋肉とは関係ないように思えますが、実はそうでもないようです。

筋肉を鍛えると負荷がかかり、筋繊維が一度破壊され、その後、強く太い筋繊維が再生されます。このとき筋繊維に含まれていた物質が血中に放出されるのですが、その中に「イリシン」というホルモンがあります。イリシンは、脳で「BDNF(脳由来神経栄養因子)」と呼ばれる、神経新生をサポートする物質を増やすと言われています。

(引用元:THE21ONLINE|脳科学者が教える「記憶の作業台」の整理法

つまり筋肉を作り変える働きが脳内の神経を新たに生み出すことを助け、物理的に記憶能力が上がっていくという副次的効果が生まれるのです。筋トレではなくても、定期的に身体を動かして筋肉を活用することが、記憶力を保ち、増進することに役立ちそうですね。記憶力を向上させながら身体も健康になれば、一石二鳥かもしれません。

*** 記憶力の高さというのは、何をするにも有利に働く基礎体力のようなもの。ワーキングメモリをうまく活用し、スキルアップにつなげられると良いですね。

(参考) はいから|円周率の中に「青い鳥」を見つけました 原口證さん THE21ONLINE|脳科学者が教える「記憶の作業台」の整理法 WIRED.jp|メモを取っても記憶は定着しない:研究結果 現代ビジネス|最新研究「瞬間睡眠」が、脳を若返らせる 昼間に突然「カクッ」あの瞬間に起きていること

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