やる気を出さなければならない瞬間、集中しなくてはならない瞬間、休息する瞬間。私たちが過ごす一日の場面は目まぐるしく変わってゆきます。

中でも、勉強に集中したり、仕事のパフォーマンスを高めたりするために大切なのは、休息する瞬間から集中すべき瞬間への気持ちの切り替え。この切り替えがうまくいかないと、注意散漫になりミスを犯してしまったり、目の前の勉強や仕事に没頭できずに成果が挙げられなかったりしてしまいます。

ではどのようにすれば、気持ちの切り替えを上手に行うことができるのでしょうか? 今回は、気持ちが緩んだ状態から緊張した状態へ、あるいは、ぼんやりした状態から集中した状態へ切り替えるのに有効な方法の1つ、アンカリングについて考えてみたいと思います。

アンカリングとは

アンカリングとは、特定の行動や心理状態を作るためのきっかけ作りのことです。簡単に言うと条件づけのことで、「パブロフの犬」の実験は有名ですね。

「パブロフの犬」の実験では、ベルを鳴らした後にいつも餌をあたえられた犬は、ベルの音を聞くだけで、実際にはまだ餌を与えられていないのにもかかわらず、唾液を出すようになります。このように、私たちの脳はベルの音と食欲という関係のない2つの事象をつなげることができるのです。

この脳の特徴を応用すると、行動と音楽、気分と香りといったように関係のない要素同士をつなげることで、呼び起こしたい気持ちを意図的に導くことができます。例えば、「仕事のための緊張感(あるいは勉強するための集中力)が欲しかったらこの音楽を聴く」であるとか、「リラックスしたいならこの香りを嗅ぐ」といったような具合です。

このように、呼び出したい気持ちごとに決まった「スイッチ」を作ることによって、気持ちの切り替えをよりスムーズに行うことができるのです。

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気持ちの切り替えスイッチを作る方法

では、具体的にはどのようにして切り替えのスイッチを作ればよいのでしょうか? 切り替えのスイッチは、次の5つのステップを踏むことによって作ることができます。

1. 引き出したい感情を選ぶ
2. その感情が一番強かった過去の経験を思い浮かべる
3. スイッチと感情のつながりを作る
4. 感情やアンカーから離れて、何もない状態を作る
5. 上手くいくかどうか確認する

例として、「特定の曲によって、仕事や勉強に集中する」というスイッチ作りの方法を示したいと思います。

1. 引き出したい感情を選ぶ
ここは「仕事や勉強への集中」ですね。

2. その感情が一番強かった過去の経験を思い浮かべる
過去に自分が一番集中できた場面を思い浮かべてみてください。思い浮べる場面は、勉強や仕事で一番集中できた瞬間でも構いませんし、自分の趣味やスポーツをやっている場面でも構いません。このステップはとても大事で、シーンをより鮮明に思い出し、より深く入り込むことができれば、その分だけ影響の大きいスイッチを作り出すことができます。

3. スイッチと感情のつながりを作る
十分にその場面に入り込むことができたら、スイッチにしたい曲を聞いてください。ここで集中している場面のイメージが薄れるようでしたら、音楽を聞くことよりも場面に入り込むことを意識してください。

4. 感情やアンカーから離れて、何もない状態を作る
ある程度の時間が経ったら、曲を聞くのを止め、家事や読書などをして、イメージを完全に頭の中から追い払います。

5. 上手くいくかどうか確認する
さらにある程度の時間が経過したら、スイッチにした曲を再度聞き、集中できるように気持ちが切り替えられたかどうかを確認します。もしも、うまくいっていないようでしたら、以上のステップを何度か繰り返してください。

呼び起こしたい感情とつなげるスイッチは、音楽だけでなく、映像、写真、言葉、動き、匂い、食べ物など、五感が関係して、ほしい感情と直接的な関係がないものなら、どんな種類でも大丈夫です。日常的にはあまり関係がないけれども、気持ちを切り替えたい瞬間にはいつも存在している物、いつでも取り出せる物をスイッチにするとよいかもしれません。

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より確実に気持ちを切り替えるために、スイッチを複数用意する

上記のようなスイッチを持っておけば、休憩時間から仕事や勉強に没頭する時間へ復帰したい場合や、ここぞという場面で集中力を発揮したい場合などに、とても役立ちます。

また、切り替えるためのスイッチを複数持っておくことも、考えておくとよいかもしれません。

一言に「やる気が出ない」という気持ちでも、その原因は単に気分の問題だったり、疲れているからだったりなど、さまざまなものが考えられます。そのため、集中したいときに押すべきスイッチが1つだけだと、たまにうまくいかないことがあるのです。

音楽だけでなく、写真、行動(例えば、瞑想する、走る、コーヒーを飲む……)など、切り替えスイッチはいくつかあったほうが、その時に応じて臨機応変に選ぶことができ、より気持ちを切り替えやすくなるでしょう。

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体操の内村航平選手や水泳の瀬戸大也選手、テニスの錦織圭選手は、特別な勝負曲を持っているそう。また、ラグビーの五郎丸選手や野球のイチロー選手は、特別なルーティンで気持ちを集中した状態に切り替えているといいます。

彼らのように、必要な時に必要な感情を呼び出すことができれば、私たちも仕事や勉強で、自分のよいパフォーマンスを引き出しやすくなりますよ。

気持ちの切り替えが苦手な方は、一度スイッチを作ってみてはいかがでしょう。

(参考)
PRESIDENT Online|体が芯から奮い立つ! 錦織 イチロー 五郎丸が実践する「アンカリング」技術5 
Wikipedia|条件反射
ぐるりみち。|気持ちを切り替える「スイッチ」を意識する
ITmedia エンタープライズ|たった3秒で“最高の自分”に――イチローもやっている「アンカリング」テクニック
STRESS FREE NAVI.|必要な時に必要な感情を引き出せる「アンカリング」のやり方