相手を傷つけずに指摘する。ビジネスパーソン必須の『指摘の技術』を身につける

誰かに何かを指摘するとき、相手を傷つけてしまわないか不安になってしまいますよね。

同等の立場である同僚や、一緒に仕事をし始めてまだ日が浅い後輩に対して指摘する必要性が出てくると、相手に嫌われないかと心配になってしまうものです。できることなら指摘なんかせず、平和に過ごしたいと願う人も少なくはないかと思います。しかし、指摘すべき点があると気付きながら何もしないのは、当人の成長の機会を奪っているのと同じ。それでは相手のためにも会社のためにもなりません。

そこで今回は、頼りになる同僚もしくは先輩になるためにも、相手を傷つけない指摘の仕方をご紹介します。

相手を傷つける指摘とは?

相手を傷つけない指摘の仕方を知る前に、どういった指摘が相手を傷つけてしまうのか考えてみましょう。

・ストレートな正論 (例)「この企画は既に類似案があるので全く役に立たない。」 ストレートな正論とは、言いまわしを配慮せず、露骨で直接的な言葉で道理にかなう主張をすること。それゆえに、言われた方は反論の余地がありません。それでは相手を傷つけたうえに反感を買いギクシャクしてしまうでしょう。

・質問するような口調 (例)「この内容は完全に間違っていると思わない?」 答えが決まりきっている、もしくは答えを求めていない質問は、どんなに口調を和らげようと、相手をいやな気分にさせたり追い詰めたりするだけです。

・大げさな表現 (例)「本当にいつも間違いがものすごく多いから気をつけて。」 それが紛れもない事実であれば必要な表現である場合もありますが、事実以上に大げさな表現であれば、ただ相手を傷つけるだけで効果的な注意喚起になりません。

・他者と比較する (例)「これは間違いなので注意して。他の人は誰も間違っていないよ。」 誰でも人と比べられると、自分が劣っていると感じて自信をなくしてしまいます。それではむしろ注意が散漫になってしまうかも。他者と比較しながらの指摘は、不要に相手の自信を喪失させるだけなのです。

・決めつけた言い方 (例)「こんなミスがあるなら他の資料も間違っているのでは?」 実際に、人は似たようなミスをおかしてしまうことがあります。しかし、このように決めつけた言い方をすると相手は人格まで否定された気持ちになってしまい、ミスした箇所を注意するどころか投げやりになったり意固地になったりしてしまうかもしれません。

たとえそのその指摘が必要だとしても、反論の余地がなく、難癖をつけたような伝え方は相手を傷つけるだけです。相手がプライドの高い人ならば、本気で怒ってしまう可能性だってあります。また、真面目に一生懸命やっていた人は自信をなくし、自分にはできないと思い込んでしまうことも。それだとやる気もなくなってしまうので、相手や会社、チームのためにと思い行った指摘がむしろ、業務を停滞させてしまう危険性もあるのです。

こういった事態を避けるためにはどうすれば良いのか、相手を傷つけない指摘の仕方を見ていきましょう。

現状ばかりを評価せず、将来への期待を込める

(例)「ここをこう改善すればもっと良くなると思うよ」 相手に対し期待していることを示したうえで、改善点を指摘することがポイントです。このとき現段階ばかりを評価してしまうと「だめだったのか……。」と落ち込んでしまいかねません。悪い部分だけを指摘するのではなく、具体的な改善点をもって伝えることを心掛けてください。相手に改善しようとする気持ちがあり、最終的に良くなっていくのであれば現状にこだわる必要はないのです。「そこを改善すれば良い状況になる」という未来を相手と共有しましょう。

頑張るところや頑張り方が間違っていて、なかなか成果が出ない後輩がいると「あそこを改善すれば必ず良くなるのに……。」ともどかしく感じる人も多いかもしれません。そんなときは後輩の立場になって指摘の仕方を考えてみましょう。「そこが間違っているからだめだ」と言われるよりも「こうした方が良くなる」と言われた方が、方向性が見える「良い指摘」だと思いませんか? 同じような指摘であっても、言い方を少し変えるだけで相手に与える印象は大きく変わります。

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理解を示してアドバイス

(例)「これはいい企画だね。さらにこうするともっと良くなると思うな」 内容を理解し、内容に共感したうえでアドバイスをすると良いでしょう。誰でも共感してもらえるとうれしいものです。「この人は味方だ」と認識し、指摘された点も素直に受け入れやすくなります。さらに、語尾が「~すべきだ」といった断定になるのを避け、提案するような言いまわしにすると良いでしょう。相手を尊重し、相手に託すことでお互いに信頼感が生まれます。

たとえば後輩が持ってきた新しい企画が、確かに内容はおもしろいけれど、このままではまだ形にはならないというような場合があったとします。そんなときは、まず「これをぜひ実現したい」という意思を伝えてあげてください。そのうえで、実現するためにはどうすれば良いか伝えるのです。企画に賛同してもらえたことでやる気も高まるはずなので、のちにブラッシュアップされた案が出てくるかもしれません。

1つの意見として伝える

(例)「そういう発想もいいけど、私ならこうすると思う」 大幅に修正が必要な場合、先に紹介した2つの方法では難しいかもしれません。そんなときは、あくまでも自分の意見として指摘すべき内容を伝えることで、相手を傷つけず、的確に指摘できますよ。つまり、指摘を背後に隠しつつ、「こういう方法もあるよ」ということを提案してあげるのです。その際に重要なことは、相手が間違っている、自分が正しいといった正否を問題にしないことです。決して断定せず、反論の余地も与えて指摘することで、相手も受け入れやすくなります。

たとえば後輩が、根本的なところから考え直さないと使えない企画書を持ってきたとき、「こうしろ」「ああしろ」と指図するのは簡単です。しかしそれでは、相手のプライドを傷つけてしまうだけでなく、成長の機会を奪い取ることにもなり、次の企画書でまた同じような指摘をしなければいけなくなるかもしれません。「私ならこうすると思う」という提案・選択肢の形で指摘してあげることで、本人に意図や内容を熟考させ、なおかつ次につながるようにしてあげられるのです。

*** 相手を信頼しているからこその「指摘」です。つまり、指摘は“ダメ出し”ではなく“期待の表れ”。紹介した方法はいずれも、悪いことではなく良くなることを指摘しています。努力すれば改善できる――それが上手く伝わるような伝え方を心掛けましょう。仕事の効率も人間関係も良好になるはずですよ。

(参考) 山田ズーニー著(2006), 『あなたの話はなぜ「通じない」のか』, 筑摩書房. Study Hacker|信頼されるリーダーになるために「正論を振りかざさない」ということ 植木理恵著(2012), 『植木理恵のすぐに使える行動心理学』, 宝島社.

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