私たちの行動は、自分の気持ちとは、必ずしも一致しません。

子どもの頃、親に言われて嫌いなピーマンを無理やり食べました。また、大学に入ってからは、受けたくもない講義を聞き、行きたくもない飲み会に参加することもあります。おかしなことですが、自分の気持ち通りに行動する人は、意外と少ないのかもしれませんね。

幼い頃、意志に反して私にピーマンを食べさせたのは、母親の叱責でした。
大学に入り、意志に反して私に講義を受けさせるのは、単位取得というシステムです。

しかし、厳しい言葉やシステムに縛られたり、他人をがんじがらめにしたりするのは、避けたいですよね。

今日は、自分の行動をスムーズに起こすだけでなく、波風立てずに他人をも行動させる、心理学的テクニックをご紹介しましょう。

態度と行動は一致しない。

心理学者には、人の態度を研究する人がいます。

ここでいう態度とは、その人が何を考え、どういう意見を持っているかということ。一般的に「態度」と「行動」がよく同じ意味で使われます。例えば「分かっているなら態度で示せ!」という文言は、理解したならそれを行動に移せ、という意味です。しかし心理学では、「態度」と「行動」を明確に区別します。態度はまだ顕在化していないもの、つまり「その人の意見」と言い換えられるものです。

心理学の世界において、「態度と行動は一致しないのでは?」という議論が起きるきっかけとなった調査があります。

ある白人の教授が、若い中国人のカップルと一緒にアメリカ横断旅行をした時のこと。当時アメリカにはアジア人に対する根強い偏見がありましたが、3人が立ち寄った施設では何の問題もなくサービスを受けられました。しかしその後、それらの施設に、客として中国人を店に受け入れるかを尋ねた結果、92%がNoと答えたのです。実際には偏見を持っていたのに、その態度に基づいた行動を行わなかったんですね。

この調査の背景にはいろいろな事情が考えられますが、「態度と行動が一致しない」と示した非常に有用な調査です。

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他人事じゃなければ、態度と行動は一致する。

この調査以降勃発した議論の中では、態度ではなく、社会的要因や状況の方が重要なのではないか、という意見もありました。しかし、いくら社会的要因が大きいからと言って、その人の「態度 = 意見や考えていること」が全く行動に影響を及ぼさないかといえば、そんなことはないはずです。自分の考えと真逆の行動を取る時もあるでしょうが、きっと自分の態度に沿った行動を起こす時もありますよね。

研究が進んで分かったのは「自分が直接経験することに関しては、態度と行動は一致する」ということです。わかりやすく考えてみます。同じ原発反対の意見を持つ人でも、実際に原発のそばに住む人の方が、反対運動や署名活動に参加するでしょう。人間とは現金なもので、頭で分かっていても、他人事では行動に移せないんですね。

逆にいえば、当事者意識を醸成できれば、自分が行動を起こすことができたり、簡単に人を動かすことができたりするのです。なかなか行動につながらない場合には、まず「自分がその案件を担当しているのだ」「自分が行動しなければならないのだ」という認識を持つことが肝心です。

例えば、本社勤務の人が工場の環境改善に取り組もうとしても、現場を知らなければ具体的な行動を起こすことは難しいでしょう。そういう場合は、工場を訪れ現場の状況を肌で感じてみると、当事者意識を持つ助けとなります。また、商品開発をしている人が、消費者のニーズを開発に生かすためには、想像しているだけではいけません。消費者に直接インタビューすることで、より当事者意識に近いものを感じることができるでしょう。実際に体験したり現場に行ったりすることができない場合でも、その仕事や研究、勉強が具体的にはどのように役立つのかを調べるのも有効でしょう。

まず「他人事ではないのだ」と理解すること。それが重要なのです。

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なんだそんなこと、当たり前じゃないか、と考える人がいるかもしれません。しかし、「態度と行動は必ずしも一致しない」ということを、本当に理解しているでしょうか。

例えば、部下が何かミスをしたとき、それは何も「ミスをしよう」と考え行動した結果ではないはず。もしあなたが、失敗した部下を指導する立場にあるなら、部下が本当は何を考えていたのか、それをきっちり見抜いた上で、失敗しないための当事者意識を醸成できるよう努めてみてください。その工夫で、望ましい行動を引き出すことができるかもしれません。

参考
スーザン・ノーレン・ホークセマ,バーバラ・フレデリックソン,ジェフ・ロフタス,クリステル・ルッツ著,内田一成訳(2015),『ヒルガードの心理学 第16版』,金剛出版.