幸福感が生産性をあげる! 松井、イチローも実践した「コントロールできないことは無視」という考え方。

物質的豊かさがほとんど満たされたと言える現代の日本社会。ユニクロに行けば安く服を手に入れられるし、吉野家に行けば満腹になるまで食べられる。スマホで調べれば知りたい情報は手に入る。日常生活で不自由することが少なくなってきたのは確かですが、私達の心の満足度はどうなのでしょうか?

内閣府の世論調査によると、日常生活での悩みや不安を感じている人の割合は、昔に比べると増加傾向にあります。みなさんの実生活を振り返ってみてください。将来への不安、仕事の悩み、人間関係のストレス……ストレスフルな生活を送っている人は多いのではないでしょうか。

そんな生活を改め、幸福感を高めるとともに生産性を増すためには、どうすればいいのか。今回は、心理学分野の研究成果を踏まえた上で、参考にしたい心がけを3つほど紹介したいと思います。

信頼できる相手と、良質な人間関係を築く

1930年代後半にハーバード大学に入学した男子生徒たちを、現在に至るまで約75年間、彼らが80代になるまで追跡調査した研究があります。この調査を通して、幸福で豊かな生活を送る人とそうでない人の差は何であるのかが明らかにされました。それは良質な人間関係の有無です。

この研究の責任者で心理学者のロバート・ウォールディンガー氏によると、周囲の人との繋がりが強固な人ほど、健康状態が良好で寿命も長いのだとか。対して、孤独を甘んじて受け入れる人は幸福感が少なく、中年期での健康及び脳機能の衰えも早くなり、寿命が短いという傾向があるのだそう。では、「繋がりが強固」とはどういうことなのでしょうか。ウォールディンガー氏によると、友達の数でもなく、生涯のパートナーの有無でもないとのこと。重要なのは、意見の不一致があったくらいでは揺らがないような「信頼できる人間関係が築けているかどうか」なのだと言います。

良い人間関係といっても、波風がない訳ではありません。ある80代のカップルは、明けても暮れても小言を言い合っているかも知れませんが、お互い頼り合えると感じている限り、彼らが苦難に遭遇した時、口論しても後々まで残るという事はありませんでした。

(引用元:TED|人生を幸せにするのは何? 最も長期に渡る幸福の研究から 句読点は筆者にて付与)

友達、職場の同僚、上司、家族やクラスメイト、SNS上でのつながりなど、人間関係と一口にいっても多様な形態がありますよね。その中でも特に重要なのは、一緒に映画や釣りなどの趣味を楽しんだり、朝になるまで語り明かすことができたりするような関係だということです。あなたの周りにそんな人はいますか? もしいるなら、定期的に話す機会を作ったり、誕生日をお祝いしてあげたりして、関係が途切れないように努力しましょう。もしかしたら、その人があなたの人生を幸福にする鍵となる人物かもしれませんから。

楽観的な説明スタイルを持つ

たいていの人は、挫折を繰り返すと、無力感から熱意を失ってしまいがちです。無力感に関する世界的権威であるマーティン・セリグマン氏は、そういう状況でもへこたれない人たちに共通するある特徴を見つけました。それは苦難の説明の仕方が前向きだということです。

例えば、仕事でミスをして上司に叱られたとします。「次もうっかりして同じミスをしてしまうかもしれない、もしそうなったらまた叱られてしまう」と思う人は悲観的な説明スタイルをもっていると言えます。一方で、「今回のミスの原因はこれだから次は気をつけよう。このミスをなくせば仕事のスピードもあがるし精度も上がるだろう」と考える人は楽観的な説明スタイルを持っていると言えます。

また反対の例として、物事がうまくいった時、悲観的な説明スタイルをもつ人は自分の力で成し遂げたことではないと考えます。他人の努力のおかげに過ぎず、次もうまくいくとは限らないと発想するのです。一方楽観的な説明スタイルをもつ人の場合、うまくいったのは自分の力によるところが大きく、今後も絶対うまくいくと考えます。

セリグマン氏によると、悲観的説明スタイルをもつ人よりも楽観的説明スタイルをもつ人のほうが生産性が高いのだといいます。それを裏付けるのが、生命保険会社大手のメットライフ社にて行われた、説明スタイルと営業成績に関する調査の結果です。

1980年代後半、メットライフ社はセールスマンの高い離職率に悩まされていました。そこで、セリグマン氏の助言に従い、説明スタイルのテストを行い、楽観的説明スタイルをもつ人だけで特別チームを組織しました。すると、その特別チームの翌年の営業成績は、他のチームより21%上回り、さらに次の年には57%上回ったというのだから驚きです。

ここまで読んで、自分はどちらかというと悲観的説明スタイルだな……と思った方もいるかもしれませんね。でも気を落とす必要はありません。楽観的説明スタイルは訓練で身につけることができます。コツは、ネガティブな思考が出てきた時に「本当にそこまで悪い状態か?」と自問し、「そうではない」と反論することです。自分の中で議論を行うようにして、ネガティブな考えを徐々にポジティブな考えに変えていきましょう。

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コントロールできないことは無視する

突然ですが、ここ最近の一番の悩みを思い浮かべてみてください。 真っ先に思い浮かんだその悩みは、自分でコントロールできるものですか?

もし、コントロールできそうにないことなら、さっぱり無視してしまったほうがいいでしょう。私たちは、自分以外の誰かが取る行動に対してストレスをためたり、どうなるかわからない未来を思って不安になったりもします。しかし、他人をコントロールすることはできませんし、未来を覗き見ることもできないのです。

元メジャーリーガーの松井秀喜氏が現役時代に受けたインタビューで、こんな印象深い発言がありました。

ヤンキース入団直後に不振だったころ、厳しいニューヨークのメディアについて聞くと、松井は「気になりません。記者が書くことは僕にはコントロールできません。コントロールできないことには関心を持ちません」と答えた。

(引用元:朝日学情ナビ|「コントロールできないことは気にしない」松井、イチローの言葉を就活に生かす

イチロー氏も同じような発言を残しています。

打率争いについて尋ねたとき「愚問ですね。他の打者の成績は僕には制御できない。意識することはありません」と話した。

(引用元:同上)

自分の力で制御可能な範囲とそうでない範囲をはっきり分けて、どうにかできることに最大限の力をそそぎ、どうにもならない部分は気にしない。他のトップアスリートからも、よく似た意識を感じることができますよね。

また、こういった意識をもつことは、心理学的に見て合理的であるということが分かっています。ある研究で、仕事におけるコントロール感覚が生産性や幸福感、健康などに及ぼす影響を調べたところ、コントロール感覚が高いほど、あらゆる面での満足感が大きいことが明らかになりました。興味深いのは、それらの影響は、その人が実際にどれくらいコントロールできているかではなく、どれくらいコントロールできていると思っているかに関係するという点です。この点から見ると、トップアスリートの意識の持ちようは研究成果によく合致していますよね。自分が主人公であるという意識をもつために、自分のコントロールの及ぶ範囲を明確にしているのだと理解することができます。

*** ついつい頑張りすぎて疲れてしまうことってありますよね。思い当たる節がある人は、ぜひ3つの心がけを試してみてください。みなさんの日常が少しでも彩り豊かなものになり、より生産性の高いものになれば幸いです。

(参考) LOG WORKS|若者の価値観についての調査  朝日学情ナビ|「コントロールできないことは気にしない」松井、イチローの言葉を就活に生かす  内閣府大臣官房政府広報室 世論調査|平成26年度 世論調査 国民生活に関する世論調査 2 調査結果の概要 図23 TED|人生を幸せにするのは何? 最も長期に渡る幸福の研究から The Center for Positive Innovation |楽観と悲観 ショーン・エイカー著、高橋由紀子訳(2011),『幸福優位7つの法則 仕事も人生も充実させるハーバード式最新成功理論』,徳間書店.

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