近年、心理学とコラボレーションした学問分野の研究が盛んです。心理学とはその名のとおり人の心理を考える学問。人のすべての活動に関わることなので、当然さまざまな領域とリンクします。

今回は「行動経済学」という比較的新しい学問領域を例に、心理学を学ぶこと、知っておくことのメリットをお伝えします。

五郎丸ポーズとは?

ラグビー日本代表の五郎丸歩選手の「プレ・パフォーマンスルーティーン」に注目が集まりました。これはラグビー日本代表メンタルコーチの荒木香織氏が生み出したと言われていますが、彼女はスポーツ心理学の准教授という顔も持ち合わせています。あのポーズをきっかけに、心理学がスポーツにも使われていることを知った方も多いのではないでしょうか。荒木氏のブログによると、このポーズの目的は

1.何度も動作を練習することにより、それに続くプレー(五郎丸選手の場合はキック)をスムーズに行うことができる。
2.動作に集中することにより外的(歓声・相手の動き)及び内的(不安・心配)な障害を取り除くことができる。
3.動作をおこなうことによりストレスの軽減につながる。
4.動作を通じて、それに続くプレーのリハーサルをするため、プレーの修正をすることができる。(キックをミスしたら、次のキックの成功のため動作の途中で調整をする)。

引用元:スポーツ心理学deメンタルトレーニング

とされています。スポーツは個人戦・チームスポーツに限らず、公式の試合で最高のパフォーマンスを発揮することが求められます。プロ選手や五輪候補ともなればひとつひとつの動作はミリ単位にデリケートであり、またそれが求められる局面も様々。

スポーツ心理学とは、パフォーマンスを安定させるためのメンタル面からのアプローチで、プレ・パフォーマンスルーティーンはその中のひとつの手法と言えるでしょう。今回は活躍のタイミングとポーズの特異性で五郎丸選手に注目が集まりましたが、イチロー選手の打席への一連の流れや、クリスティアーノ・ロナウド選手がプレイスキック前にする仁王立ちなども同様だと考えられます。

yoko815
苦手の文法を克服! TOEIC815点を獲得し、国際会議でスピーチ。英語力を大きく変えた3ヶ月の科学的トレーニング。
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行動経済学という新たな研究分野

我々の日常生活により根ざした「行動経済学」という学問分野があります。
従来の経済学が「人間はいつも合理的な選択をする生き物である」という前提で考えられているのに対して、「実際、人はいつも合理的な振る舞いをするとは限らないのではないか?」といった疑問から生まれたといわれています。

例えば買い物する時、チラシで安いお店を見つけることができても、それぞれの商品をいつも最安値で購入することは実際にはむずかしいことですね。
また、売値では大手ショッピングモールが安くても、商店街の馴染みの店がサービスしてくれることで、安く感じて購入することもあるでしょう。

人は常に合理的に行動することは不可能です。だから、取り巻く環境や感情まで踏まえて考えるべきだ、という学問が「行動経済学」です。
そして「完全に正しいかと言われれば疑問が残るが、感覚的に納得はできる」という理論がいくつも提唱されており、実験と検証が日々行われています。今回はその中でも非常に代表的な3つの理論をご紹介します。

・プロスペクト理論
プロスペクト理論とは、「人間は100の利得よりも100の損失の方が2倍~2.5倍大きく感じてしまう」というもの。
例えば「ジャンケンで勝ったら1万円もらえて負けたら1万円支払う」というゲームを考えてみましょう。みなさんならこのゲームに積極的に参加するでしょうか? おそらくほとんどのみなさんは躊躇するのではないでしょうか。これがもし「ジャンケンで勝ったら1万円もらえて、負けたら5000円支払う」であればどうでしょうか?リスクの好みはひとそれぞれですが、先ほどよりは参加する気になりませんか?

・アンカリング効果
アンカー(anchor)とは船のイカリを意味しており、何か物事を考えるフックとなるモノが人の意思決定に影響を与えることを言います。例えばショッピングに行ったとき、商品の価格を見てみなさんはどう思うでしょうか。まず第一の基準としては、自分の予算があります。財布に2万円しか入っていないとなると1万円も高く感じますが、5万円あると印象は違うのではないでしょうか。人は数字での判断を求められる際には、何かに基準を求めるものなのです。

・フレーミング効果
フレーム(枠)が変わることで、受ける印象が変わる効果。
例えばひとつ10000円の商品について、「25%割引」と「2500円キャッシュバック」、さらに「3つ購入で1つサービス」などは企業にとっては実質的に同じこと。しかし消費者が受ける印象は大きく違います。

koudou-keizai

日常生活でも実用可能

ご紹介した行動経済学は、現在進行形で発展途上の学問です。
どれも我々の日常生活から納得できたのではないでしょうか。
日常でおこるさまざまなことについて心理学の側面から考えてみることで、さらに理解が深まります。
ぜひ書籍などで触れてみてください。

《参考文献》
鈴木敏文の実践!行動経済学 | 鈴木敏文/勝見明 | 朝日新聞出版
行動ファイナンスの実践 投資者心理が動かす金融市場を読む | James Montier | ダイヤモンド社

《参考URL》
スポーツdeメンタルトレーニング
YOMIURI ONLINE | 達人たちの本棚 ラグビー日本代表メンタルコーチを務めた荒木香織さん