メールにひそむ3つのムダを省け! 仕事効率が圧倒的に高まる「メール対応術」——水口和彦『仕事も学びも効率化 目からウロコの時間管理術』第9回

突然ですが、質問です。

パソコンに向かい、WordやPowerPointで作業をしているときに、画面の右下あたりに「〇〇宛ての新着メッセージを受信しました」という表示が出ているのに気づきました。メールソフトの受信通知の機能です。あなたはこの受信通知を見たとき、次にどんな行動を取りますか?

この質問、ほとんどの方が「すぐにメールを確認する」と答えます。確かに、メッセージを受信したとわかると、何のメールなのか気になりますよね。確認しないでいる方が難しいくらいです。そして、メールを確認して、急ぎのものには返信して、急がないものは後回しにして置いておく。そうやって最初の資料作成に戻る……という方が多いんですね。

これらは何気なくやっている当たり前の光景ですし、私も以前はやってました。しかし、このやり方を「効率」の観点で見ると問題があります。「ムダな行動」が多いんですね。

どんなムダがあるのか? そしてベストなのはどんなやり方なのか? 紹介していきましょう。

メールの中に潜む「3つのムダな行動」

仕事に集中しているときにメールに中断させられると、私たちの集中は途切れ、それまでに頭の中で考えていたことの一部が必ず失われます。これは他の記事でも紹介されている「ワーキングメモリー」と関係があります。ワーキングメモリーの容量は意外に小さいため、メールに気を取られているうちに、その前に考えていたことを忘れてしまうんです。

そのため、元の作業に戻っても、すぐには元のペースで作業することはできません。それまでにやっていたことや、次にやろうとしてたこと、いろいろ考えていたことを「思い出す」ための時間が必要になります。

たとえば、ソフトウェア開発者を対象にした、College of Computing Georgia Institute of Technologyの調査では、中断をはさんで作業を再開した場合、中断前と同等のペースに回復するまでにある程度時間がかかるとわかっています。それが1分未満ですんだケースは1割程度しかなく、数分間、あるいはそれ以上の時間が必要なことが多いそうです。たとえ数分の遅れだとしても、1日に何回も(あるいは十数回も)起こると、仕事の効率は大きく下がります。

しかも、このような「思い出す」ことは、メールで中断しなければ必要なかった行動、つまり、「ムダな行動」です

ムダな行動はこれだけではありません。何かの作業中にメールを確認する場合、たいていは「早く元の作業に戻ろう」と思っています。ちょっと焦っているわけですね。ですから、その場で返信するのは急ぎのメールだけです。つまり、メールを確認しながら、「これはすぐ返信しようか?」「いや、後でもいいか?」と迷うことが多いんです。

この「迷う」のも「ムダな行動」です。もし落ち着いてメールに向かうことができれば、返信を後回しにしなくてもいいし、「迷う」ことなく処理していくことができますからね。

まだあります。「急ぎではないから」と返信を後回しにしたメールは、その後どうするでしょうか? 後で「返信しないといけないメールがあったはず」と思い出し、受信トレイの中を探すことになりますね。この「探す」のも「ムダな行動」のひとつで、この中で最も長い時間を使う可能性があります

なぜなら、私たちはすべてのメールのことを完全に覚えているわけではありませんから、「返信しないといけないメールがあったかな?」と、あいまいな記憶を頼りに受信トレイの中を探すことになります。これに時間がかかるんですね。受信トレイを眺める時間が多い人は要注意です。

最後に、そうやって見つけたメールは、あらためて読み直してから返信しますよね。読み直すというのは、メールの内容を「思い出す」という行動です。「思い出す」がまた出てきましたね。返信を後回しにしたせいで同じメールを2回読むことになるわけで、まさに二度手間。これも「ムダな行動」です

このように、最初に紹介した何気ない行動は、本来なら必要なかったはずの「迷う」「探す」「思い出す」といったムダな行動を生む原因になっているんです。

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メールの受信通知機能はオフにしよう

では、どんなやり方がいいのか? という話をする前に、ちょっと考えてみましょう。

この連載の第5回「計画通りいかないのが仕事。それでも計画は役に立つ」では、突発的にやってくる「予定外の仕事」の話をしました。仕事に集中しているときに「予定外の仕事」が飛び込んできて、仕事を中断させられる……。そういうことが多いと、仕事の効率は確実に下がりますし、「仕事に集中できない!」とイライラすることもあります。

ただ、それらの「予定外の仕事」は向こうからやってくるものですし、自分で簡単にはコントロールできません。仕方ない面もあるんですね。

一方、メールの場合、自分の仕事を中断してしまっているのは、自分自身です。不思議なもので、他人に仕事を中断させられるとイライラする人も、メールのせいで仕事を中断することには無頓着であることが多いです。無意識のうちにメールに振り回されているんですね。まずはこれを変えていかなければいけません。

そのためには、仕事を中断するきっかけになるメールの受信通知機能をオフにするのがおすすめです。これはメールソフトで設定することができます。

メールの受信通知をオフにすると、自分のタイミングでメールを見ることができます。おすすめは仕事に一区切りがつくまではメールを見ない。一区切りついたところでメールを確認するというやり方です。

一区切りというのは、ひとつのタスクが終わったところでもいいですし、複数のタスクを終わらせたときでも構いません。ちょっと長いタスクの場合は、タスクの中で一区切りついたときでも構いません。その間隔は、私の場合で30分から90分くらいが多く、長くても2時間程度です。この程度なら「メールの返信が遅い」とは言われません。普段も会議などでこの程度の時間があくことはあるわけですから、この程度の遅れは許してもらいましょう。

このように、メールソフトに通知されるのではなく、自分のタイミングでメールに切り替える。これだけでもパソコン仕事の効率は確実に上がります。

その場で返信するか、タスクとして書きとめよう

また、自分のタイミングでメールに向かうようにすると、メールにしっかり集中できるようになります。メールと他の仕事の切り替えを、自分でメリハリをつけてコントロールできる感じです。

そうなると、メールの返信を後回しにせず、その場で返信できるようになります。そのメールが急ぎかどうかは問いません。どうせ後で返信するのであれば、いまやってしまう方が効率的です。すぐ返信すると決めれば「迷う」時間を減らせますし、後で「探す」ことや「思い出す」ことに時間を取られなくてすみます。

なかには、どうしてもその場で返信できないメールもあると思います。何か作業をしてから、あるいは誰かと相談してから返信するようなメールです。このようなメールは、自分のタスクとして書きとめておきます。つまり、「その場で返信するか、タスクとして書きとめるか」の二択で行動するわけです。

この二択で行動できるようになると「返信しないといけないメールがなかったかな?」と受信トレイを探すことがなくなります。メールソフトを開いている時間が少なくなり、自分のタスクに使える時間が増えるんですね。やってみると、いままで意外に多くの時間をメールに取られていたことが実感できると思います。ぜひ試してみてください!

■連載『仕事も学びも効率化 目からウロコの時間管理術』一覧はこちら time-management-article-banner

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