夏休みに入り、どこの書店に行っても新潮社・集英社・KADOKAWAの夏の文庫フェアを見かけます。「この文庫本は面白い!」というオススメのポップが山ほどあって、結局どの本がよいのかわからないというひとも多いのではないでしょうか。

そんななか、ぼくがはじめの1冊に推すのはこちらです。

『岩波文庫解説目録』

非売品で、正確に言うと文庫本ではなく冊子なのですが、岩波文庫と同じサイズなので、「最強の文庫本」として紹介いたします。これは、発売されているすべての岩波文庫のタイトル、著者、そして5行での解説が掲載された冊子です。書店の岩波文庫コーナーでぶら下がっているのを誰しも一度は見たかけたことがあると思います。あれです。

badge_Columns_100解説目録には何が書いてある?

岩波文庫といえば、古今東西の古典的作品を収録していて、歴史の教科書でしか見たことのない本まで揃っている文庫です。つまり、この目録一冊にありとあらゆる歴史上の重要な書物がリストアップされていると言っても過言ではありません。それがすべてたったの5行で紹介されているのだからとてもお得。たとえば

『古事記』(倉野憲司校注)
八世紀初めに成立した現存するわが国最古の歴史書・文学書。数多い口伝えを天武天皇が稗田阿礼に命じて覚えさせ、元明天皇が太安万侶に書きとめさせたもの。天地開闢に始まり、伊邪那岐命・伊邪那美命の国生み神話、須佐之男命の大蛇退治等、神代より推古天皇に至る皇室の系図を中心に、わが国古代の神話・伝説・歌謡を多く収録。

大変勉強になりますね。しかも簡潔。『古事記』というタイトルは知っていても、ここまで知っているという人はあまり多くありません。

スウィフト『ガリヴァー旅行記』(平井正穂訳)
子供のころ誰しも一度はあの大人国・小人国の物語に胸を躍らせたにちがいない。だが、おとなの目で原作を読むとき、そこにはおのずと別の世界が現出する。他をえぐり自らをえぐるスウィフト(一六六七―一七四五)の筆鋒は、ほとんど風刺の枠をつき破り、ついには人間そのものに対する戦慄すべき呪詛へと行きつかずには止まない。

えぇー、『ガリヴァー旅行記』って、そういうお話だったの!? そうです。当時のイギリスを始め、人間に対する風刺小説で、歴史を学んでから読むともう愉快なファンタジーではありません。スウィフトの皮肉がどれくらいわかるか、再読してみたくなりますね。

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badge_Columns_100解説目録の入手方法

なんとこの解説目録、無料で手に入ります。

1.書店でもらう
書店に行くと、無料でもらえたりまれに「ご自由にお持ちくださいコーナー」に置かれていることがあります。しかし、最近はあまり見かけなくなりました。
神保町にある岩波ブックセンターのカウンターでお願いすると確実にもらえます。

2.岩波書店に申し込む
はがきを送るか電話して申し込むと無料で郵送してくれます。
住所:〒101-8002 東京都千代田区一ツ橋2-5-5
電話番号:03(5210)4111

3.PDFでダウンロードする
岩波文庫編集部のホームページから最新版の目録をダウンロードすることができます。
しかし、書名や著作者名で索引を調べたり、パラパラとめくって気になる本を見つけるのはスマホやタブレット向きではありません。紙で入手されるのをおすすめします。

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特に日本史・世界史選択の方には「文化史」というひたすら作者と作品名を暗記しなくてはならない大変なジャンルがあります。それなのに、教科書を見ても一冊一冊について内容の説明はほとんどありません。中身も知らずに本のタイトルをただ記憶するのは苦行に近いものがあります。そんなときでも、「岩波文庫解説目録」は5行で解説してくれます。しかも無料で!


東京大学大学院 総合文化研究科 超域文化科学専攻 表象文化論 修士課程。私立武蔵高等学校卒業。19世紀から20世紀にかけての美術とグラフィック・デザインを研究する傍ら、自らもデザインの仕事を手がけている。東京大学立花隆ゼミ+立花隆『二十歳の君へ』など。