寝る時間がない=仕事ができない!? 寝不足は「できる人」が持つ5大能力を奪う。——友野なお『できる大人の「やすみかた」』第4回

「削る時間のプライオリティといえば睡眠時間」という方は多いと思います。私たち日本人は、つい「眠る時間を削って働こう」という意識が働きがちですし、ともすると睡眠時間は仕事をバリバリするうえでもったいない時間と思っている方も少なくないでしょう。

少し前では「忙しくて寝る時間がない」というのが挨拶代わりのように使われ、そしてそれがカッコイイという誤った認識さえ浸透していました。しかし実際は、「私は生産性が低くて仕事ができません」と言っているのと同じ。カッコイイどころか、カッコ悪いことなのです。

実は、「休息」と「活動」は真逆のことであるように思えて、同じベクトル上にあるもの。「寝不足の状態だと頭がぼーっとしてはかどらない」といった経験、皆さんにもありませんか?

オーストラリアで行われた実験では、睡眠不足ではアルコール摂取時と同じように作業能力が低下するという結果が報告されています。1)つまり、寝不足ではアルコールを飲みながら酔っ払って仕事をしているのと同じことになってしまうのです。これでは仕事の能率が悪くなって当然ですよね。

実は、寝不足は「できる人」がもっている5大能力を奪うことがわかっています。

「集中力」が奪われる!

「できる人」が共通して備えている武器といえば、「集中力」「注意力」「判断力」「コミュニケーション力」そして「クリエイティブ力」の5つです。

まず、集中力が高ければ、高い生産性で業務を遂行することができ、無駄な残業時間を減らすことが可能になります。すると、自分のためや家族との時間を十分に持てる、いわゆるライフワークバランスがとれるようになるので、ストレスが軽減されて質の高い眠りが得られたり、必要な睡眠時間が確保できたり……。そして、それがまた翌日の高いパフォーマンスにつながるという「良」の循環が生まれるのです。

米ペンシルベニア大学医学部などの研究チームがある興味深い実験を行いました。1週間、睡眠時間を8時間とる群、6時間とる群、4時間とる群の3つに分け、認知機能レベルや反応の正確性を調べた結果、8時間睡眠群はミスが少なく認知機能にも問題ないという結果でした。しかし、睡眠時間を4時間に制限した群は1日徹夜したときと同等レベルまで認知機能が落ちていることが判明したのです。仮に4時間睡眠が2週間続くと丸2日間徹夜した状態になり、さらに6時間の睡眠でも2週間続いてしまうと丸1日徹夜したときと同じレベルの認知機能になることが明らかになりました。2)

「注意力」が奪われる!

「注意力」が維持されれば、単純なミスから大きな産業事故まで、未然に防ぐことが可能になります

実際に、睡眠問題によって仕事上の怪我の発症率は1.6倍高くなるという報告もあるほど。3)さらに、睡眠不足と安全性に関する調査においても、24時間勤務のシフトが組まれた医学実習生の方が、16時間勤務のシフトが組まれた実習生よりも、重大な過ちを犯す可能性は36%も高く、さらに患者の死につながる過失を犯す確率が300%高くなることが報告されているのです。4)注意が散漫になることで、場合によっては人命を脅かす事態にもなり、決して軽視できません。

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「判断力」「コミュニケーション力」が奪われる!

正しく適切な「判断力」があることも、「できる」人にとっては欠かせない能力のひとつ。

4日間にわたり行われた睡眠不足と倫理意識の関係を調べたアメリカの調査では、前夜の睡眠時間が長いほど倫理意識は高いということが判明したと同時に、睡眠時間が長いと他人の非倫理的な行動に対して敏感になるということも明らかになりました。5)誤った行動や判断をせずに、周囲との信頼関係を保っていくためにも、やはり睡眠が大事であることがわかります。

また、職場のソーシャル・キャピタルを維持するだけでなく、ここぞというタイミングで相手を説得する場面においては、高い「コミュニケーション力」も必要です。睡眠不足で頭の回転が悪いと「気の利いたボキャブラリーが出てこない!」なんていうことにもなりかねません。

ここぞというタイミングでの勝負を逃さないためにも、夜の睡眠で脳の大掃除をして翌日に備えましょう。

「クリエイティブ力」が奪われる!

新商品や新サービスの開発、プロモーション、イベントなど、あらゆるビジネスシーンにおいて求められるクリエイティブ力もまた、適切な睡眠時間の確保により向上することが世界的に権威のある科学雑誌「ネイチャー」で報告されています。6)

斬新な発想力や社会に新たな価値を創造するようなひらめき力を養うためには、日々の快眠を大切にすることから始めるのがベストです。

*** これまでのさまざまな研究から、きちんと眠ることが翌日のパフォーマンス向上につながることが明らかになっています。睡眠の質は健康の質であり、パフォーマンスの質であり、日々のクオリティの質そのものです。

スリープマネジメント能力こそ、ビジネスパーソンが身につけるべきスキル。眠りのスキルをビジネススキルのひとつとしてとらえ、しっかりと眠れる力を育んでいきましょう。

(参考) 1)Dawson D, Reid K. Fatigue, alcohol and performance impairment. Nature. 1997 Jul 17;388(6639):235. 2)Van Dongen HP, Maislin G, Mullington JM, Dinges DF. The cumulative cost of additional wakefulness: dose-response effects on neurobehavioral functions and sleep physiology from chronic sleep restriction and total sleep deprivation. Sleep. 2003 Mar 15;26(2). 3)Uehli K, Mehta AJ, Miedinger D, Hug K, Schindler C, Holsboer-Trachsler E, Leuppi JD, Künzli N. Sleep problems and work injuries: a systematic review and meta-analysis. Sleep Med Rev. 2014 Feb;18(1):61-73. 4)Lockley SW, Barger LK, Ayas NT, Rothschild JM, Czeisler CA, Landrigan CP; Harvard Work Hours, Health and Safety Group. Effects of health care provider work hours and sleep deprivation on safety and performance. Jt Comm J Qual Patient Saf. 2007 Nov;33(11 Suppl):7-18. 5)Barnes CM, Gunia BC, Wagner DT. Sleep and moral awareness. J Sleep Res. 2015 Apr;24(2):181-8. 6)Wagner U, Gais S, Haider H, Verleger R, Born J. Sleep inspires insight. Nature. 2004 Jan 22;427(6972):352-5.

■連載『眠りのチカラで人生を変える できる大人の「やすみかた」』一覧はこちら yasumikata-bottom

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