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立春を過ぎてもまだまだ寒い日が続いていますね。あまりの寒さで外に出られず、あまつさえ布団やこたつからすら出られないという人も多いはずです。そんな季節だからこそ、あえて布団から出ずに心が温まる小説を読みませんか?

今回は、ほっこりした気持ちになれる小説5作を紹介します。

道尾秀介『カラスの親指』

道尾秀介著(2011),『カラスの親指 by rule of CROW’s thumb』,講談社.(Amazon)

詐欺師として生計を立てている、人生に敗れたおじさん2人が主人公。ある日1人の少女がそのコンビに加わり、同棲することに。主人公は、彼女との出会いをきっかけに、かつて借金問題で揉めたヤクザに対して復讐を始めます。

ネタバレになってしまうためあまり詳しくは書けませんが、随所に散りばめられた伏線はすべて綺麗に回収され、最後は感動なしには読めません。途中の展開もものすごくハラハラさせるもので、エンターテイメント性文句無しの傑作です。

めくるめく急展開に、読者は鮮やかなマジックショーを見ているような気分にさせられ、一気に読めてしまいます。寒い日の朝、布団から出ずにこの小説を手に取れば、そのまま布団から出ることなく読破してしまうことでしょう。

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森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』

森見登美彦著(2008),『夜は短し歩けよ乙女』,角川グループパブリッシング.(Amazon)

独特の言い回しと癖の強い文章のためもしかしたら少し読みづらいかもしれませんが、山本周五郎賞のほか本屋大賞2位にも輝いた、森見登美彦氏の名作です。

京都で学生をしている「先輩」は「黒髪の乙女」に密かに恋心を抱き、彼と彼女の周りを取り巻く様々な珍事に巻き込まれていきます。外堀を埋めに埋め、埋め続けている彼に対して、彼女はなんとも思っていないそぶりですが、テンポよく展開される物語の中で果たして彼らは……。

「おともだちパンチ」「偽電気ブラン」「詭弁踊り」「赤玉ポートワイン」「二足歩行」といった、どんなものか想像もつかない固有名詞の面白さが作中で炸裂し、自然と笑いがこみ上げてくるうえ、最後の展開も温かいため、冬にぴったりの小説です。

伊坂幸太郎『フィッシュストーリー』

伊坂幸太郎著(2009),『フィッシュストーリー』,新潮社.(Amazon)

『動物園のエンジン』『サクリファイス』『フィッシュストーリー』『ポテチ』の4作品をまとめた短編集になっています。

伊坂幸太郎の小説の中でよく登場する泥棒、黒澤さんが今回も活躍するので、黒澤ファンの人には垂涎ものでしょう(すでに読んだ方も多いと思いますが)。

私が特に気に入っている『ポテチ』では、特に取り柄のない空き巣の今村と、高校から鳴り物入りでプロ野球選手になった尾崎をめぐる心温まるストーリーが展開されます。

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宮部みゆき『ステップファザー・ステップ』

宮部みゆき著(1996),『ステップファザー・ステップ』,講談社.(Amazon)

盗みを働こうとして家に落ちてきたプロの「泥棒」は、その家で暮らす双子の兄弟に捕まって彼らの父親をやることになります。彼らの両親は双方同時に別々の相手と駆け落ちしたため家には誰もいません。そんな境遇に情を抱いてか、彼は次第に兄弟と絆を深めていきます。

ライトノベルのように気軽に読み進められますし、ストーリーも温かく微笑ましいので、宮部ファンからも大人気の小説です。

人肌恋しい季節だからこそ、親子の絆に感動します。

重松清『流星ワゴン』

重松清著(2005),『流星ワゴン』,講談社.(Amazon)

38歳の主人公は、妻はテレクラにどっぷりはまり、息子はぐれて不登校といった家庭環境の中、会社をクビになります。そして、ずっと仲の悪かった父親が余命いくばくかというところになり人生に絶望していた矢先、ワゴンを運転する親子に出会います。主人公にとって大切な場所に連れていくというこのワゴンに乗ると、今までの人生で重要だった過去へとタイムリープしました。

やり直しを誓った彼に残酷な現実が押し寄せる中、死の淵にいる父が彼と同じ38歳の姿で登場し……。

重松清氏の小説は文体が平易なため読みやすく、小説が苦手な人でもすんなりその世界に没頭することができます。

父親と息子をテーマに書かれたこの小説は、男なら誰しも共感し涙する物語だと思います。夢と現実についての考え方を見つめ直す機会をくれるこの本は、年度の終わりを控えた冬にぴったりでしょう。

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寒い寒いこの時期だからこそ読みたくなる、心が温かくなる小説を集めてみました。最後の『流星ワゴン』だけは涙を誘う少し悲しいお話かもしれませんが、どれも愛をテーマにした心打つ作品ばかりです。

布団やこたつにくるまって、ぜひ読んでみてください。


東京大学文科三類所属。磐田南高校卒業。4歳からサッカーとピアノを始める。大学ではスペイン語を学んでいる。三島由紀夫とMr.Childrenをこよなく愛する。将来はスペインに住んで日がな一日レアルマドリードの試合を見て天寿を全うしたい。