Portrait Of A Female Student

北里大特別栄誉教授の大村智さんが、ノーベル生理学・医学賞を受賞されました。生理学・医学賞の分野では、1987年の利根川進・米マサチューセッツ工科大教授、2012年の山中伸弥・京都大教授に続き3人目の受賞です。
大村さんの受賞理由は、「寄生虫病に対する新しい治療法の発見」でした。
受賞された研究の内容ついてご紹介します。

badge_columns_1001711微生物研究への熱心な取り組み

大村さんは、微生物からどのような有用な物質を得ることができるのかについて研究を続けてきました。45年間にわたる研究生活の間に発見した有用な新規物質の数は、これまでに類のない450種と言われています。

「人のために少しでもなにか役に立つことはないか、微生物の力を借りて何かできないか。それを絶えず考えております」

[引用元:Jcastニュース|「微生物の力借りただけ」「人のために」… 大村智氏の謙虚で誠実な言葉に日本中感動]

今回受賞の理由となったのは、放線菌と呼ばれる、土壌に生息する微生物についての研究でした。
放線菌は、抗生物質を作り出す微生物として知られており、これまでも多くの農薬や動物薬などに用いられてきました。
大村さんは、この放線菌の培養法に関してすぐれた技術を持っており、静岡のゴルフ場の近くで見つけた土から、「エバーメクチン」と呼ばれる、寄生虫の駆除に高い効果を持つ化学物質を生成することのできる放線菌を発見したのです。

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badge_columns_1001711業界では画期的だった産学提携で研究費の確保

1973年に北里研究所からアメリカのウエスレーヤン大学に留学していた大村さんは、アメリカの製薬会社のメルク社と提携を結びます。このように大学等の研究機関と企業が提携を結ぶことは産学提携と呼ばれ、当時の日本ではまだ取組みも少なく、反対もあったと言います。
しかし、大村さんがアメリカで「大村メソッド」と呼ばれる独自の契約内容でもって行ったこの産学提携が、研究を大きく躍進させることとなったのです。

その契約内容が、新物質を発見した際の特許出願や権利化、管理はメルク社が請負い、その特許で製品が生まれた時には、その売上高に応じて、研究費を北里研究所に還元するという内容でした。
この産学提携のもと、「エバーメクチン」を改良して、「イベルメクチン」を作り、寄生虫の駆除薬として実用化しました。このイベルメクチンは、家畜動物の寄生虫駆除に非常に効果的で、ダニなどの寄生虫で衰弱していた牛も、少量のイベルメクチン1回投与することで健康を取り戻すことができたのです。(左が衰弱した牛、右がイベルメクチン投与で健康になった牛)

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(左が衰弱した牛、右がイベルメクチン投与で健康になった牛)

更に犬の感染症として知られているフィラリアも、蚊が媒介する感染症ですが、イベルメクチンを投与することで、感染を防ぐことができるようになりました。
こうした動物抗生物質の売り上げで、メルク社は20年間世界トップを走り続けることとなり、その結果大村さん達の研究所は250億円の資金を用いてさらに研究を進めることができたのです。

badge_columns_1001711「顧みられない熱帯病」に対する特効薬

大村さんたちは他の似たような寄生虫による人間の感染症も防ぐことができると考え、臨床実験を行って安全性を確認して、人間への抗生物質として次々と世に出していったのです。
その代表的な薬剤が、オンコセルカ病という失明や視覚障害を引き起こす感染症、リンパ系フィラリア症(象皮症)と呼ばれる、皮膚の肥大化などを引きおこすリンパ系の病気などに対する特効薬となりました。

これらの病気にかかる人達は熱帯地域の貧しい人々がほとんどで、研究も進んでおらず、治療薬もありませんでした。ですが、WHOがメルク社からイベルメクチンの無償供与を受けたことで多くの人々に配布することができるようになり、年間何百万人もの人々が病気から救われ、これらの病気はほどんど撲滅するまでに減ってきているのです。

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ガーナの現地調査へ行ったとき、大村先生を取り囲んで歓声をあげるアフリカの子供たち。イベルメクチンの開発者と知り、あっという間に取り囲んだという

[画像・文章引用元:YOMIURI ONLINE|ノーベル賞の大村智さん 多彩な顔持つ「日本のダヴィンチ」]

人のためにを標榜して研究を続けてこられた大村さんの研究は、これからも世界中の多くの人々や動物を救ってくれるに違いありません。

参考サイト
NHKニュース|大村さんノーベル医学・生理学賞
YOMIURI ONLINE|ノーベル賞の大村智さん 多彩な顔持つ「日本のダヴィンチ」
YOMIURI ONLINE|科学・IT|ノーベル生理学・医学賞に大村智氏…抗寄生虫薬
Jcastニュース|「微生物の力借りただけ」「人のために」… 大村智氏の謙虚で誠実な言葉に日本中感動
wikipedia|大村智
weblio|産学提携
NITEキッズ NITEってなぁに?|微生物いろいろ/放線菌


京都大学文学部所属。長野県立松本深志高校卒業。ぱんだとししまいがとても好き。在学中は京都でしか見られないししまいを見てまわりたい。