同じ説明を聞いているのに、自分とほかの人との仕事の成果に違いがあるのはどうしてだろう?
おそらく、誰しも一度は考えたことがある疑問でしょう。そんなとき、頭をよぎるのが、

「上司の教え方が自分には合わなかっただけだ。仕方がない。」
「あの人は才能があるから同じ説明でも出来が違うんだ。」

といった思い。しかし、本当にそうでしょうか? 確かにセンスや才能が違うために、仕事の成果が異なる場合もあるでしょう。しかし、同じ教えを聞いていながら自分よりも成果を出す彼らと、自分との間にあるのはそんな差ではありません。彼らとの差は、「自分の判断軸をしっかり持っているかどうか」なのです。今回は、教えを確実に自分のものにするための「教わる力」を紹介します。

何度教わっても成長できないのはどうして?

教えてもらったのに上手く成長できないのは、上司や先輩など教える側との相性が悪い、もしくはセンスや才能が影響しているといった側面も決してないとは言えません。人は「教わりたくない」「関わりたくない」と感じる上司や先輩からの言葉を積極的に聞こうとはしませんし、特別に何かを教えられなくてもセンスや才能だけで仕事をこなす人も皆無ではないからです。

しかし、『すべての「学び」の前に鍛えるべきは、「教わる力」である。』の著者である牧田幸裕さんは、その本の中で「努力しても成果が出ない人は、みな共通して『教わる力』を持っていない」と語ります。

では、その「教わる力」とは、いったいどのような力なのでしょうか?

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「英語が聞けない」を克服! 外国人上司と仕事するまでに。TOEIC®でも900点獲得。
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「教わる力」とは、教えを取捨選択できること

牧田幸裕さんが言う「教わる力」とは、自分の中に判断軸を持ち、自分に必要な情報を取捨選択できることなのだそう。

「教わる力」とは、自分の判断軸を作ることであり、取捨選択をできるようになることである。それがなければ、いろいろな情報に触れても単なる視点のサンプルが増えるだけ。確固たる判断軸があってはじめてほかの視点との距離が比較でき、クリティカルなポイントが明確化する。

(引用元:PRESIDENT Online|『すべての「学び」の前に鍛えるべきは、「教わる力」である。』牧田幸裕著

例えば、あなたがある問題集の知識を完璧に吸収しようするとします。このとき、2、3回連続で正解できた問題を、さらに何度も解く必要はありませんよね。その問題を解くために必要な知識は既に持っているからです。逆に、何度も間違えている問題こそ、覚えるまで解かなくてはならないはずです。このように既にできていた問題を無視して、解けなかった問題を重点的に勉強すると、効率よく問題集にある知識を吸収することができます。

仕事に関しても同じことが言えるでしょう。
自分に必要な情報を選び、必要のない情報を切り捨てることができれば、効率的に教えを自分の力にできるのです。ただ仕事に関しては、問題集のように明確な答えがありません。そのため、必要かそうでないかを正しく判断するために、自分の判断軸を持つ必要があるのです。

自分の判断軸を作ろう

何もない状態から自分の判断軸を作り上げるためには、自分が尊敬する人や理想に近い人を参考にしたり、マネてみたりすると良いのだそう。なぜならば、それにより“無”だった基準が明確に形作られるからです。

お笑いタレントであると同時に芥川賞作家でもある又吉直樹さんは、文藝春秋のインタビューで、本を選ぶとき「芥川賞の選評が僕の物差しだった」と話します。

高校時代はサッカーばっかりで周りに本好きがおる環境でもなかったし、これがおもしろいとか、次に何を読むとか、“答え合わせ”ができる相手がいなかった。自分がかっこいいと感じる芥川や太宰のような作品を、今の作家で誰が書いているのか考えてみたら、それが芥川賞なんやと。以来、本を選ぶひとつの物差しとして、受賞作も選評も注目して読んできました。

(引用元:受賞者インタビュー『芥川賞の選評が僕の物差しだった』, 文藝春秋, 2015年9月号. )

本選びの基準がなかった又吉さんは、芥川龍之介や太宰治という自分が好きな作家さんと同じような雰囲気の作品を書いている、現代の作家さんの本を読みたいと考えました。そして「芥川賞」受賞作がそれに該当すると気づいたのです。そこで、「芥川賞」の選評を判断軸にして自分の本選びをするようになったというわけです。

あなたが尊敬している人、あなたの理想に近い人は、どのような判断軸のもとに物事を取捨選択しているでしょうか。それを本で読んだり直接聞いてみたりして調べ、自分の判断軸を作る際の参考にしてしまいましょう。自分の判断軸さえできてしまえば、きっとあなたの教わる力は飛躍的に高まるはずです。

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マネするときは徹底的に

何事も中途半端は良くないとされますが、理想の相手をマネる場合も同じです。

例えば、人付き合いが上手な上司のビジネスメールをマネる場合。ただ上司が書いた文面を丸写ししたメールを送るだけでは、ビジネスの相手から好感を得られるとは限りません。なぜならばビジネスにおいてどのようなメールが理想的とされるかは、文面だけではなく送るタイミングや相手との関係など、多くの要因に影響されているからです。

人付き合いが上手な上司は、一般的に考えられるプライベートの時間を踏まえ夜にはメールを送らないという配慮があります。したがって、緊急ではない限り遅い時間にメールを送るなんてことは決してしないはず。しかしそのことに気づかずに、上司のメールの文面をただマネて深夜にメールを送ってしまったらどうでしょう。どんなにメールの文面が丁寧でも、急ぎでもないメールが深夜に届いたら誰でも多少は苛立ってしまうでしょうし、その感情が邪魔をしてせっかく送ったメールを正確に読んでくれないかもしれません。つまりたとえ上司が書いた完璧な文面をマネたとしても、配慮を怠り急ぎでもないメールを深夜に送ってしまうと、その価値を台無しにしてしまうのです。

これが意味するのは、どうせマネるなら全てをマネる必要があるということ。断片だけをマネても、理想とする術を自分のものにすることはできないのです。

そしてそれは判断軸をマネする場合も同じこと。徹底的にマネをすることによって、最初はまるでマニュアルのように参考にしていた理想の人の判断軸が、いつしか自分のものとなっていくはずです。それが、何かを学ぼうとした際の自分の「教わる力」になっていくことでしょう。

***
他人と比べて自分は成長するのが遅いと感じたときは、自分の判断軸を作りましょう。その判断軸がより良いものになれば、より効率よく成長できるはずです。ぜひ試してみてください。

(参考)
PRESIDENT Online|『すべての「学び」の前に鍛えるべきは、「教わる力」である。』牧田幸裕著
ITmedia エグゼクティブ|マネすることは「最高の創造」だ! 
シネマトゥデイ|これまでに読んだ本は約2,000冊!ピースの又吉、本のおかげで「人前でピースができるほど」明るくなれたと告白!
Discover|すべての「学び」の前に鍛えるべきは、「教わる力」である。 商品説明
牧田幸裕著(2015), 『すべての「学び」の前に鍛えるべきは、「教わる力」である。』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.
受賞者インタビュー『芥川賞の選評が僕の物差しだった』, 文藝春秋, 2015年9月号.