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「これは○○のパクリだ!」
そんな話題が度々ネット上で盛り上がり、関係者のブログが炎上する騒動が度々起きています。昨年は論文の真偽や東京五輪エンブレム問題、歌詞の盗用疑惑などが世間を騒がせました。どちらも「パクリ」とひとくくりにされ、ネット社会ならではと言える検証力で発覚しています。
ご存知の通り、「パクり」は著作権侵害という違法行為にあたり、学術論文や歌などでは「盗用」とされます。しかし、明確にどんな条件がそろえば著作権侵害なのか、ということは案外知らない人も多いかと思います。今回は「例のエンブレム」を例にとりつつ、著作権侵害とは何かということについてお話ししたいと思います。

著作権侵害が認められるための条件

著作権侵害が認められるための条件は3つあります。それは
1.「パクリ元」とされているものが著作物であり、著作者が生きているか、死後50年以内であること。(ただしTPP交渉で死後70年に変わる可能性あり)
2.類似性があること。
3.依拠性があること。
この3つを全部満たして、初めて著作権侵害と言えるのです。この3つについてそれぞれ詳しく解説していきます。

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著作物であり、著作者が生きているか死後50年以内

1は当たり前のことを言っているようですが、そもそも「著作物の定義」が難しかったりします。あるものが著作物と認定されるには4つの条件を満たす必要があります。
1つ目は「思想や感情がこもっていること。」つまり、実験の生データや気温などは著作物には当たりません。
2つ目は「創作性があること。」これは「誰がやっても(作っても)同じようなもの」は著作物ではない、と言っています。つまり数学の公式や物理法則などは著作物から外れるのです。
3つ目は「表現されているものであること。」つまり頭の中のアイディアや妄想など、どこにも表現されていないものは著作物とはみなされません。
4つ目は「文芸、学術、美術、音楽のいずれかであること。」そういうわけなので工業製品のようにこれらの範囲に含まれていないものは著作物とは言えません。

何かを作ったら全てが「著作物」と言えるかと思いきや、案外複雑ですよね。

類似性があること

次に2の類似性があることの説明をします。類似性というと、少しでも似ていれば類似性があると言えそうなものですが、そんなことはありません。
例えば音楽を例にとって考えてみると、歌詞が1フレーズ同じだったりとか、Aメロのコード進行が同じだったりとか程度では類似性ありとはみなされません。全篇にわたって似ていたり同じだったりしてようやく類似性があると判断されます。

なので「この曲とあの曲では始まり方が似ている」とかそういうレベルでは法律的には「パクリ」とはならないのです。

依拠性があること

最後に3つ目の依拠性について説明します。依拠性というのは「パクったとされる人がパクリ元とされている作品を見たり聞いたりする機会があったかどうか」ということです。このことを証明することは難しいので基本的には間接的に判断されるようです。
例えば、「某世界で一番有名なねずみ」に似た絵を書いて売ったとします。そのことがバレて著作権侵害で訴えられたときに、いくら「某世界で一番有名なネズミなんて見たことがない」と言ったとしても、あれだけの著名度があるものを見ていないはずがないとみなされ、依拠性ありと判断されてしまいます。真実見ていないとしても、です。なので何かを著作した時には、有名な作品と被っていないか、については調べておいた方が良いです。

しかし、裏を返せば、明らかに依拠していなければたまたま似ていたり同じだったりするものに関しては著作権侵害とはならないのです。世に出す際に著作権侵害にあたらないかどうかの調査は必要ですが、世界中のあらゆる著作物までは調べる必要はなさそうです。

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結局あのエンブレムは著作権を侵害しているのか

あのエンブレムは3つの条件を満たすかどうかを見ていきましょう。
まず1の「パクリ元のエンブレム」は著作物であるかどうかということですが、著作物ではないと考えている専門家が多いようです。あのエンブレムはシンプルであり、さらにアルファベットを使っていますよね。シンプルであれば「創作性」に関して疑問が残ります。また、法律の解釈では、文字は誰もが自由に使えるべきもの、とされているので例えば(基本的に)フォントには著作権がありません。そういうわけで今回の、シンプルで文字を(主役に)使ったエンブレムは著作物とはみなせないと考えられるのです。

条件1を満たさないわけなので他の条件(類似性・依拠性)をいくら満たそうが著作権侵害にはなりえません。(加えて今回の場合類似性はともかくとして、依拠性を示すことも難しいですしね。)ただし、商標権登録されていると商標権は存在しますので注意が必要です。(この件ではされていなかったようです。)
今回の場合はパクリ元とされた著作物の制作者が裁判で訴えた、という行動や過去の制作物にも類似品が多く見られた、など、他の要因も大きく絡み合っていたため大きな社会問題にまで発展してしまいました。

***
いかがでしたか。これからは「なんかあれとこれは似てるな」と思ったとしても、安直に「パクリだ」とは言わずに、3つの条件を満たしているかどうか確認してみてください。3つそろって初めて法律的には「パクリ」なのです。しかし、今回のエンブレム騒動、例え著作権侵害していなかったとしてもモラル的な問題や国益のことを考えると、変更して正解だったと思います。世界中を巻き込むイベントだからこそ、もう少し慎重に決定するべきでした。
1月9日に最終4案まで絞られた新エンブレムが日本のみならず世界中で愛されることを願います。

参考文献
文化庁|著作権テキスト(平成27年度版)
Wikipedia|著作権侵害


早稲田大学先進理工学部物理学科所属。横浜サイエンスフロンティア高校卒業。大学では理論物理学を中心に日々勉強に励んでいる。