まだブレストで消耗してるの? アイデア出しの新手法 "Qストーミング" が創造性を爆発させる

みなさんは、グループでアイデアを出したり、出たアイデアをまとめたりするとき、どのように議論していますか?

多くの場合で採用されているのはおそらくブレインストーミング(ブレスト)でしょう。しかし、こんな経験はありませんか? ブレストしてみても、鋭いアイデアなんてそうそう出ない。ブレストとはいえ、あまりに突飛なアイデアは言い出しにくい。あるいは、多種多様なアイデアが出すぎて、収拾がつかない……。

実はある研究によると、グループでのブレインストーミングは非効率だということが明らかになっているのです。それはなぜなのでしょうか? ブレストがダメなら、どのようにするのがよいのでしょうか?

今回は、グループでアイデアを出す効果的な方法について考えてみたいと思います。

グループでのブレストは無意味?

ブレストといえば、皆さんご存じの通り、有名なアイデア発想法の一つ。1950年頃に米国大手広告会社BBDOの会長であったアレックス・F・オズボーン氏が考案した方法です。グループで各人がアイデアを出しあうことによって、1人では思いつかなかった発想をできるだけたくさん引き出すことを目的としています。

しかしながら、このブレストというやり方では、効率的にアイデアを生むことができないのだそう。米シラキュース大学のブライアン・ミューレン氏らの研究からは、個人でバラバラにアイデアを考えた方がブレストするよりも効率がいいことが明らかになっています。いったいどうしてなのでしょう?

理由の1つとして考えられているのが、会話をすると思考が途切れてしまうことです。何か考えがまとまりそうだったのに、話しかけられたせいで忘れてしまったということは、おそらく皆さん経験があるでしょう。また、もう1つの理由として、他人の目を意識してしまうために、思いついたアイデアをひっこめてしまうということがあります。いくら周りを気にせずに意見を出しなさいと言われても、目上の人や専門的な人がいたら、思ったことを素直に言うのを少しためらいますよね。

とはいえ、他人の意見を聞くことによってアイデアが飛躍することも、やはり確かにあることです。また、グループなら矛盾点や欠点も容易に見つけることもできます。グループでアイデアを生み出そうとすることは、決して間違っているわけではないのです。

では、どのようにすれば、ブレストのデメリットを消して、よいアイデアを生み出せるようになるのでしょうか?

アイデアではなく、質問を出していく方が効率的

さきほど挙げたブレストの欠点を補うことができる方法が、Qストーミングという方法です。Qストーミングとは、クエスチョン・ストーミングの略で、質問を活用した教育を行うイギリスの専門機関Right Question Instituteが考案したもの。様々なビジネスや教育の現場で取り入れられ、その多くで効果が認められているのだそう。ポイントはシンプルで、テーマに沿った質問を考えることと、その問いの質を高めるようにすること。つまり、ブレストではなるべくたくさんのアイデアを出すようにしていたと思いますが、そのアイデアの部分を質問に変えるだけということです。

Qストーミングがブレストのデメリットを打ち消せる理由は2つあります。

まず、質問を考える方が、いきなりアイデアを生み出すよりもハードルが低いということ。いきなり「○○について、アイデアを出してください」といわれると、少し身構えてしまいますよね。それに対して、「○○について、疑問をあげてください」といわれると、疑問なら比較的簡単に思い浮かぶので、議論のスタートがスムーズになります。

また、私たちは質問をするとき、周囲にあまり気兼ねしません。私たちは、アイデアを出すとき、間違っているのではないか、自分は無知なのではないのか、こんな意見では恥ずかしい、などとどうしても不安になります。しかし、質問を述べるときは、そういった不安はほとんどありません。知らないからこそ質問するのですから。そのため、発言の量が多くなり、活発な会議を進めることができるのです。

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「How might we~?」の構文で考える

このQストーミングを用いて課題解決の方法を模索するときは、「How might we~?(どうすればできそうか)」という構文で考えると、よりアイデアが出やすくなります。

この構文で大事なのは、can(できる)やshould(べき)ではなく、might(できそう)であること。なぜなら、私たちの言葉には、物事を実現させる力があるからです。「言霊」という言葉もあるように、私たちは使っている言葉によって自分の能力をいつも以上に発揮できることもあれば、逆に自分を縛ってしまうこともあります。canやshouldを用いた質問では、「こんなこと本当にできるのだろうか」というネガティブな発想が私たちを失敗へと導いてしまうのです。

少し古い例になりますが、1970年代にこの「How might we~?」を使った発想法の原点となる出来事がありました。当時、P&Gが競合他社の石鹸(緑のストライプデザインと爽快感で人気を博していた石鹸)に勝つためのアイデアを必死に練っていたものの、なかなか良いアイデアが生まれなかったそう。しかし問いの立て方を変えることで成果が得られたといいます。

「どうすれば、もっと爽快になれる石鹼を実現できそうか?」という問いにたどりついた。これが創造のエネルギーに火をつけ、(中略)その後数時間のうちに「爽快感を生む」石鹼について数百ものアイデアが生まれた。 そしてチームは最終的に、「海辺の爽快感」というテーマに至った。そこから、海を思わせるやわらかなブルーと白のストライプの「コースト」が生まれ、大ヒットとなった。

(引用元:ダイヤモンド社書籍オンライン|ブレストはこんなに無意味だった!研究で判明した真実とは?

Qストーミングでも、問いの立て方に気をつければ、より素晴らしい発想につながるかもしれませんね。

*** ビジネスパーソンになじみ深いブレストですが、そのやり方を少し変えてみるだけで、大きな違いが得られます。ぜひ試してみてください。

(参考) 日経ビジネスONLINE|「ブレスト」のアイデア出しは、実は効率が悪い! ダイヤモンド社書籍オンライン|ブレストはこんなに無意味だった!研究で判明した真実とは? Wikipedia|ブレインストーミング 東京商工会議所|経営に役立つフレームワーク第5回 オズボーンのチェックリスト DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー|“How might we ...”言葉で変える IDEO流 創造的文化のつくり方 Brian Mullen, Craig Johnson and Eduardo Salas, "Productivity Loss in Brainstorming Groups: A Meta-Analytic Integration", 1991, Basic and Applied Social Psychology, 12(1), pp 3-23.

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