仕事の失敗を上司に報告するの嫌だな‥‥‥。1週間旅行に行きたいけど、職場で休みの許可をとれるか聞きづらいな‥‥‥。そう感じたことはありませんか?

今回は、言いにくいことを効果的に伝え、欲しい答えを手にいれる科学的な方法をご紹介します。

同じ質問でも、問いかける順序によって反応は大きく異なる

同じ質問でも、問いかける順序によって全く異なる回答が返ってくる。ノーベル賞を受賞したアメリカの心理学者・行動経済学者であるDaniel Kahnemanが、ベストセラー著書の『Thinking, Fast and Slow』でその詳細を述べています。

彼はまず、1→2の順序で学生に以下の質問をしました。

1. 最近どれくらい幸せを感じていますか?
2. 先月何回デートをしましたか?

1問目の回答が、2問目の回答に影響を与えることはありませんでした。先月デートした回数は事実なので、変えようがありませんね。

では順序を逆にして、2→1の順に質問をするとどうでしょう?

1. 先月何回デートをしましたか?
2. 最近どれくらい幸せを感じていますか?

今度は、2問目の回答は1問目の回答に大きな影響を受けました。

デートの数が少ないと最初に答えた人は、次の問いで最近あまり幸せではないと回答する率が高くなりました。一方、デートの数が多いと、2問目で最近とても幸せだと答える傾向にありました。

つまり、先月のデートの回数と最近の幸福度に関する回答は、大きな相関関係にあったのです。

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なぜ問いの順番が重要なのか

上記の実験では、問いの順番を逆にしただけで、同じ質問に対する回答が大きく変わりました。それはなぜでしょうか。質問によって喚起される感情に注目してください。

全然デートをできていなくて悲しいと一度感じると、自分の最近の人生は孤独でみじめだと思い、その後もみじめな気分で会話が続きます。逆に、たくさんデートをできて嬉しいと一度感じるとポジティブなイメージが脳に残り、幸せな気分でその後の会話も弾むのです。

直前の話で換気された感情に引っ張られて、次の問いに回答したのです。他にも、同様の現象は多く見られます。例えば、以下の順序で学生に2つの質問をしたらどうでしょう。

1. 両親との関係性は? ( 家庭の経済力は?)
2. 自身の幸福度は?

結果、「両親といい関係を築いている」「うちにはある程度のお金がある」と答えた学生は、次の問いで「自身の幸福度が高い」と回答。一方、「両親とあまり仲が良くない」「貧乏だ」と答えた学生は、直後の質問で「自分の幸福度は低い」と言ったそう。

人間の脳は一度ある感情が喚起されると、すぐにその感情を転換することは難しいもの。最初の問いでまずポジティブな感情を植え付けられると、直後の異なる問いに対しても、ポジティブな感情を維持したまま答えるようになります。

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話の順番を工夫して依頼する

これを利用しない手はありません。話の順番を意識して戦略的に話すことができれば、望み通りに会話が進みます。

お願いしづらいことを依頼するときはまず、相手を幸せな気分にする質問や、相手を喜ばせるような話を出しましょう。

いったん相手の気分を高めてからお願いすれば、良い返事をもらいやすくなること間違いなし。長期の休みの許可を取りたいときや、忙しい相手に仕事の協力を頼みたいときなどにおすすめです。

【休暇の依頼例】

1.「週末○○するっておっしゃってましたが、いかがでしたか? 楽しかったですか?」

事前に週末の予定を聞いておき、楽しそうなプランなら週明けにどうだったか尋ねます。相手に楽しかった出来事の詳細をたくさん話してもらいましょう。相手の脳内にポジティブなイメージを植え付けることができます。

2.「それは楽しそうですね! 実は私も△△さんのようにアクティブになりたいなと思い、1週間の旅行を計画しているんです。もし可能ならば来月お休みをいただけないでしょうか?」

相手はたった今、楽しかった週末のことで頭がいっぱい。幸せな感情を抱いたまま回答してくれます。いつもより快く承諾してくれるでしょう。

上司が週末「ただ家で休んでいた」だけだとしても、具体的に何をしたのかを聞いてみましょう。料理や睡眠、読書や映画鑑賞など、何かしら話せることはあるはず。楽しそうな出来事があれば、話し手が幸せなイメージを頭に思い浮かべられるように、詳細を尋ねます。

相槌を打って相手の話を傾聴したあと、「ゆっくり休むのはリフレッシュするのに大事ですよね!」などとコメントをして、自分の休暇の依頼につなげましょう。

次に、仕事で頼みたいことがあるけれども切り出しづらいときに使える例をご紹介します。

【仕事の依頼例】

1. 「○○さんのこの前の□□、素晴らしかったです! △△さんもそうおっしゃっていました。どうやったんですか?」

人は自分のことをたくさん話すだけで、気分が良くなるもの。相手にどんどん話してもらいましょう。基本は聞き手にまわり、時々第三者のコメントも併せて褒めると効果的。自分だけでなく他の人の言葉として褒めると、さらに聞き手は嬉しくなるはず。

2. 「○○さんに□□をお願いできたらとても嬉しいのですが、よろしいでしょうか?」

相手は今、自分の仕事の成功のことで頭がいっぱい。満ち足りた気分になっています。その状態で仕事のお願いをすれば、多少頼みづらいことでもYESの返事をもらいやすくなりますよ。可能であれば、「○○さんのように□□できるようになりたいので」と付け加えるとさらにいいでしょう。

話の順番を工夫して報告する

上司に失敗などの報告をするときも、話の順番を意識しましょう。まず、相手を喜ばせるような良いニュースを伝えます。いったん上司の気分を高めてから、失敗に関して伝えれば、可能な限り悪い印象を少なくできます。

【失敗の報告例】

1. 「今月の売り上げ、先月と比べて50%アップしました!」

上司が思わず笑顔になるような、良いニュースを用意します。必ず喜ばしいことから報告しましょう。相手の気分を高揚させられるよう、数字や具体例を用いて成果を詳細に伝えます。

2. 「実は、○○社の契約が失注してしまったんです。」

相手の気分を高めた後に、失敗やミスの報告を。相手の受け止め方を和らげることができます。報告の際はしっかり謝罪をして、反省の色を見せるのを忘れないように。

「来月はこのようなミスをなくし、さらに売上をアップできるように精進します。」のように、最初に話した良いニュースに絡めて、最後に今後の抱負を述べるとより効果的。良い印象を残して会話を終えることができますよ。

相手のハッピーな感情が冷めないうちに、頼みにくい依頼や言いづらい報告をして、マイナスの影響を最小限におさえましょう。

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できれば言いたくはないけれど、どうしても言わなくてはいけない場面、ありますよね。そんなときは、話す順番を意識して、スムーズに済ませるのが賢い方法ですよ!

(参考)
Barking Up The Wrong Tree|How to make someone feel fantastic (or awful) about their entire life:
Sandbox Advisors|Scientific Ways To Be More Likeable At Work