アメリカ合衆国第26代大統領として20世紀初頭に活躍したセオドア・ルーズベルトは、以下のような言葉を残しています。

The only man who never makes mistakes is the man who never does anything.
「ミスをしない人間は、何もしない人間だけだ。」

忙しいビジネスの世界を生きる私たちにとって、ミスはどうしてもついてまわるものですよね。会議の時間を間違えてしまった、数値の誤りを見落としてしまった、誤字に気づかないままメールを送ってしまった……。程度は大なり小なり、皆さんにもこういったご経験があるはず。

起きてしまったことは反省し、次回に活かす。“成長するための糧”と考えれば、ミスは必ずしも否定的な側面ばかりではないのかもしれません。とはいえ、時にミスは大きな命取りになることもまた事実。ひとつの小さなミスが会社に大きな損害をもたらしてしまうかもしれませんし、性懲りもなく同じようなミスを繰り返してしまっていては、社内外を問わず信頼の失墜にもつながりかねません。

そこで今回は、ミスの中でも特に私たちを悩ませることの多い「アテンションミス(=うっかりミス)」を減らす方法についてご紹介していきます。“うっかり”の癖がなかなか直らない人は、もしかしたら脳の使い方に問題があるのかもしれませんよ。

アテンションミスが起こる原因とは

アテンションミスとは、注意力のちょっとした欠如によって生じるミスのことをいいます。「つい見落としてしまった」「うっかり間違えてしまった」など、皆さんにもご経験があるのではないでしょうか。そしてこのアテンションミス、「つい」「うっかり」といった軽い感覚に惑わされるあまり、いつも深く反省することなく「次に気をつければ大丈夫」と安易に考えて終わらせてしまいがちですよね。

しかし、実はこのアテンションミスは、単に自分に言い聞かせるだけでは防ぐことができない、少し厄介な代物なのです。

アテンションミスが起こる原因を説明する際のキーワードとなるのが「ワーキングメモリー」です。

ワーキングメモリーとは、言葉を理解したり、推論したり、学習したりするために情報を操作する間、一時的にその情報を保持する機能や能力を意味します。

(引用元:ダイレクトコミュニケーション|ワーキングメモリー

例えばこの記事を読むときに、まさに今読んだ内容を記憶しながら次に読む言葉へとつなげ、意味を理解することができていますよね。このときに働いているのが、このワーキングメモリーなのです。

しかし、このワーキングメモリーが一度に貯蔵することのできる事象の数には実は上限があり、その数は「7±2」個とも「4±1」個とも言われています。したがって、同時に取り扱う情報の数がこの上限を超えてしまうと、私たちのワーキングメモリーは容量オーバーとなってしまうのです。その結果として、ある情報が認識されなくなってしまう状態、つまりアテンションミスが引き起こされるのです。

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アテンションミスが多い人は「注意」を浪費しすぎている

上で述べたことから、アテンションミスが多い人は、普段からワーキングメモリーが容量オーバーになっている、つまり “本来有限であるはずの「注意」をいつも浪費しすぎている” 可能性があります。

例えば、仕事中いつもスマホを手元に置いて無意識のうちに画面を確認してしまったり、ある作業をしている最中に「そういえばあれもやらないと……」などと別の案件を考えてしまったりしてはいないでしょうか。あるいは「この企画の方針、これで大丈夫かな……」といった不安など自分の「内」に気を取られてしまうことも、あなたのワーキングメモリーを消費する一因となります。

私たちが一度に注意を払える対象の数はそれほど多くはありません。それをしっかりと自認したうえで、アテンションミスを減らす対策を立てる必要があるのです。

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アテンションミスを減らす方法

それではここからは、アテンションミスを減らす方法をご紹介していきます。

1. 注意を“アウトソーシング”する

注意を払える対象の数が有限であるのならば、注意を外部に置いてワーキングメモリーに空き容量をつくってあげましょう。そのためにおすすめなのがToDoリストです。ToDoリストは一般的に必要なタスクを抜け漏れなく進めるためのツールとしてとらえられていますが、実はアテンションミスを減らすという観点から見ても絶大な効果を期待できます。

理由は「次にやるべきこと」という情報を脳の外に置いておけるから。「今日はこれをやらなければいけない」「次は何をすればいいのだろう」といった注意を全て思考の外にアウトソーシングすることで、「目の前の仕事にさえ集中すればいい」という環境をつくりだせますよ。

ポイントはタスクをできるだけ細分化すること。作業に取りかかる前に少し時間を設け、ToDoをじっくりと整理してアウトプットみてはいかがでしょうか。

2. 小さなことを後回しにしない

「メールの返信」や「上司へのちょっとした報告」など、そこまで時間がかからないものはついつい後回しにしてしまいがちですよね。しかしこれも要注意。「あとでやろう」と意識して頭の片隅に置いておくことも、脳のワーキングメモリーの浪費につながってしまいます。

そこでこういったものは、後回しにせずにすぐに取りかかってしまう癖をつけましょう。

とはいえ、作業途中で新たにやるべきことが発生したものの今すぐには手をつけられないということもありますよね。そのような場合は、必ずメモに記してから作業に戻りましょう。これも立派な“注意のアウトソーシング”のひとつです。

3. 普段からワーキングメモリーを“鍛える”

脳の前部に位置する前頭連合野にあるとされるワーキングメモリーですが、実は鍛えることができるということが最近の研究でわかってきています。以下にいくつか方法をご紹介しましょう。ポイントは脳を意識して使うようにすること。中には通勤やプライベートの時間などを使って気軽にできるものもありますので、訓練だと思わずに、自分の脳の働きをチェックするゲームととらえて楽しみながら実践してみてはいかがでしょうか。

・電車の中吊り広告に書かれている文章の単語を思い出してみる
ただなにげなく流し読みをするだけではワーキングメモリーは鍛えられません。中吊り広告を見たあとに目を離して、そこに何が書かれていたかを単語レベルで思い出してみましょう。

・看板を思い出してみる
目にした看板を頭の中で思い出してみる練習をしてみましょう。上に同じく、物事をなにげなく見てしまう習慣を少し変えることが大切です。

・楽しい目的を持つ
ワーキングメモリーを司る前頭連合野は、ドーパミンによって活性化するのだそう。仕事ばかりに精を出すのではなく、たまには自分が心から楽しいと感じる趣味に没頭して、この「多幸感や意欲を感じさせるホルモン」であるドーパミンの分泌を促すのもよいのではないでしょうか。

***
注意を過剰に浪費してしまっているのがアテンションミスの根本的な原因です。上で紹介したことをぜひ実践して、ミスを減らしてくださいね。

(参考)
名言+Quotes|仕事の失敗
ダイレクトコミュニケーション|ワーキングメモリー
PHP Online 衆知|仕事のミスは脳の仕組みが原因だった!
東洋経済ONLINE|ミスの多い人がわかっていない集中力の本質
Career Supli|原因は脳だった!「どうしても起きるミス」をなくす方法
理化学研究所|前頭連合野の中の領域ごとに異なる機能を発見
小さな組織の未来学|脳のキレを取り戻す、ワーキングメモリーの鍛え方 7選
マイナビニュース|記憶の脳科学 1 低下したワーキングメモリ(脳のメモ帳)の機能は強化できるのか?