フロイト、ユングに並ぶ心理学三大巨匠のひとり、アルフレッド・アドラー。彼が提唱した “アドラー心理学” を解説した書籍『嫌われる勇気』が昨今話題になっていますね。「人間の悩みはすべて対人関係の悩みである」と断言し、「嫌われる勇気を持ってこそ自由に生きられる」と説くアドラーの教えは、多くの日本人に多大なる感銘を与えています。

とはいうものの、現実世界でその教えを実践するのはなかなか難しいものですよね。他人から嫌われたくなくて本当の自分を出せない、周りに合わせて作り笑いばかりしてしまう……。上司や同僚に嫌われるのが怖くて率直な意見を伝えられない、相手の顔色ばかりうかがっていてなんだか仕事が窮屈に感じる……。こんな悩みを胸に秘めている方も意外と多いのではないでしょうか。

でも、もっとのびのびと自分らしく生きていくためにも、「嫌われるのがいやだ」という観念を一度捨ててみてはいかがでしょうか。今回は、嫌われることを普段からつい意識してしまいがちな方々に向けたお話です。

嫌われることを過度に恐れる弊害

「嫌われる」という言葉そのものがネガティブな響きを持っていることもあり、私たちは「嫌われる」ということに関してつい否定的なとらえ方をしてしまいがちです。そしてこの傾向は、人間関係が物を言いそうな会社や学校といったコミュニティの場において特に顕著に表れるのではないでしょうか。

嫌われることが原因で仕事が円滑に進まなくなるのではないか、チーム内の雰囲気がギクシャクしてしまうのではないか、はたまた自分に仕事がまわってこなくなるのではないか……。このような意味では、嫌われることはたしかに心理的な負担になる場合もあるでしょう。

しかし、もっと広範的な視点で考えてみると、「嫌われることを恐れるあまり自分らしく生きることができない」という抑圧された心理状態をずっと抱えこんでしまうほうが、もっと大きな負担になりはしないでしょうか。

例えば会議やミーティングの場で「A案よりもB案のほうがいいのではないか」「こちらのほうがずっと効率がいいのではないか」などと思ったとき、多数派に合わせてそれを心の中で黙殺してしまったとしましょう。会議後に不服な気持ちが残ってしまったり、結果が失敗に終わって内心「あのとききちんと発言しておけばよかった」と後悔したりといった状況が繰り返されてしまうと、自分の仕事に対してはもちろん、自分自身に対しても、懐疑的で悶々とした気持ちが積み重なっていってしまうことになりかねません。そして同時に、ひとつの貴重な意見が発信されないまま黙殺されてしまったことは、会社にとっても大いに不利益なことなのです。

相手次第でどう転ぶかわからない「好む」「嫌う」といった感情よりも、自分の心にすなおに従って生きたほうが、自由に後悔なく生きられるような気がしませんか。

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嫌われても評価を得る人とは?

とはいえ、自分の思いつくままにむやみやたらと主張するばかりでは、ただの「自己中心的な人」「利己的な人」といった評価に成り下がってしまいかねませんよね。

ではそもそも、嫌われてもなお評価を得られる人って、いったいどのようなタイプなのでしょうか。

ダイヤモンド社が発信しているビジネス情報サイト「DIAMOND online」が「職場における嫌われる勇気」についてアンケートを実施したところ、対象となった男女200名のうちじつに46.5%が「嫌われることを気にせずに自分の流儀を貫いてもなお、尊敬される人物が身の回りにいる」と回答したのだそう。

「意志が強く、他人の意見でふらふら振り回されず、正しいことを正しいと、上司・部下に関係なく発言する人がいます。始めは疎んでいた周りの人も『その人の言うことなら間違いない』と、その人を規範とするようにさえなっていきました。結果的には、我が社で最年少の役員へと上り詰めていきました」(44歳・女性/事務系)

(引用元:DIAMOND online|もしもあなたが職場で「嫌われる勇気」を持てたら 嫌われて出世する人、ダメになる人の違いを大調査

「たまに厳しすぎるときもあって、敬遠されがちの上司。でも、いつも他人を思いやり、決して他人の悪口を言わず、必ず会社が良くなるために行動していて一貫性がある」(27歳・女性/事務系)

(引用元:同上)

キーワードとなるのは一貫性。主張をコロコロ変えない、偏った物言いをしない、不必要に媚びを売らない。そういった “まっすぐな信念を貫こうとする姿勢” “嫌われる勇気を持って自分の信じる主張を解放しようとする姿勢” こそが評価に結びついていると言えそうですね。

そこで、その一貫性を普段から身にまとい他人に評価してもらえる人になるための第一歩として筆者が提案したいのが、“ためらわずに「ノー」と言う” ことです。「ノー」と言うのはたしかに非常に勇気がいること。でも「ノー」と言いたいときに「ノー」と言うのを躊躇していては、いつまで経っても「他人の目を気にしてしまう人」「嫌われることを恐れてしまう人」から脱却できませんよ。

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上手に「ノー」と言えるようになるには

CEOおよびリーダーに対してアドバイスを行なっている経営コンサルタント、ピーター・ブレグマン氏は、上手に「ノー」と言うための習慣を提唱しています。そのうちのいくつかをご紹介しましょう。

1. 何に対して「ノー」と言うのかを明確に
何が「ノー」なのか、という自分の気持ちをまずははっきりと持ちましょう。「イエスなのかノーなのかわからない……」という状態ではいけません。自分の中で「ノー」を意識することが、上手に「ノー」と言うための第1ステップなのです。

2. 人に対してではなく依頼や主張に対して「ノー」を述べる
「ノー」と言いたいときに、“相手を拒絶してしまうことになるのではないか” と心配してしまう人もいるかと思います。そのような場合は、依頼や主張を提唱した人物への否定や拒絶ではなく、依頼や主張そのものへの否定であることを意識しましょう。自分の主張が他者の主張と相反するものであったとしても、それはあくまで主張と主張の相違。人に対しては丁寧に接するというスタンスを忘れなければ、相手もあなたの考えに耳を傾けてくれるはずです。

3. 練習する
マインドがわかったら、あとは練習あるのみ。繁華街での居酒屋のキャッチや、衣服店での「ご試着いかがですか?」、友人からの「もう1杯どう?」など、日常生活の中でもなんとなく断りづらくて曖昧に返事をしてしまう場面ってありますよね。こういったリスクの低い状況で、はっきりと「結構です」と自分の意思を主張する練習をするのも効果的ですよ。

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嫌われることを恐れずに「嫌われても評価される人物」を目指しましょう。信念を持って「ノー」と言うことは、同時に自分の本当の主張を発信する契機ともなります。自分の気持ちにすなおに向き合い、自分らしく生きてみてはいかがでしょうか。

(参考)
DIAMOND online|もしもあなたが職場で「嫌われる勇気」を持てたら 嫌われて出世する人、ダメになる人の違いを大調査
経済界|嫌われ者になれ、ではない。嫌われることを恐れるな、だ。
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|上手に「ノー」と言うための、9つの習慣