企画書の作成やミーティング中のアイディア出しなど、日頃の仕事において創造性や発想力を求められるシーンは多く存在します。そんなとき、他の人があっと驚くような斬新なアイディアを出せたらすてきですよね。でも、そうは思っているものの、実際には良いアイディアが思い浮かばず無難な発想に終始してしまったり、周りの人は色々なアイディアを出しているにもかかわらず自分は全然思いつかなかったりと、自分の才能のなさに悲嘆して自己嫌悪に陥ってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そんなふうに悩んでいる方々に紹介したいのが「セレンディピティ」という言葉です。これは、偶然に新しいアイディアや発想を得ることであり、歴史を振り返ってみても、このセレンディピティによって引き起こされた偉業は決して少なくありません。そこで今回は、そもそもセレンディピティとは何なのかという部分から、ビジネスや実生活に役立てる方法までをご紹介します。

セレンディピティとは

セレンディピティという言葉は、18世紀のイギリスの作家であるホラス・ウォルポールが作った造語であり、ホラスが子供の頃に読んだ『セレンディップの3人の王子』という童話に由来しています。この童話に出てくる3人の王子たちは、旅をしていく中で様々なものに出合いますが、それらは決して彼らが求めたものではありませんでした。しかし最終的には、その偶然の出合いが重なって、彼らの人生が豊かになっていく、という話です。

童話の内容を踏まえて、セレンディピティとは「偶然に思いがけない幸運な発見をする能力」などといった意味で使われています。

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歴史上のセレンディピティ

偶然に幸運を発見するなんて本当にあり得るのかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実際に歴史を振り返ってみると、このセレンディピティが関係している偉業は実はたくさんあるのです。

例えば、今や医学の世界では当たり前の存在である抗生物質、ペニシリン。これは偶然によって発見されたものです。イギリスの細菌学者であるアレクサンダー・フレミングは、細菌を培養していた容器の中にうっかり青カビを生えさせてしまいました。普通なら失敗で終わってしまうところですが、それをよく観察してみたところ、青カビには細菌をやっつける効果があることに彼は気付いたのです。そこからペニシリンが生まれ、フレミングはこの功績をたたえられてノーベル賞を受賞しています。

またノーベル賞の名前の由来でもあるアルフレッド・ノーベルも、セレンディピティによる成功を収めています。ノーベルといえば、なんといってもダイナマイトの発明が有名ですよね。ニトログリセリンという爆薬をいかにして安定させるかという研究を行っているとき、たまたま爆薬の保存容器に穴が開いてしまい、周りにあった珪藻土(けいそうど)という土に染み込んでしまいました。見ると、爆薬が安定していたのです。ノーベルは、この偶然の発見をきっかとして、ダイナマイトを開発することができました。

海外だけでなく、日本でもセレンディピティによる成功例は数多く存在します。SONYの代表的な商品であるウォークマンは、創業者である井深大氏が、若い社員がテープレコーダーを改造して小型のプレーヤーとして使っているのを目につけたところから生まれました。大塚製薬のポカリスエットは、のどが渇いた医者が点滴をガブガブ飲んでしまったという話から誕生したのです。

セレンディピティは、多くの成功のきっかけになっています。そしてこれは歴史上の偉業に限った話ではありません。例えば外を歩いているときにふと見かけたものから新商品のアイディアが生まれたり、会議でのちょっとした一言から新しい企画が決まったり……。一般的なビジネスシーンにおいても、セレンディピティによる成功は大いにあり得ることなのです。

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偶然を味方にするための3つの習慣

とは言っても、セレンディピティは偶然の話だから自分たちではどうすることもできない、と思う方もいるでしょう。しかし実はそうではなく、脳の使い方次第で、セレンディピティを起こしやすい、つまり偶然の出来事を幸運に結び付けやすい状態にすることが可能なのです。ここでは、セレンディピティを呼び込むための習慣を3つご紹介します。

1つ目は「行動する」ことです。何かアイディアに詰まったら、とりあえず動いてみましょう。散歩でもいいですし、色々な人に相談するのも可です。自分と異なる分野の人の話を聞くことは特に効果的。なぜなら、違う知識を持っていれば自然と視点も変わるから。1つの視点から見続けても見える側面は同じですが、違う視点から見てみると、これまで分からなかった部分があったことに気付くはず。隣の部署の人と話をしてみることで自分の部署の問題が浮き彫りになるかもしれませんし、自分とは異なる専門分野を持った友達のふとした言葉が大きなチャンスを生み出すかもしれませんよ。

2つ目は「気付く」ことです。これが一番大切といっても過言ではありません。気付くことができなければ、セレンディピティをいくら引き寄せてもその成功を掴めないのです。歴史上のセレンディピティの例を見ても分かるように、成功者は、普通に考えたらただの失敗で終わってしまう出来事に対しても、しっかりとした観察や分析を行っています。「あれ?」と思うようなちょっとした違和感や変化があればじっくりと観察してみましょう。例えば、仕事上のデータにおかしな点を見つけたとします。普通なら「ミスかな」で済ましてしまうところですが、少し落ち着いて「なんでこんな数字が出たのか」「このデータにはどんな意味があるのか」などと深く考えてみましょう。新たなサービスの着想を得たり、顧客のニーズを満たせる商品が思いついたりと、大きな発見につながるかもしれません。

3つ目は「受け入れる」ことです。セレンディピティは間違いや失敗から生まれることが多いもの。自分がミスをしてしまったときにそこから目を背けようとせずに、「ちょっと待てよ」と受け入れることが大切です。偏見のない視点で、様々な事柄から学びを得ていきましょう。例えば、自分と異なる専門分野の人がアドバイスをくれたとき、「自分の分野のことを知らない人だから分かるはずがない」などといった理由でそのアドバイスを無視するのは非常にもったいないことです。どんな人の言葉にも耳を傾けるようにして、様々な分野から物事を捉えるクセをつけましょう。

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セレンディピティは日常のいたるところに潜んでいます。広い視点と大きな心を持って、偶然の幸運を自分の手で発掘してください。

(参考)
茂木健一郎著(2008),『脳を活かす仕事術』,PHP文庫.
澤泉重一著(2002),『偶然からモノを見つけ出す能力』,角川書店.
久保田競・夏村波夫著(1990),『セレンディップ ツキを呼ぶ脳力』,主婦の友社.
日野原重明著(2005),『「幸福な偶然」をつかまえる』,光文社.