会議や商談など、相手を説得しなくてはいけない局面に立つことは誰しもあると思います。その際に、「上司に何を言っても聞く気がないように思える」、「相手がこちら側の意見を一切受け入れてくれない」など、自分の言うことを相手に受け入れてもらえなくて、悩んだ経験はありませんか?

自分の主張が間違っているのではないか、と考え込んでしまうこともあるでしょう。しかし、言う内容が同じであっても、言い方が違えば、相手の答えも違うものになる可能性があるのです。そこで今回は、人を動かすために説得する際のちょっとした工夫をご紹介します。

どうして言うことを聞いてもらえないのか

相手を説得できない時には、以下の2つの原因が考えられます。

1. 論理的に考えて、相手にメリットがない
たとえば、いきなり友人に「1,000円ちょうだい!」と言っても応じてもらえないでしょう。交渉するのだから、相手の合意を得ることは必要不可欠。交渉の理想的なゴールは、自分と相手の双方にメリットがある状態。いくら感情論で押しても、相手にとってのメリットがなければ受け入れてもらうことはできません。

2. 感情の問題で、言うことを聞く気になれない
人間は感情の生き物です。たとえ言っていること自体が正しい場合であっても、癇に障る言い方をされては反発心が生まれてしまいます。たとえば、普通に「今度ご飯おごるから、1,000円貸して!」と言えば応じてくれる人もいるでしょう。しかし、「今度ご飯おごってやるから1,000円貸せ」と言ったら、主張は同じであっても、ほとんどの人に断られてしまうはずです。

特に日本は敬語などの言い回しが重要視される文化があるため、言う内容と同様に、言い方というものがとても重要になってきます。言い方次第で、結果はいくらでも変わってしまうのです。では、どうしたら主張を聞き入れてもらいやすい言い方ができるのでしょうか。それぞれの原因別に、解決策をご紹介します。

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1. 相手の立場に立つ

まずは、論理的に考えて相手のメリットがない状態を防ぐ方法から考えてみましょう。そのためには、相手と自分、双方の利益になるような提案をしなければいけません。この問題について、対人関係・マネジメントの名著『人を動かす』では、以下のように書かれています。

人を動かすには、相手の欲しがっているものを与えるのが、唯一の方法である。

(引用元:デール・カーネギー著(1999),『人を動かす 新装版』,創元社.)

普段、自分が欲しいもののことを考えることはあっても、他人の欲しいものを考えることはなかなかありませんよね。まずは相手の立場に立つ必要があります。具体的な手順は以下の通り。

(1) 聞き手にまわる
(2) 誠実な関心を持って相手を観察する
(3) 相手の興味悩みを分析する
(4) 相手からすすんで自分の要求を受け入れる気になる方法を考える。

人の立場に立つだなんて難しそうに聞こえてしまいますが、たった4ステップで誰でも実践できるのです。それぞれ実際にはどのような動きになるのか、具体例を考えてみましょう。今回は、同僚が報連相を怠って部署の仕事に支障をきたしている場合を想定します。

(1)まずは聞き手にまわり、その同僚とコミュニケーションをとって、話を聞きます。

(2)誠実な関心を持って観察します。注意してほしいのが、「相手の話は相手の中では間違いなく正しいことを言っている」と考えることです。反論を考えながら話を聞くのでは意味がありません。相手の話を聞くことだけに集中します。

(3)相手の興味と悩みを分析します。相手が感情を露わにするポイント、何度も出てくる単語などに注意をはらいましょう。例えば「私は〇〇さんに比べて英語ができるわけでもないし」と俯きながら言っていたり、「やっぱり能力が足りないから」と何度も「能力」に関する単語が登場したり……。話を聞いていくうちに、相手は自分の能力を認められることに関心があり、周りの同僚に劣等感を持っていることがわかりました。そして、報連相をしない同僚は、どうやら人に頼ると無能だと思われそうと考えたようです。

(4)彼が自ら報連相を行うようになる方法を考えます。相手から「すすんで」やるようになる必要があるので、相手が自ら「報連相を行うほうが有能なんだ」と悟るような言い方を考える必要があります。押し付けるような言い方、強引な言い方では反感を買って終わってしまいます。

威圧的にならずに、かつ相手に行動してもらうだなんて、なかなか難しいですよね。ここで、2つ目の解決策が登場します。

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2. スパイスをかける

感情でも納得してもらうために、相手に伝わる言い方を考えます。色々なやり方がありますが、手軽にできてかつ様々な場面で使いやすい、「説得のスパイス」を活用する方法をご紹介します。

社会心理学に基づいて人を動かすための技術を記した『影響力の武器』では、以下の3つの要素が人を動かすと述べられています。これらを取り入れれば、押しつけがましくならずに、相手を攻撃しない言い方で行動の変化を促せるようになるでしょう。

・社会性
社会性とは、簡単に言えば「みんなやっている」という要素です。洋服店で「皆さんこの服をよく買われますよ」「今の流行なんですよ」という言葉を聞いたことはありませんか? これは、この社会性の原理を狙った発言なのです。今回の場合で言えば、「有能な人はみんな報連相をやっているよ」と伝えることで、「だったら自分もやろう」と思ってもらいやすくなるのです。

・権威
誰もが知っているような著名人がおすすめしたものだと、それだけで魅力的に感じられませんか? それがこの権威、「偉人が言っている」という要素です。有名なビジネス書に報連相の重要性について書かれているのを見てもらえば、「この名著に書かれているのだから間違いないだろう」と納得してくれるのではないでしょうか。

・希少性

「残りわずか」「数量限定」などの言葉は、相手に「行動しなければ」と思わせる効果があります。これが「希少である」という要素なのです。つまり、「これを行えば希少な存在になれる」と相手が思えば、それが行動に結び付くということ。例えば、「いまどきの新入社員の中では、そういう細かいところをきっちりできる人は少ないから、徹底すると差をつけられるよ」といった言葉はいかがでしょうか。相手の「有能でありたい」という欲求とマッチしていますね。

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論理的、感情的に納得してもらえない時は、今回ご紹介した工夫で説得しやすくなります。ぜひ試してみてください。

(参考)
デール・カーネギー著(1999),『人を動かす 新装版』,創元社.
ロバート・D・チャルディーニ著,社会行動研究会訳(2014),『影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか』,誠信書房.
メンタリストDaiGo著(2015),『人を操る禁断の文章術』,かんき出版.