仕事には集中力が不可欠ですよね。しかし、人には集中しにくい性質があるといいます。ならば上手に切り替えて、集中力をもたせましょう。そのテクニックを紹介します。

そもそも人の集中力はもたないもの

東京大学薬学部教授の池谷裕二氏は、著書『脳には妙なクセがある』のなかで、「集中力は(人間を含む)動物にとって不自然なもの」と述べています。「シマウマが草を食べることだけに集中していたら、肉食獣の格好の餌食になってしまう」といい、「一点に集中することを避け、外敵から身を守るため周囲に意識を分散させる能力に長けた動物たちが、生き残っている」と説明しています。

現代においても、車や電車、自然の猛威やウィルスなど、人間に危険を及ぼすものは数知れません。つまり、「非集中力」は生き延びるため必要不可欠なのです。

また、米マイクロソフトのカナダ研究チームが2015年5月に発表した内容によると、現代人の集中力は、たった8秒しか続かないのだとか。この数字は、約2000人分の脳波などを測定し明らかにされました。しかもそれは、金魚の集中力より1秒短いそうです。

2000年の時点では12秒だったという人間の集中力が、どんどん損なわれていく大きな理由は、IT技術の進化に伴い我々を取り巻く情報量が増大したせい。しかし、この技術の発展は、もはや“無かったこと”にはできず、なおかつ、さらに進行していくはずです。

st-ec
90日でTOEIC910点! 英語が聞けない僕にパーソナルトレーナーが教えてくれた「音読のきほん」
人気記事

脳は経験に応じて変化する

ただでさえ少ない集中力が激減している現代人ですが、実は嬉しい事実もあります。

薬学者の生田哲著氏は、著書『脳地図を書き換える―大人も子どもも、脳は劇的に変わる』のなかで、「脳はわたしたちの行動や考えをコントロールしているが、逆に、わたしたちの行動や考えも脳を変化させる」と述べています。

同書によると、脳の可塑性(習慣や環境に応じて脳が変化すること)という言葉は、実験心理学の父ウィリアム・ジェームス博士によって、1890年すでに使われていたとのこと。しかし、ラモン・カハール氏という脳科学界のドンが「大人の脳は不変である」という見解を示したため、ウィリアム・ジェームス博士の見解は隅に追いやられてしまいました。

しかし、時を経て「脳の可塑性」が正しいとされたいま、我々は「集中力も鍛えられる」という希望の光を与えられたのも同じ。なぜならば、集中力は脳の働きと深い関係があるからです。

しかし……、ビジネスパーソンが働く現場に問題がありました。

shigoto-syuucyuu-kirikae-02

なぜ仕事に集中できない?

ビジネスパーソンは、日々集中しにくい「マルチタスク・マルチモード」で働いています。多様な業務のなかに電話やメールが入り込み、クライアントや上司からの依頼で、ほかの仕事を差し込むといった状況があるからです。

習慣化コンサルタントの古川武士氏は、仕事時間を低密度にしているのはマルチタスク・マルチモードだといいます。しかもマルチタスクは一時的にIQを下げてしまうのだとか。

脳科学の茂木健一郎氏いわく、一時的に情報を集めて保持する脳のワーキングメモリーは、1~2時間ほどしか保てず複雑なことは難しいため、仕事は60分ごとに区切って1点集中すべきとのこと。

だからこそ理想は、一定の時間1つのタスクに集中して仕事をする「シングルタスク・シングルモード」なのです。

集中力の波を知り時間を定めよう

「シングルタスク・シングルモード」で仕事をするには、多様な業務や集中力を考慮すると、一定時間を決める必要があります。

脳科学者の篠原菊紀氏は、著書『脳科学が教えてくれた 覚えられる 忘れない! 記憶術』のなかで、「例えばゲームをしている脳活動を調べると、最初の15“秒”で脳(前頭葉)の活動がピークを迎え、あとはゆるやかに低下するが、何かイベント(切り替えとなるもの)があれば、また上昇する」と伝えています。しかし、そうやって引き延ばしても10分ぐらいでゆらぎ始めるので、15分間も高い活動ができれば上出来とのこと。

これまでの内容をまとめると、人間の集中力は、だいたい60分の低くゆるやかな波(ワーキングメモリー)、10~15分という中くらいの波(前頭葉の活動持続)、8~15秒という高い波(脳の活動ピーク)があると考えられます。

そこで、筆者が試して効果を得た「長めポモドーロ・テクニック」と「報酬効果」を組み合わせた方法がオススメなのです。

仕事の集中力をもたせるテクニック

ポモドーロ・テクニック」とは、起業家で作家のフランチェスコ・シリロ氏が1980年代に考案した効率アップ術。タイマーを25分にセットして作業したあと5分間の休憩をとる「計30分のセット」を繰り返すというもの。たまたま同氏がトマト型(イタリア語でポモドーロ)のキッチンタイマーを愛用していたため名づけられました。また、心理学者の多湖輝氏が度々著書に書いている「報酬効果」とは、仕事や勉強後の「報酬」を用意して集中力を高める方法。

しかし、30分サイクルは筆者にとって少し慌ただしかったので、60分サイクルにカスタマイズしました。例えば、

1.50分間集中(横にはチョコチップクッキーが置いてある)
2.10分休憩(窓の外を見ながらルイボスティーとクッキーを楽しむ)
3.50分間集中(頑張れば冷蔵庫にプリンが!)
4.10分休憩(トイレに行ってカラダをほぐしてからプリンをほおばる)

といった具合です。集中するあいだは水を飲むことだけOK。できるだけ1クール=シングルタスクです。ただし、50分間にも集中力の波はあるので、イベントとなる以下のような切り替えが役立ちます。

・天井を見る―視界の情報をさえぎりながらストレッチ
・コップ1杯の水を飲む―脳の活性化に役立つ
・両手を組んで上げる―座ったままのリフレッシュ&ストレッチ
・ちょっと立ち上がる―血流が良くなる

***
会社では音を消せる光タイマーが便利です。上手に切り替えて集中力を鍛え、脳を育てましょう!

(参考)
池谷裕二著(2012),『脳には妙なクセがある』,扶桑社.
篠原菊紀著(2015),『脳科学が教えてくれた 覚えられる 忘れない! 記憶術』,すばる舎.
生田哲著(2009),『脳地図を書き換える―大人も子どもも、脳は劇的に変わる』,東洋経済新報社.
茂木健一郎著(2008),『脳を活かす仕事術』,PHP研究所.
多湖輝著(2014),『多湖 輝先生の合格の心理学』,ゴマブックス株式会社.
ダイヤモンド・オンライン|現代人の集中力持続は金魚以下!IT進化で激減
THE21オンライン|たった1時間の「オフライン」で、集中力は高められる!
Study Hacker|マルチタスクでIQが下がる!? 私の生産性を1.5倍にした効率的な「シングルタスク」3つの極意
Study Hacker|ポモドーロ・テクニック はやり言葉辞典
PRESIDENT Online|今この瞬間、「1つの仕事」に集中できないのは誰のせいか