『思考は現実化する』をご存知でしょうか? 世界的な成功哲学の名著です。書店で平積みされているのを見たことがある人も多いはず。この本のメソッドは有効だと言われるにもかかわらず、非科学的な説明が多かったので「本当に効果があるのだろうか」と疑問をいだいていました。

そこで筆者は『思考は現実化する』の中心となる「目標は紙に書くと実現する」を試してみたのです(参考:Study Hacker|『目標は紙に書けば実現する』ってほんと? 身近な目標で試してみた。)。そして「カラーバス効果(目標へつながるものが目につきやすくなる)」「プライミング効果(目標へつながるものが思い出されやすくなる)」という2つの心理学的な効果から目標が達成されやすくなり、成功へ近づくと説明することができました。

しかしここで、1つの疑問が浮かびました。このメソッド、どこまでズラしたとしても同様の効果が期待できるのでしょうか? たとえば、「願望を大声で読み上げる」なんてことはバカらしくてやらない人が多いと思うのです。とはいえ、この一見バカらしい行為にも何か意味があるのだろうか……。

その疑問を解決するべく、「『思考は現実化する』のメソッドはどこまで変えてもいいのか」を試してみました。その上で心理学的な考察をしたところ、やはり納得の行く事実が浮かび上がってきたのです。

「願望実現のための6ヵ条」本来の手順

まずは、『思考は現実化する』のメソッド「願望実現のための6ヵ条」を確認してみましょう。

1.あなたが実現したいと思う願望を「はっきり」させること。単にお金がたくさん欲しいなどというような願望設定は、全く無意味なことである。
2.実現したいと望むものを得るために、あなたはそのかわりに何を”差し出す”のかを決めること。この世界は、代償を必要としない報酬など存在しない。
3.あなたが実現したいと思っている願望を取得する「最終期限」を決めること。
4.願望実現のための詳細な計画をたてること。そしてまだその準備ができていなくても、迷わずにすぐに行動に移ること。
5.実現したい具体的願望、そのための代償、最終期限、そして詳細な計画、以上の4点を紙に詳しく書くこと。
6.紙に書いたこの宣言を、1日に2回、起床直後と就寝直前に、なるべく大きな声で読むこと。このとき、あなたはもうすでにその願望を実現したものと考え、そう自分に信じ込ませることが大切である。

(引用元:ナポレオン・ヒル著,田中孝顕訳(1999),『思考は現実化する―アクション・マニュアル、索引つき』,きこ書房.)

ここで筆者は以下の疑問を持ちました。

1. 大きな声で読むことは本当に必要なのか。もしそうならば、朝に時間がない人は成功哲学の実践をあきらめなければいけないのでしょうか。大半の人は、朝忙しいはずですよね。

2. 紙に書くのではなく、デジタルではだめなのか。書き損じてしまった場合、また一から書き直すのは少し面倒な気がします。それに、このデジタル化された時代に紙を使うのはむしろ非効率的なイメージです。

そして、この2つの疑問を解明するため検証してみました。

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ズラしてやってみた

今回の目標は「昼間にリラックスして勉強できる場所を見つけること」。最近、家での勉強はだらけてしまいがち、大学での勉強場所はいつもどこも満席なので困っていたのです。前回との違いは、「願望実現のための6ヵ条」のメソッド5と6を少々変えて実行するということです。ズラし方は以下の2つです。

メソッド5→ノートアプリに記録
メソッド6→大声で読まずに黙読

まず、紙ではなくノートアプリで記録した場合、「苦労して書く」というプロセスが抜けてしまっているからか、見直すときには無機質な文字が並んでいる感覚でモチベーションが薄れました。

次に黙読。音読するのに比べて時間もかからないので、継続はしやすいように感じました。しかし、やはり自分の声を自分で聞くことがないため、「今読んでいるのは自分の願望だ」という感覚が薄れたような気が……。だからか、当事者意識がないように感じてしまい、メソッド5にある計画を実行する機会が少なくなりました。

結果的にどちらのズラし方も「自分でやっている感覚」が薄れたからか、なんだか不真面目になってしまいました。前回と比べると、毎日目標を読み上げていたときの「やったるぞ!」というモチベーションが薄れた気がします。そして黙読するのに飽きてしまい、けっきょく長続きしませんでした。

ちなみに、勉強する場所は見つけることができたので目標は現実化したと言えるでしょう。大学の周辺を歩いていると、人の少ないカフェが目につくようになり、「ここは勉強ができそうだ」と目星を付けたいくつかのカフェに入ってみたところ、ちょうどいい店を見つけることができました。これはカラーバス効果(目標へつながるものが目につきやすくなる)が働いたのでしょう。

補足ですが、カラーバス効果が働くくらい、目標を自分にリマインドした状態で「あちこちうろちょろすること」がチャンスや目標に近づくために重要だと感じました。

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分析とさらなる改善案

社会心理学の名著『影響力の武器』では、「コミットメントの原理」という心理的効果が紹介されています。これは、「過去の自分の行動、意思表示に合わせて現在の行動を変化させてしまう」という効果です。たとえば、たいしてやる気の起きなかった資格試験の勉強も、高額な教材を買うことで「無駄にできない」という思いが働き続けてしまうということがこれにあたります。

ですから、紙に書いたり大声で読んだりする「自分でやった感」のある目標宣言は、「ここまでバカらしいことを毎日やっているんだから」という感情が、お金のかからない自分への投資になっているのです。

このように「自分でやった感」のある目標宣言をすることで、コミットメントの原理が働きやすくなります。自ら行動することと、あえて効率を悪くすることが、自分のモチベーションへの投資になるということです。自分の書いた字や自分の声で目標を宣言するからこそ意味があるのですね。一見して効率が悪いように思えるメソッドも、実は効果的なんだと感じました。

また音読に比べ、黙読は飽きやすく習慣化しにくいようです。ノートアプリを使ったメモに関しても、LINEの通知が来るとそっちを見てしまうので集中しにくいと感じました。つまり、アナログな方法の方が集中しやすいのです。「非効率的」に思える行動は、実は「集中しやすい」というメリットを含んでいることがわかりました。

わざわざ紙に書いたり大声で読んだり、一見バカらしいメソッドですが、やはりバカらしいなりにもしっかりとした理由があることを実感できました。

もしどうしても朝に声が出せない、朝は時間がないという方は、一度自分の声を録音して、ヘッドフォンで通学中に聴くのはどうでしょうか。また、手書きのメモを写真にとってノートアプリに貼り付けてもよいと思います。「自分でやっている感」を出すことが大事なので、できるだけ「自分の声、自分の字」をベースにしましょう。そうすることで、得られる効果(「カラーバス効果」「プライミング効果」によるもの)が大きくなるはずです。

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便利そうな代替案を考えてみたものの、やはり時代は変化しても、「これでもいいじゃん!」と我流のアレンジをするより猿真似したほうが効果は高いようです。「守破離」という言葉にある通り、まずそのまま試すことで、そうでない場合に「やっぱり違うな」という感覚を味わうことができました。

バカらしくても、まずは成功哲学を「そのまま」試してみてはいかがでしょうか。

(参考)
ナポレオン・ヒル著,田中孝顕訳(1999),『思考は現実化する―アクション・マニュアル、索引つき』,きこ書房.
ロバート・D・チャルディーニ著,社会行動研究会訳(2014),『影響力の武器[第三版]:なぜ、人は動かされるのか』, 誠信書房.
古川武士著(2010),『「続ける」習慣』, 日本実業出版社.
Study Hacker|『目標は紙に書けば実現する』ってほんと? 身近な目標で試してみた。