「最近ちょっと目が悪くなってきた」という人から「裸眼ではとても生活できない」という人まで、視力の低下に頭を悩ませる人はたくさんいます。学校の黒板に書かれた文字を読むのに苦労したり、パソコン作業のあと視界がぼやけて見えにくかったりと、あらゆる立場や年代の人にはびこる問題といえるでしょう。

スマートフォンやパソコンが普及した現代において、視力の低下はもはや個々の問題ではなく、大きな社会問題として捉えられつつあります。この事態を食い止めるためにも、誰もがその実態を把握し、予防・改善策を検討すべきかもしれません。

視力低下はもはや社会問題

文部科学省が毎年発表している学校保険統計調査・調査結果の概要(平成28年度)を参照すると、「裸眼視力 1.0 未満の者の割合」は、前年度に比べ幼稚園では減少傾向にありますが、小学校、中学校および高等学校では増加していることがわかります。

特に小学校での増加が顕著で、昭和54年度(1979)には全体の18%程度しかいませんでしたが、年を経るにつれて上昇し、平成28年度(2016)には全体の31%強まで増加しています。増加の度合いは続いて中学生、高校生の順番に高くなっており、子供の段階で視力を低下させるケースが多いと把握できます。

また、警察庁が公表している運転免許統計を参照すると、平成18年(2006)にメガネなどの視力矯正器具を使っている人数は3530万人で、免許保有者7930万人のうちの44%。それに対し、平成27年(2015)には視力矯正器具使用者が3950万人で、免許保有者8200万人のうちの48%にまで上昇しており、大人の視力低下も数字となって現れています。

kumiko895-ec
10年ぶり英語への挑戦で、TOEIC895点。秘訣は「毎日続けること」への科学的アプローチ
人気記事

目が悪いとは

では、「目が悪い」とは実際にはどのようなことを意味するのでしょうか。ごく一般的に「目が悪い」というと、おおむね近眼(近視)を指しています。近眼とは、近くのものは見えるけれど、遠くのものがぼやけて見えにくい状態のこと。

人間は近くのものを見る際、目の水晶体の横にある毛様体の筋肉(毛様体筋)を緊張させます。その緊張した毛様体筋に押されるようにして水晶体が分厚くなり屈折力が変わることで、近くにピントが合うようになるのです。

shiryoku-teika-01

(画像引用元:メガネスーパー|その疲れはメガネが原因?「合わないメガネ」が瞳の寿命を縮める理由

しかし、あまりに長時間近くのものを見ていると、緊張しつづけた毛様体筋が疲労して、分厚くなったまま元に戻らなくなってしまいます。これがいわゆる一般的に「目が悪い」とされる状態です。

視力低下の原因

先述したとおり、目を悪くする原因のひとつとして「近くのものを長く見続けること」が挙げられます。文部科学省の調査でも指摘されていましたが、スマートフォンやパソコンの普及にともない、私たちは、それらを見つめることにより多くの時間を費やすようになりました。

特に持ち運びしやすいスマートフォンは、寝床にまで持ち込んで就寝直前まで真っ暗闇の中で見ていたり、朝起きた直後すぐに手にとって操作したりなど、目に対して数々の悪行を働かせます。また社会人ならばなおさら、職場でもパソコンと睨めっこするでしょうから、1日の大半を近くを見て過ごしてしまうことになります。これらの行動が全て、視力の低下を助長しているのは言うまでもありません。

shiryoku-teika-03

目を悪くしないためには

そのような生活の中で視力をこれ以上悪化させないためには、当たり前のことですが、近くを見過ぎないことが第一です。仕事でのパソコン使用や、学校などでのノート書き、資料づくりなど、どうしても近くを見続け作業しなくてはならない時間をのぞき、目を酷使する時間を自発的に削るようにしましょう。特に就寝前のスマートフォンは、目の健康に大敵です。

もしも、長時間近くを見つめ目を酷使してしまった場合は、そのぶん目を休ませるよう心がけてください。例えば、温かい蒸しタオルなどが効果的ですよ。温かいタオルを目に当ててリラックスすることで、周囲の筋肉をほぐし、血行を改善してくれます。

また、単純に遠くを見つめることも効果があります。遠くに焦点を合わせることで、長時間近くを見つめ収縮しきった毛様体筋をゆるめてあげるのです。実際この方法は遠方凝視法と呼ばれており、昔からある視力回復方法のひとつでもあります。

***
冒頭でも述べた通り、視力の低下は社会問題となりつつあります。しかし、スマートフォンやパソコンが普及した現代社会において、近くを見続ける行動は避けられません。

ならば、そのぶん毛様体筋をリラックスさせることにも時間を費やさなければ、視力の悪化を食い止めることはできないでしょう。より健康な目を取り戻すためにも、意識して生活をしてみたいものです。

(参考)
文部科学省|学校保健統計調査-平成28年度(速報)の結果の概要
長野県木曽青峰高等学校理数科 平成27年度課題研究|視力低下の要因と回復
警察庁|運転免許統計(平成27年度版)
Kentaro Maeda, et al. (1993), “The Effect of Acupuncture Treatment on the improvement of Visual Acuity,” Journal of the Japan Society of Acupuncture and Moxibustion, Vol. 43, No. 3, pp. 120-124.