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日本の伝統的な概念「守破離」という言葉をご存知でしょうか。物事を極める際に重要だとされている言葉で、伝統芸能に端を発したものですが、現代ではビジネスや音楽、スポーツなど様々な場面に応用されています。今回は「守破離」の概念について説明し、私たちの生活に与える示唆について考えてみたいと思います。

守破離とは

戦国~安土桃山時代に活躍した茶人である千利休が詠んだ、次のような和歌があります。

「規矩(きく)作法 守りつくして 破るとも 離るるとても 本を忘るな」

「守」「破」「離」の三文字を含むこの和歌が、守破離の概念の広まるきっかけとなったものです。武道や茶道、華道といった道を極めるまでの過程を表すもので、日本の伝統芸能において長く語り継がれてきました。「規矩」とは規範の意味で、この和歌は、「教えはいつしか打ち破り、離れることも大切だが、基本を忘れてはならない」という教訓を言い表しています。

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「守」「破」「離」の意味とは

では、「守」「破」「離」それぞれに込められた意味を見ていきましょう。

「守」とは、無知の者が師匠の教えを忠実に守り、再現してみることです。指導者の行動を見習い、基本の型にのっとり、技を確実に身につける段階を指します。教えられたことをそのまま実行するということは、学習者に求められる最低限のことと言えます。

「破」とは、師匠から教わった基礎の上に、自分なりの改良を加えることです。他の指導者や別のやり方も参考にしつつ、良いものを取り入れながら、自分のスタイルを確立していく段階を指します。

そして「離」とは、師匠の教えから離れ独自の方法を編み出すことを言います。学んだことを、自分で発展させる段階です。普通の人がこの段階に到達することは難しく、名人の域であるとも言われます。

18世紀の茶人川上不白は、守破離について「前の二つを合して離れてしかも二つを守ること也」と述べています。千利休や川上不白の言うように、どんなに最初の教えから離れたとしても、その教えの根底の部分を忘れないことが大切なのです。

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「守破離」を勉強や仕事に当てはめる

では、守破離の概念は私たちの勉強や仕事に、どのように応用できるのでしょうか。まずはわかりやすく、数学の勉強について考えてみます。

守:先人によって発見された定理や公式を使い、数学の問題を定石通りに解く。数学の基本ですね。
破:定石通りの解法に自分なりのアレンジを加えてみて、より良い解き方を作る。数学の得意な人の中には、このステップが好きだという人もいるでしょう。
離:自らが完全に新たな解法を編み出したり、新たな公式や定理を発見することを意味します。数学者はこれを目指して、日々研究に取り組んでいるのでしょう。

次に、ビジネスにおける応用法として、営業マンを例にして考えてみます。

守:営業成績の優秀な先輩の仕事の仕方を学び、真似をする。
破:先輩から学んだ手法が身についてきたら、自分なりのアレンジを加える。
離:経験を積んだ中から、自分で新しい営業テクニックを編み出して実践し、成果をあげる。

分かりやすくイメージできましたでしょうか。

***
どのような分野であれ、仕事や勉強に守破離の考え方を役立てることは、上達や熟練への手助けとなります。仕事も勉強も、まずは基本に忠実に。これを大切にして日々取り組んでいけば、「名人」へと近づいていくことでしょう。

(参考)
田中仙堂著(2014),『茶の湯名言集 ビギナーズ 日本の思想』,角川学芸出版.
世阿弥著, 野上豊一郎・西尾実編(1958),『風姿花伝』,岩波書店.
コトバンク|デジタル大辞泉 守破離
関 工務店|守・破・離 ( しゅ・は・り )
Wikiquote|川上不白
AID-Curation(エイドキュレーション)|仕事ができる後輩(新人)になる方法〜守破離について〜


東京大学文科三類所属。磐田南高校卒業。4歳からサッカーとピアノを始める。大学ではスペイン語を学んでいる。三島由紀夫とMr.Childrenをこよなく愛する。将来はスペインに住んで日がな一日レアルマドリードの試合を見て天寿を全うしたい。