渡辺和子著『置かれた場所で咲きなさい』という本をご存知でしょうか。この本は、達成できなかった目標や、選ぶことのできなかった人生に固執せずに、与えられた環境の中でめいっぱい生きることの大切さを説いた本で、ミリオンセラーとなりました。
このように、ある事柄に“執着”しすぎると、往々にしてよくないようです。
なぜ執着してしまうのか
一つのことに心をとらわれて、そこから離れられないこと。
(引用元:goo辞書|執着)
ある事柄にとらわれすぎてしまうことを執着といいます。
別れた恋人のことが忘れられず、別れた後も連絡を取り続けてしまったり、学生であれば、不合格になってしまった第一志望の学校のことが諦められず、入学後も引きずってしまったり。具体的な行動を思い起こせば、みなさんにも心当たりがあるかもしれません。
このように執着してしまうのは、いくつか原因があるといわれています。
1つには寂しさ、孤独へのおそれです。恋愛はここに当てはまるでしょう。私たち人間は「寂しさ」「孤独」を非常に嫌います。そのため、彼氏や彼女等がいなくなってしまったらどうしよう、と思ったり、別れた後1人になるのが嫌だったりして、相手に執着し、そばにいてくれるよう束縛してしまうわけです。
また1つには変化へのおそれがあります。もしかすると奇妙に聞こえるかもしれませんが、私たちは変化を恐れます。例えば、罪悪感などの負の感情を抱えていたとして、それがないに越したことはないにも関わらず、罪悪感を持たない自分への変化を恐れてなかなかその感情を手放せない、といったことがあります。
このように見ると、執着とは、人間本来の心の在り方だとも言えるでしょう。
執着は危険
ですが、そんな執着、実は非常に危険な感情です。
執着は、前述のとおり、現状からの変化を恐れる気持ちから生じています。それは「これを失って、もし寂しくなったらどうしよう」「良くないものだけど、これを手放して万一前より悪くなったらどうしよう」という未知への恐怖です。
しかし、このような悩みに真正面から向き合い、一歩踏み出さないことには、成長はありません。
例えばあるシステムを今まで利用していたとします。そのシステムは様々不便ですが、使い慣れた方法で扱えば、それなりには便利です。ある日、そのシステムより上級なシステムが完成しました。それを使えば、今までの不便は解消し、格段に便利になると言われています。ここで「新しいものはちょっと怖い」と言って、従来のシステムに執着し続ければ、成長はありませんよね。
こうした例から分かるように、執着することは、悩みを見て見ぬふりをして、成長をやめてしまうことと等しいのです。
もちろん、中には「あの大学に行けなかった劣等感を忘れないようにしよう」といったように、執着をプラスに利用して頑張れる人もいますが、そうできる自信がなければ、執着をやめる勇気を持ちましょう。
執着をやめる方法
では、実際に執着をやめてみましょう。私がおススメする方法は2つあります。
1つは、執着の対象を客観的に見てみること。あるものに執着し始めると、それ以外が目に入らなくなるので、その良し悪しが判別できなくなります。ですが、冷静にその中身を理解すると、案外すんなり執着をやめられるはずです。
例えば、以前に買った服があるとします。がんばってアルバイトをして買ったけれど、もう流行遅れ。サイズだってあっていない。だけど、あれだけ頑張ってはたらいたのだからと大事にクローゼットにしまっておく。そういう風に、意固地になってしまってはいけません。自分にとって必要かどうかを考えてみましょう。自分ではわからなければ、友達に相談するのも手です。素直に耳を傾ければ、おのずとその客観的な姿が見えてくるでしょう。
もう1つは、代わりのものを見つけるということ。何度も言っているように、執着は視野を狭くします。そのものから離れた時に、代わりとなるものや人を見つけ、その良さを頑張って探すようにしていると、意外と知らず知らずのうちに執着をやめられるものです。
ですが、注意してほしいのは「執着をやめる」と似た心の動きに「諦め」があるということ。
執着をやめるということは、よりよい心の状態に向かい、ネガティブだった感情を立て直す、いわば負から正への立て直しです。一方、ネガティブな感情に突き動かされるあまり、正へ向かう取り組みから逃げてしまうのは、諦めです。二者の違いを測る物差しとなるのは、負から正へ向かっているか、正から逃げているか。
もし、自分の行動がどちらかわからなければ、この物差しで判別してみましょう。単純に諦めるのではなく、執着をやめることで、自分自身を成長させてください。
(参考) 日本著者販促センター|幻冬舎における「ミリオンセラーの方程式」 goo辞書|執着 Counseling Service|執着を手放す方法 幸せの種「気づき」|執着を手放す方法と悩みの正体 Counseling Service|執着と諦めと手放しの心理学~よりよい選択のために~ 5セカンズ|執着しない方法9選