皆さんは失敗の経験をどのようにして乗り越えていますか。

「失敗を糧にしてより一層頑張ることができる!」という人は非常に強いと思いますが、実際にそう振るまうのはなかなか難しいものですよね。例えば大事なプレゼンなどで大きな失敗をしてしまうと、それ以降も「またやってしまうのではないか」と人前で発表することに臆病になってしまったり、ふとしたときに失敗を思い出したりして、憂鬱になってしまう人も多いのではないでしょうか。

そうはいっても、くよくよしていては先に進むことはできません。そこで今回は、脳科学的に証明された「失敗の上手な乗り越え方」をご紹介します。

失敗は二度目に定着する

失敗した記憶が非常に強く残ってしまう、という経験は誰しも持っているはずです。「あのときは……」などと唐突に思い出し、ひとりで恥ずかしくなってしまうこともあるのではないでしょうか。実はこの記憶、失敗したそのときよりも「失敗を思い出して後悔した」という“二度目の経験”のときに強く刻みつけられるものなのです。

人間の脳は日々非常に多くの情報を受け取っていますから、そのすべてを記憶しておくことはできません。例えば今日の朝ごはんなら思い出せるかもしれませんが、昨日の朝ごはん、1週間前の朝ごはんになると、思い出すのも困難でしょう。また、昨日トイレに行った回数を数えてみてください。記憶がどれだけ消えているかを実感できるはずです。

人間の記憶は「エビングハウスの忘却曲線」という曲線を描きながら摩耗していくことが知られています。エビングハウスの忘却曲線が示すところによると、人間は記憶したことを20分後には42%、1時間後には56%、1日後には74%も忘れてしまいます。しかし、忘れる前にその記憶を想起することで、記憶の定着率は向上し、次第に記憶から消えない長期記憶に移っていくということが、ウォータールー大学の研究によってわかっています。

この事実は一般的に「復習の大切さ」について語る際に持ち出されるデータですが、近年の脳科学の研究では、大きな事故などを経験した後のPTSD(心的外傷後ストレス障害)やASD(急性ストレス障害)についても、同様の記憶のメカニズムが働いていることが明らかになっています。つまりそれらの障害もまた、事故当初の記憶を無意識に「回想してしまう」ことを通し、事故のトラウマを復習し続け、定着させてしまうというプロセスにより引き起こされるのです。

事故ほどではないにしろ、大きな失敗をしてしまったときも、この記憶のメカニズムが働きます。そのため、このメカニズムに基づいた適切な対処を行うことが、早い段階での立ち直りに大いに役立つのです。

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反省会は後で良い

失敗から立ち直るのに時間のかかる人がやってしまいがちな例として、失敗した後の「脳内反省会」があるのではないでしょうか。筆者自身にも経験があるので非常によくわかるのですが、失敗直後に「あのときにもっとこうしておけば」とか「あのときのあれがまずかった」という反省が役に立つことはほとんどありません。

また役に立たないだけでなく、その「脳内反省会」は失敗の経験についての鮮明な記憶を視覚情報を伴って想起させてしまい、「失敗の復習」を行ってしまうことになるのです。そしてそれにより、いっそう失敗に囚われてしまいます。

このことから、失敗をしたあとは「やっちゃったけど、まあ後で考えよう。いったんそのことは忘れよう」というふうに気持ちを切り替えましょう。次につなげるための建設的な改善案を出したいのならば、いったん気持ちが落ち着いてから、冷静に検討したほうが何倍も効果がありますよ。

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立ち直るにはテトリスが有効?

とはいえ「失敗を思い出さない」と決めてみたところで、実際にそれを行うのは難しいことかもしれません。なぜならば、考えようしなくても失敗の記憶が自然に想起される「フラッシュバック」は起こってしまうからです。

ではどうしたら「フラッシュバック」を回避できるのでしょう。近年のオックスフォード大学の研究によると、パズルゲームの「テトリス」が記憶の抑制につながることがわかっています。

実験は交通事故で救急搬送された患者を対象に行われ、その結果、テトリスを20分間プレイした患者のほうが、プレイしなかった患者に比べて、フラッシュバックを起こす割合が有意に低下したということです。

これは、テトリスが脳内の映像処理領域を占有すること、また、作業に集中することで記憶の定着に必要な回想を抑制すると分析されています。この効果はテトリス以外の「クイズに答える」「数を数える」というタスクでは見られなかったことから、テトリスのような「視覚を多く用いるビデオゲームが有効である」というのが有力な仮説です。

この効果を利用することで、失敗の記憶の定着を上手に回避することが可能になります。テトリスでなくても「視覚を強く刺激する」「シンプルで集中しやすい」という性質を持ったゲームであれば、効果を実感することができるでしょう。

そのようなゲームのいくつかをスマートフォンに入れておくことで、「失敗した」というときの気分転換ができるうえ、失敗に囚われない前向きな人間になれるかもしれません。

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一時期、ゲームは不真面目なもの・よくないものという風潮がありましたが、現在ではゲームの持つ脳科学的な効用が取りざたされ、医療の現場でも利用されるまでになっています。上手に利用して、ゲームで仕事をはかどらせましょう。

(参考)
CAMPUS WELLNESS|Curve of Forgetting
Wikipedia│忘却曲線
ライブドアニュース|テトリスでPTSD予防や依存症対策も?ゲームの意外な健康効果
Wikipedia│テトリス効果